ガソリン車とディーゼル車の最も大きな違いは、エンジンの燃焼方式にあります。ガソリンエンジンは燃料と空気をあらかじめ混合して燃焼室に送り込み、点火プラグで火花を飛ばして燃焼させる「火花点火方式」を採用しています。一方、ディーゼルエンジンは空気のみを吸い込んで高圧に圧縮し、その圧縮によって高温になった空気に軽油を噴射することで「自己着火」させる仕組みです。この燃焼方式の違いが、両者の性能や特性に大きな影響を与えています。
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使用する燃料も異なり、ガソリン車はレギュラーまたはハイオクガソリンを使用するのに対し、ディーゼル車は軽油を使用します。軽油はガソリンより引火点が高く粘度も高い特性を持ち、1リットルあたり10〜30円ほど安価です。また、軽油はガソリンよりもエネルギー密度が高いため、同じ量の燃料でより長い距離を走行できる特徴があります。
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車両価格の面では、ディーゼル車の方が約20万円〜30万円ほど高い傾向にあります。これは、ディーゼルエンジンが燃料噴射装置や排気ガスフィルター(DPF)、ターボシステムなどの高性能な機構を搭載しているためです。ただし、一部のディーゼル車はCEV補助金の対象となり、15,000円〜30,000円程度の補助を受けられる可能性があります。
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ガソリンエンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気の4つの行程を繰り返す4サイクルエンジンです。吸気行程で燃料と空気の混合気を取り込み、圧縮行程でこれを圧縮した後、点火プラグによって火花を飛ばして燃焼させます。ガソリンは揮発性が高く引火しやすい特性を持つため、比較的低い圧縮比でも効率的に燃焼させることができます。
参考)https://contest.japias.jp/tqj2004/70582/automecha1.htm
この燃焼方式により、ガソリンエンジンは高回転域でスムーズな加速性能を発揮する特徴があります。スピードが出てきた段階での加速が得意で、高速道路での追い越しや高回転まで回したい走行に適しています。また、静粛性が高く、振動も少ないため、快適な乗り心地を求める方に好まれています。
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ガソリンエンジンは製造コストが比較的低く抑えられるため、車両価格が安価になる傾向があります。排気ガスの浄化も比較的簡便な触媒装置で対応できるため、複雑な後処理装置を必要としません。ただし、燃費性能ではディーゼルエンジンに劣り、燃料代も高くなる傾向があります。
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ディーゼルエンジンの最大の特徴は、「空気のみを圧縮」する点にあります。吸気行程で空気のみをエンジン内に取り込み、圧縮行程で空気を高温高圧になるように圧縮します。その後、燃焼・膨張行程で高温高圧になった空気の中に軽油を霧状に噴射することで、自己着火による爆発的な燃焼を起こします。この「自己着火」という仕組みが、点火プラグを必要としないディーゼルエンジンの独特な構造を生み出しています。
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ディーゼルエンジンは圧縮比が非常に高く、ガソリンエンジンの約2倍の圧縮圧力がかかります。この高い圧縮比により、燃料を高効率で燃焼させることができ、優れた燃費性能を実現しています。また、燃焼エネルギーを効率よく動力に変換できるため、ヨーロッパでは自動車の2台に1台がディーゼルエンジン車といわれるほど人気があります。
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燃料の噴射方式も独特で、インジェクター(燃料噴射装置)から霧状に軽油を噴射することで、空気中で瞬時に着火させます。この燃焼方式により、低回転域から強力なトルクを発生させることができ、トラックやバスなど大型車両に多く採用されています。ただし、燃焼温度が高いため、エンジン部品は頑丈に作られており、その分重量が増加する傾向があります。
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燃費性能を比較すると、ディーゼル車の方が明らかに優れています。例えば、マツダCX-5の同一モデルで比較した場合、ディーゼル車の燃費がガソリン車を大きく上回ります。これは、ディーゼルエンジンの高い圧縮比と燃焼効率によるものです。軽油のエネルギー密度がガソリンより高いことも、燃費の良さに貢献しています。
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燃料代の面でも、ディーゼル車は大きなアドバンテージがあります。軽油はガソリンに比べて税率が異なり、1リットルあたり10〜30円ほど安価です。燃費が良く、燃料単価も安いという二重のメリットにより、年間走行距離が長い方ほど経済的効果が大きくなります。実際、高速道路での長距離走行が多い方には、ディーゼル車の燃料代節約効果が顕著に現れます。
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ただし、車両本体価格の差を埋めるには相当な走行距離が必要です。両車両の購入時の価格差を埋めるためには、購入から約10万〜20万km走らなければ元を取ることはできないでしょう。年間走行距離が1万km以下の方や、短距離運転がメインの方には、初期費用の安いガソリン車の方が経済的な場合もあります。
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ガソリン車は高回転域で最大トルクを発揮する特性を持っています。低速域では力強さに欠けますが、スピードが出てきた段階でスムーズに加速するため、高速道路での走行や追い越しがしやすいという特徴があります。加速フィーリングは「サーっと加速する」と表現され、滑らかで線形的な加速感が得られます。
エンジンレスポンスの良さもガソリン車の魅力です。アクセルを踏み込んだ際の反応が素早く、回転数が短時間で高くなるため、運転の楽しさを感じやすいという特徴があります。特に、スポーツ走行や峠道などでの走りを楽しみたい方には、ガソリンエンジンの高回転までスムーズに回る特性が適しています。
ただし、発進時や低速域でのトルクはディーゼル車に劣ります。信号待ちからの発進や坂道での加速では、ディーゼル車ほどの力強さは感じられません。そのため、街乗りでの使用が多い方や、荷物を多く積んで走行する機会が多い方には、低速トルクの強いディーゼル車の方が扱いやすいと感じることがあります。
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ディーゼルエンジンの最大の魅力は、低回転から強力なトルクを発揮することです。エンジンの回転数が低いときから強い「トルク」を発生できるため、信号で止まっていた状態から走り始める際や、坂道での加速が非常にスムーズです。加速フィーリングは「グーっと加速する」と表現され、力強く押し出されるような感覚が得られます。
この低速トルクの強さにより、大人数の同乗者がいる場合でも安定した加速ができ、重い荷物を積んでの走行にも適しています。実際、トラックやバス、大型SUVなど、重量のある車両にディーゼルエンジンが多く採用されているのは、この特性によるものです。アウトドアやレジャーで荷物を多く積む方には、ディーゼル車のパワフルさが大きなメリットとなります。
長距離走行の適性も高く、ディーゼル車はガソリン車に比較して低回転で高速走行ができるため、一定の車速を保った運転が容易です。ぎくしゃくとした運転になりにくいので、走行中は運転する人も同乗者も疲れにくく、車酔いしにくいという特徴があります。特に、中間加速性能は優れており、80→120km/hの加速では排気量3.0Lのディーゼル車が排気量5.0Lのガソリン車と同程度の性能を発揮します。
ガソリン車の維持費は、ディーゼル車と比較して整備費用が安く抑えられる傾向があります。エンジンオイルの交換頻度は、一般的に1年後または15,000km走行後が目安とされており、ディーゼル車の半年または5,000km走行後と比べて交換頻度が少なくて済みます。オイル交換のコストを年間で比較すると、ガソリン車の方が経済的です。
参考)https://bg-item.shop/blogs/blog/causes_of_increased_engineoil
税金面では、ガソリン車とディーゼル車で同一排気量の場合、維持費に大きな差はありません。自動車税や重量税は排気量や車両重量によって決まるため、エンジンの種類による違いはほとんどありません。ただし、古いディーゼル車の場合、環境性能が低いため増税の対象となることがあります。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-dieselcar-merit-demerit/
修理費用も、ガソリン車の方が一般的に安価です。ガソリンエンジンはディーゼルエンジンよりもシンプルな構造で、整備対応できる工場も多いため、修理やメンテナンスの選択肢が豊富です。一方、ディーゼル車は専門の工場やディーラーに依頼する必要があることが多く、故障や事故を起こした場合の修理費用が高額になる傾向があります。
ディーゼル車には、ガソリン車にはない特有のメンテナンス項目があります。最も重要なのが、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)の管理です。軽油は燃焼時に煤や黒煙が発生し、これらの有害物質をキャッチするためにDPFが装着されています。ある程度汚れが溜まると自動的にクリーニング(再生)されますが、その際にエンジンオイルを使用するため、オイルの劣化が早まります。
エンジンオイルの交換頻度は、ガソリン車の約3倍となる半年または5,000km走行後が目安です。特にDPF再生の回数が増えるにつれて、エンジンオイルに燃料が混入して増加する現象が起こります。オイルレベルゲージで確認した際、前回規定量のオイルを入れたのに増えている場合は、オイルの質を保つためにも早めの交換が必要です。
セジメンタ(水分除去装置)の水抜き作業も定期的に必要です。軽油には水分が多く混入しており、除去された水がそのまま溜まってしまうため、定期的に水抜きをしなければなりません。水がいっぱいになると警告灯が表示されるため、その際は速やかに対応する必要があります。これらの特有のメンテナンス項目により、ディーゼル車の整備費用はガソリン車よりも高額になる傾向があります。
DPF付ディーゼル車のエンジンオイル管理について詳しく解説されています。再生時の燃料混入やオイル交換タイミングの判断方法が参考になります。
ガソリン車のエンジン寿命は、一般的に走行距離で15万〜20万km、年数にして10〜15年が目安とされています。ガソリンエンジンは燃焼温度が高く、部品への熱ダメージがやや大きいため、ディーゼルエンジンと比較すると寿命がやや短い傾向があります。ただし、適切なメンテナンスを行うことで、この目安を大きく上回る耐久性を発揮することも可能です。
参考)ディーゼル車 VS ガソリン車!寿命が長いのはどっち?耐用年…
エンジンの組み立てや製造にかかるコストが比較的低いため、部品の交換や修理が必要になった場合でも、費用を抑えやすいという利点があります。また、ガソリンエンジンは構造がシンプルで、整備対応できる工場が多いため、メンテナンスの選択肢が豊富です。これにより、長期間使用する際の維持管理がしやすいという特徴があります。
ただし、燃焼温度が高いため、エンジンオイルの劣化スピードはディーゼル車と同程度です。定期的なオイル交換や冷却水の管理を怠ると、エンジンの寿命が大幅に短くなる可能性があります。適切なメンテナンスサイクルを守ることが、ガソリン車を長持ちさせる鍵となります。
参考)https://www.mdpi.com/1996-1073/16/24/7955/pdf?version=1701958279
ディーゼルエンジンの寿命は、走行距離で約30万km前後、年数で15〜20年程度といわれており、同じ排気量のガソリン車に比べて明らかに長寿命です。これは、燃焼圧力が高くなる分、ピストンやクランクシャフトなどの部品が頑丈に設計されているためです。高い圧縮比に耐えるための強度が、結果として長期間の使用に耐える耐久性を生み出しています。
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実際、商用車などでは20年以上現役で活躍しているディーゼル車も珍しくありません。トラックやバスでは100万km以上走行している事例も多く、適切なメンテナンスを行えば非常に長い期間使用できる可能性があります。この耐久性の高さが、運送業界などでディーゼル車が好まれる理由の一つとなっています。
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ただし、使用環境によっては寿命が短くなることもあります。停車と発進が多い環境では、エンジンを始動したり再始動する度に大きな負荷がかかるため、寿命が短くなる傾向があります。特に、短距離運転がメインで、毎日数キロ程度しか走行しない使い方では、DPF再生が正常に行われず、エンジンに悪影響を及ぼす可能性があります。年間走行距離が1.5万km以上で、週1回以上20分以上の連続走行をする使い方が、ディーゼル車の寿命を最大限に伸ばす条件となります。
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ガソリン車とディーゼル車では、排気ガスの特性が大きく異なります。ガソリンエンジンは比較的簡便な触媒装置で排出ガスを浄化することが可能で、環境性能を達成しやすいという利点があります。燃料と空気があらかじめ混合されて燃焼するため、燃焼状態が比較的均一で、有害物質の発生を抑えやすいのです。
一方、従来のディーゼルエンジンは、NOx(窒素酸化物)やPM(ススなどの粒子状物質)など大気汚染物質の排出量が多いという課題がありました。圧縮された高温の空気の中に燃料を噴射する仕組みのため、空気と燃料がよく混ざり合わないうちに自然発火が起こり、ムラのある混合状態での燃焼が不完全燃焼になりやすいのです。燃焼温度が低かったり、少しでも酸素が足りなかったりすると、有害な物質を排出してしまいます。
しかし、近年のクリーンディーゼル技術により、この課題は大幅に改善されています。マツダのSKYACTIV-Dなどの最新ディーゼルエンジンは、燃焼効率をさらに高めることで、後処理装置なしで国際的な排出ガス規制をクリアできるレベルに達しています。過給によって空気過剰な燃焼にすることで、排ガスの浄化を実現しており、環境性能とディーゼルの長所を両立させています。
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マツダのクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」の開発について、燃費20%改善とNOx後処理装置不要を実現した技術が詳しく紹介されています。
自分のライフスタイルに合った車種を選ぶことが、ガソリン車とディーゼル車の選択において最も重要です。街乗りが多い方には、燃費に優れたコンパクトなガソリン車が候補になるでしょう。短距離運転がメインで年間走行距離が1万km以下の場合、初期費用の安いガソリン車の方が経済的です。
家族での長距離ドライブを楽しみたい方や、年間走行距離が1.5万km以上ある方には、ディーゼル車が適しています。高速道路や郊外路の運転が多い方、アウトドアやレジャーで荷物を多く積む方にも、低速トルクの強いディーゼル車がおすすめです。SUVや大型車でパワーを重視する場合も、ディーゼルエンジンの力強さが魅力となります。
静粛性を最重視する方には、ガソリン車の方が向いています。最新のディーゼル車は振動や騒音が大幅に改善されていますが、それでもガソリン車の静粛性には及びません。また、メンテナンスの手間を嫌う方や、車に詳しくない方には、整備が比較的シンプルなガソリン車の方が扱いやすいでしょう。購入前には必ず試乗して、自分の用途に合うかどうか確認することをおすすめします。
ガソリン車とディーゼル車の経済性を総合的に評価するには、初期費用と維持費の両方を考慮する必要があります。車両本体価格では、ガソリン車が約20万円〜30万円安い一方、ディーゼル車は燃費が良く燃料代も安いため、長期的には経済的になる可能性があります。ただし、本体価格の差を埋めるには約10万〜20万kmの走行が必要なため、年間走行距離によって損益分岐点が変わってきます。
維持費の面では、ディーゼル車の方が高額になる傾向があります。エンジンオイルの交換頻度が約3倍、DPFのメンテナンス、セジメンタの水抜き作業など、特有のメンテナンス項目があるためです。また、整備対応している工場がガソリン車に比べて少ないため、専門の工場やディーラーに依頼する必要があり、一度故障すると修理費用が高額になります。
長期的な視点では、車に長く乗る予定(5年以上)で年間走行距離が長い方には、ディーゼル車の方がトータルコストで有利になる可能性が高いです。一方、短期間での乗り換えを考えている方や、年間走行距離が少ない方には、初期費用が安く整備費用も抑えられるガソリン車の方が経済的です。自分の使用状況を正確に把握し、シミュレーションしてから選択することが重要です。