220系のクラウンパトカーは、警察庁の仕様書改定に基づいて、従来とは大きく異なるエンジンラインアップを採用しています。最も注目すべき点は、2020年12月14日の仕様書改定です。従来は排気量2,500㏄以上が必須でしたが、「排気量2,000㏄級以上2,500㏄未満のものにあっては、最高出力135kW以上であること」という条件が追加されました。このような柔軟な基準改定により、トヨタの2.0Lターボガソリンエンジン(型式8AR-FTS)が初めてパトカーに採用される道が開かれました。
無線警ら車の2WDモデルに搭載される2.0Lターボは最高出力180kW(245PS)、最大トルク350Nm(35.7kg・m)を発揮します。これは低回転からの扭力が強く、発進加速に優れているため、急な対応が必要な警察業務に適しています。一方、4WDモデルや山間部・降雪地配属向けには、2.5Lハイブリッド車(A25A-FXS型エンジン)が採用されます。ハイブリッド仕様の最高出力は135kW(184PS)で、モーターアシストにより都市部での渋滞走行時やアイドリングが多い巡回業務において優れた燃費性能を発揮します。
重要な不公開情報として、市販車のクラウン2.0Lターボのトランク容積がVDA法(1Lの箱を詰める測定法)では431Lとなり、仕様書の450L要件を満たさないという課題がありました。しかし、警察庁とトヨタの契約交渉では問題が発生していないことから、トランク内を密に詰める別測定方法でクリアしたと推定されています。この妥協的な対応こそが、より安価で高性能なターボガソリンエンジン採用を実現した重要な経緯といえます。
新型220系クラウンパトカーの詳細仕様(製作図面承認申請書公開)
210系ではすべて後輪駆動(2WD)を採用していましたが、220系では用途と地域に応じた複数の駆動方式を採用します。無線警ら車の2WDは都市部や平坦地での運用を想定し、2.0Lターボガソリン車が組み合わされます。一方、4WDモデルは山間部や降雪地域への配属を見据えて、2.5Lハイブリッド車との組み合わせが必須となります。これは、仕様書において「4WDには4WDモデルを配備する必要がある」という厳格な規定に基づいています。
市販クラウンの現行ラインアップでは、2.0Lターボに4WDがラインアップされていないため、4WDが必要な地域向けにはハイブリッド車が唯一の選択肢になりました。ハイブリッド4WDの駆動方式はフルタイム4WDで、前後輪に常時駆動力が配分されるため、悪天候時や雪道での安定性が優れています。最小回転半径は2WDの5.3mに対してハイブリッド4WDは5.7mとやや大きくなりますが、これは20万㎞走行に耐えるサスペンション強化と全輪駆動システムによるものです。
トランスミッションについても、ターボガソリン車はスーパーインテリジェント8速オートマチック(8 Super ECT)を採用し、8段階のギア比による効率的な加速と燃費性能を両立させます。一方、ハイブリッド車は電気式無段変速機(CVT)を採用し、エンジン回転数を最適に保つことで、モーターとの協調制御を高精度で実現しています。この駆動方式とトランスミッションの組み合わせが、パトカーとして求められる「緊急時の瞬発力」と「日常運用の燃費効率」の両立を可能にしているのです。
パトカーの内装は市販車とは全く異なる仕様です。まず座席には耐久性を重視して撥水性ビニールレザーが採用され、頻繁な乗降による摩耗や汚れ、さらには被疑者の乗せ降ろしによる損傷に耐えられるように設計されています。後部座席のアームレストは意図的に取り除かれており、これは被疑者が不必要に動き回ることを防ぐための工夫です。シート本体も一般的なクラウンのような上質感ある形状ではなく、機能性を最優先とした角張った設計になっています。
220系からの新装備としては、全方位カメラの標準装備化が挙げられます。これは警察官が移動中や待機中の事象を記録し、後の証拠保全や捜査に活用するための重要な装置です。同時に、新しい全方位カメラシステムにより、バックカメラとしても機能するため、複雑な操車が必要な交通規制現場での安全性が向上しています。さらに、運転席周りには無線機操作、赤色灯点灯、サイレン音量調整など複数のスイッチが集約されており、緊急時にも迷わず操作できるよう配置されています。
注目すべき装備進化として、220系ではオートホールド機能と電動パーキングブレーキが導入されました。これは長時間の交通規制現場での待機時や、信号待ちの多い巡回業務を想定した装備で、足の疲労を軽減し、長時間運用での操作性を大幅に改善しています。また、最新型のナビゲーションシステムにはリアルタイム事件情報との連携機能が組み込まれ、指令室からの指示を受けてナビが自動更新される仕様となっています。これらの装備により、220系クラウンパトカーは210系比で格段に警察官の業務負荷を低減できる最新警察車両として進化しています。
220系クラウンパトカーの基本寸法は、全長4,910mm、全幅1,800mm、全高1,805mm(2WD)または1,815mm(4WD)です。ホイールベースは2,920mmで、210系の2,850mmから70mm延長されており、これにより乗車者の足元空間が拡大し、5人乗車での快適性が向上しています。トレッド(前後輪の幅)は1,560mmで、安定した旋回性能を確保しています。
積載能力では、警察庁の厳格な仕様書に基づいて、約60㎏の積載状態での昇降式赤色灯搭載を前提とした設計がなされています。これは通常走行時のバランスはもちろん、駐停時に赤色灯が昇降する際の車両揺れにも耐えられることが求められるため、サスペンション設計に複雑な計算が加えられています。トランク容積については前述のように公称450Lが基準ですが、実際の警察装備(無線機ボックス、サイレンアンプ、バッテリー、予備機器)を搭載してもなお余裕が持たれています。
最低地上高は2WDで135mm、4WDハイブリッドで130mmとなっており、これは降雪地での走行性能とオフロード走破性のバランスを考慮した設定です。特に交通規制や災害対応で進入が必要な悪路条件を想定すると、130~135mm程度の地上高が適正といわれています。重量面では、2WDターボガソリン車が車両重量1,740㎏(LED警光灯未搭載時)、4WDハイブリッドが1,880㎏で、全体的に210系比で若干の重量増加が見られます。これは安全装備の増加と全輪駆動システムの追加によるものです。
210系クラウンパトカーは2009年から2018年にかけて採用されていた長寿命モデルで、当初は排気量3,500㏄のV6エンジンを採用する高級セダンベースの豪華な装備が特徴でした。しかし、その後の仕様書改定により、より小排気量エンジンの採用が段階的に許可されるようになり、220系ではついに2,000㏄クラスのターボエンジンまで採用基準が緩和されました。
210系ではロイヤルとアスリートという2つのグレード系統が混在していたため、外観が異なる個体が存在していました。交通取締用はアスリートのみが採用されていた理由は、アスリートの稲妻形フロントグリルとスポーティーな外観が、高速道路での違反車両追跡時により認識しやすいと判断されたためです。対して220系では、RS系統への統一により、全車両が同一の視認性を持つようになりました。
さらに重要な進化が警察マークの配置です。従来は市販車グリルに装着されていたクラウンのエンブレムを利用していましたが、220系ではボンネット上へと変更されました。これにより、前方からの視認性が大幅に向上し、夜間走行時や反射光の影響を受けやすい条件下でも警察車両であることが瞬時に判別できるようになっています。加えて、前面警光灯の装着位置も従来の「バンパー下部」から「車両前部の当庁承認部位」へと変更され、より洗練された外観が実現されました。このような細かな改定こそが、警察庁の高い要求水準を反映した設計の進化を物語っています。
クラウンがパトカーに採用されている理由と採用基準の詳細解説
以上に示した通り、クラウンパトカーのカタログ仕様は単なる高級セダンの特装版ではなく、警察庁の極めて厳格な基準に基づいて設計・製造されている特殊車両です。エンジンから内装まで、あらゆる仕様が20万㎞以上の過酷な運用を前提に計算されており、市販車には見られない細部の工夫が随所に組み込まれています。特に220系への移行時には、環境規制への対応とコスト削減が同時に求められたため、仕様書の柔軟な改定が行われたと推定されます。これは官庁購入という特殊な市場の中で、トヨタと警察庁が一体となって実現させた、日本の警察車両技術の最高峰といえるのです。
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