日本の自動車排出ガス規制は、大気汚染防止法により自動車1台ごとの排出ガス量の許容限度が定められ、道路運送車両法に基づく保安基準により確保される仕組みとなっています 。現在、我が国の排出ガス規制は世界で最も厳しい水準にあり、自動車メーカーは対応技術の研究開発に積極的に取り組んでいる状況です 。
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規制対象となる主要な物質は、一酸化炭素(CO)、総炭化水素(THC)、非メタン炭化水素(NMHC)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)、粒子数(PN)となっています 。特に注目すべきは、令和2年度二輪車排出ガス規制では、モード走行に係る規制値が大幅に強化され、COで1.00g/km、THCで0.10g/kmという厳しい基準が設定されています 。
参考)https://jmca.gr.jp/about_muffler/emissions_regulations/
最新の動向として、日本では「平成21年規制(ポスト新長期規制)」から「平成28年規制」へ移行し、これはEuro 6相当の厳しさを実現しています 。さらに2025年度からは「新燃費基準」が適用され、トラックについては2015年度比約13.4%、バスについては約14.3%の基準強化が行われる予定です 。
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公道を走行しない特殊自動車に対しては、「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(オフロード法)」が平成18年4月1日に施行されています 。この法律により、規制適用日以降に製作又は輸入された特定特殊自動車は、基準適合表示等が付されたものでなければ国内で使用できない仕組みとなっています 。
参考)特定特殊自動車排出ガス規制法
建設機械や産業機械、農業機械などが規制対象となり、基準適合表示等が付されていない特定特殊自動車を使用する場合には、個別に排出ガスの検査を受けて基準に適合することの確認を受ける必要があります 。これは環境への影響を最小限に抑えながら、効率的な作業環境を確保するための重要な規制です。
中央環境審議会では継続的に審議が行われており、平成8年5月の諮問以来、個別の課題に結論が得られ次第順次答申がなされてきています 。特殊自動車規制の早期達成や軽油の低硫黄化(500ppm→50ppm→10ppm)といった段階的な強化が進められています 。
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世界的に見ると、環境規制の枠組みが大きく変化しており、従来のテールパイプ規制「Tank to Wheel」から、燃料製造および発電から走行に至るまでのライフサイクルを考慮する「Well to Wheel」、さらには車両の材料製造から廃棄まで含めた「LCA規制」への移行が始まっています 。
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中国では、大気汚染の深刻化に対応し、世界でも特に厳しい排ガス規制国6基準を導入しました 。2023年7月には実走行時の排出ガス(RDE)を厳しく管理する国6bが全国で全面施行され、これは欧州のEuro 6基準を一部上回る内容となっています 。この新基準に適合しない車両の生産・輸入・販売は原則として禁止されており、大気環境の質の向上が図られています。
欧州では「グリーンクレーム指令(EU)」、米国では「グリーンガイド」、英国では「グリーンクレームコード」など、環境関連の法規制が強化されています 。これらの規制は2025年以降さらに厳しくなることが予想され、企業はLCA(ライフサイクルアセスメント)やCFP(カーボンフットプリント)の算定能力向上が急務となっています 。
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自動車の環境規制において、燃料品質の改善は重要な要素となっています。大気汚染防止法に基づく「自動車の燃料の性状に関する許容限度及び自動車の燃料に含まれる物質の量の許容限度」では、ガソリンについて鉛は検出されないこと、硫黄は0.001質量%以下、ベンゼンは1体積%以下という厳格な基準が設定されています 。
軽油についても硫黄含有量0.001質量%以下、セタン指数45以上、90%留出温度が摂氏360度以下という規制があります 。これらの燃料品質向上により、自動車排出ガスの大幅な削減が実現されており、大気中のNOxをはじめとする汚染物質の量は大都市部も含めて年々減少傾向にあります 。
参考)排出ガス
日本は排出ガス試験法の国際基準調和活動を推進しており、国連で決まった試験法が2010年に二輪車へ、2016年にはディーゼル重量車へ、2018年にはガソリン乗用車等へ適用が開始されています 。このような国際協調により、世界統一の高い環境基準が実現されつつあります。
自動車産業では、環境規制の変化に対応するため、エンジンから発生する大気汚染物質の低減対策として、ディーゼル車用複合脱硝システムやDPFシステムなどの技術開発が進められています 。特に注目されているのは、カーボンニュートラルに資する新技術(CN新技術)の導入促進です 。
参考)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001890218.pdf
CO2吸収コンクリートやカーボンリサイクルコンクリート、環境配慮型コンクリートといった新技術により、インフラ分野においてもCO2削減・吸収が可能になりつつあります 。これらの技術導入には統一的なCO2排出量評価法や性能評価方法の開発が重要となっています 。
日本の自動車産業の生産額当たりのエネルギー消費量は世界最低水準にあり、特に化石燃料由来の生産額当たりのエネルギー消費量では、各国と比較して高い効率を実現しています 。この技術的優位性を活かしながら、新たな規制要求に対応していくことが今後の競争力維持に不可欠です。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/jidosha_wg/pdf/2022_001_04_01.pdf
環境法規制の詳細情報については環境省の公式サイトで最新の動向を確認できます
特定特殊自動車排出ガス規制法 - 環境省
世界の排ガス規制動向と日本の対応については国土交通省が提供しています
自動車の排出ガス規制(新車) - 国土交通省