試乗は入場料(大人25ドル)だけで50車種以上乗り比べでき、追加料金は一切かかりません。
2025年のロサンゼルスオートショー(LA Auto Show)は、11月21日から11月30日の10日間、ロサンゼルス・コンベンションセンターにて開催されました。感謝祭(サンクスギビング)の時期を含むこの10日間は、家族連れや自動車愛好家が一堂に集まる北米最大級のモーターイベントのひとつです。
1907年に始まったこのショーは、118年の歴史を持ちます。初回開催はモーリーズ・スケートリンクで、わずか99台の展示から出発しました。驚くべきことに、1929年に会場が壊滅的な火災に見舞われたにもかかわらず、地域の支援を得てわずか1日後に再開したという逸話が残っています。
2006年には業界の製品サイクルに合わせて開催時期を1月から11月へ変更し、世界的な自動車展示会の中でも特にEVや次世代モビリティに特化した発信地としての地位を確立しました。つまり、LAオートショーはEVトレンドの最前線です。
2025年の一般入場チケットは、大人が25ドル(月~木は22ドル)、シニアと子供は12ドルと、前年から引き下げられました。オープニングデーの11月21日(金)は大人18ドルと特にお得な設定になっており、入場料にはすべての試乗体験も含まれています。これは使えそうです。
業界向けプレスイベント「AutoMobility LA」は11月20日に先行開催され、複数の世界初公開発表や、航空・海上モビリティを含む次世代技術フォーラムが行われました。ホンダとLA28オリンピック・パラリンピックのパートナーシップ発表もこの場でなされるなど、単なる自動車ショーを超えた総合モビリティイベントとして進化しています。
参考:LAオートショーの歴史と2025年展望の詳細
MICE TIMES ONLINE「ロサンゼルス・オートショー(LA Auto Show)世界で最も影響力のある自動車イベント」
2025年のLAオートショーで「ベスト・イン・ショー」に輝いたのが、2027年型キア テルライドのワールドプレミアです。2代目へとフルモデルチェンジした同モデルは、テルライドシリーズ初となるハイブリッドパワートレインを採用しました。ターボチャージャー付き4気筒エンジンと電気モーターを組み合わせた総合出力は329馬力・339lb-ftのトルクを発生し、従来のガソリン車から大幅に進化しています。
フルモデルチェンジにより外装はより大胆でスクエアなデザインに刷新され、「ボクシー・イズ・ビューティフル(角ばったデザインこそ美しい)」という2025年の自動車デザイントレンドを色濃く反映しています。cars.com編集部も「新しいスタイリング、拡大されたサイズ、そして初のハイブリッド搭載が印象的」と評価しています。
もう一方の大きな話題は、スカウトモーターズの電動SUV「トラベラー(Traveler)」と電動ピックアップトラック「テラ(Terra)」の北米一般公開初披露です。スカウトというブランドは、インターナショナル・ハーベスターが1980年に廃止した由緒あるオフロードブランドで、40年以上の時を超えてフォルクスワーゲン傘下でEVとして復活を遂げました。両モデルともエントリー価格は6万ドル以下を予定しており、初の量産出荷は2027年を目標としています。
この2台は「AutoMobility LA」でのコンセプト初公開から、今回は量産仕様に近い「プロダクション・インテント」バージョンとして展示されました。オフロード性能を維持しながら完全電動化を実現したこの試みは、北米の車好きの間で大きな話題となっています。
ハイブリッドやEVへの切り替えで「現在の愛車の下取り価格がどう変わるか」を把握しておくことは、乗り換えの際にかなり重要です。新型モデルが発表されると現行車の相場は動きやすいので、乗り換えを検討している場合は早めに査定額を確認しておくのがおすすめです。
ヒョンデ(現代自動車)は2025年のLAオートショーで2つの重要な発表を行いました。ひとつは「CRATER(クレーター)コンセプト」のワールドプレミアです。IONIQ 5と共通のプラットフォームを使用した電動オフロードSUVで、機能的なロールケージをキャビン内に備え、アンダーボディには大型スキッドプレートを装備。タイヤは18インチリムに33インチという本格的なオフロード仕様です。
「クレーター」という名は、まさに月面クレーターのような悪路でも走破できる能力を目指したことを示しています。現時点ではコンセプトカーの段階ですが、ヒョンデが本気でオフロードEV市場への参入を検討していることが伝わる意欲作です。意外ですね。
もうひとつは「IONIQ 6 N」の北米デビューです。IONIQ 6のハイパフォーマンスバージョンとして、デュアルモーター四輪駆動システムにより最高出力641馬力・565lb-ftのトルクを発揮します。これはスポーツカーとして十分すぎる数値であり、EVが「速い」だけでなく「ドライビングを楽しむ」ための本物のスポーツカーになれることを証明しています。
ヒョンデは前年(2024年)のLAオートショーでも「IONIQ 9」の3列EVファミリーSUVを世界初公開しており、2年連続でショーの主役を担った格好です。2024年と2025年を合わせると、ヒョンデはLAオートショーの台風の目と言っても過言ではありません。
参考:ヒョンデのCRATERコンセプトおよびIONIQ 9の詳細
Hyundai Newsroom「2025 Los Angeles Auto Show – Hyundai」
日本の自動車メーカーも2025年のLAオートショーで見逃せない発表を行いました。特に注目を集めたのがホンダ「プレリュード」の米国初披露です。1980〜90年代に一世を風靡したクーペモデルが、ハイブリッド仕様として約20年ぶりに復活しました。滑らかなクーペラインとスポーティなシルエットは往年のファンの心をつかみ、会場では多くの来場者が足を止めていたと報告されています。
ホンダはさらに、AutoMobility LAのプレスデーにて米国初の量産型プラグイン水素燃料電池車「CR-V e:FCEV」も展示しました。水素とEV技術を組み合わせたこのモデルは、BEV(バッテリー電気自動車)一辺倒ではない多様なゼロエミッション戦略を示すものです。
トヨタは北米で圧倒的な人気を誇る「RAV4」のフルモデルチェンジ版を展示しました。外装は現行モデルよりもシャープで近未来的なデザインへと刷新されており、大画面ディスプレイを中心としたコクピット内装も大幅に進化。電動化・デザイン刷新・安全機能強化の3テーマが軸となっています。RAV4は北米での年間販売台数が40万台を超える超主力モデルですから、このフルモデルチェンジは業界全体に影響を与える重要なニュースです。
また、トヨタは次期「C-HR」のプロトタイプも展示し、北米再投入への期待を高めました。現行C-HRは北米市場から姿を消していましたが、プロトタイプのワイドでクーペ的なシルエットは「帰ってきてほしい」という声を強く呼び起こすものでした。
日本メーカーがプレリュードやRAV4のような「定番の刷新」を打ち出した一方、スカウトやヒョンデが「全く新しい価値観」を提示したことで、ショー全体のバランスが保たれていた印象があります。つまり、2025年のLAオートショーは多様性の年です。
参考:ロサンゼルスオートショー2025レポートの詳細
Gulliver USA「LA Auto Show 2025レポート|2026年新型RAV4・Prelude・Rogueが登場!」
2025年のLAオートショーが単なる新型車の発表会と一線を画したのは、AI・次世代モビリティの存在感でした。AutoMobility LAのイノベーションプラザでは、電動航空機や電動ボート、そしてAI搭載の自動運転車まで、「モビリティの未来」が一堂に展示されました。
最も驚かせたのが、テンサーAI社が公開した「テンサーロボカー」です。これは世界初の個人向けレベル4自動運転車として紹介されました。大規模言語モデル(LLM)を活用したエージェント型AIフレームワークを搭載し、完全自動運転だけでなく、自己診断・自己メンテナンス機能まで備えています。「車で寝ながら会社に行く」ことが現実になる一歩手前まで来たということですね。
ピボタル社は電動航空機「ヘリックス(Helix)」を展示しました。固定翼チルト機能と垂直離着陸機能を持つこの機体は、短距離通勤用エアモビリティ(いわゆる「空飛ぶ車」)の実用化を目指しています。ARCボーツ社は航空宇宙グレードの設計で500馬力の瞬間トルクを発揮する完全電動ウェイクボート「アークスポーツ」を披露するなど、「自動車」の枠を完全に超えた展示が並びました。
商用フリート向けには「フリートイノベーションショーケース」が新設され、ゼロエミッション車両・水素技術・配送プラットフォームが紹介されました。ボルテラ社のEVフリート向け大規模充電インフラ、リビアンの次世代商用バン、フォルクスワーゲンの「ID.Buzz」を使った都市部フリート提案など、ビジネス活用を見据えた展示も充実していました。
こうした展示を見ると、LAオートショーはもはや「車好きのための祭典」ではなく、「モビリティの未来を決める場」へと進化していることがわかります。AI自動運転、電動航空、電動船舶——これらは今後10年で私たちの移動のあり方を根底から変える技術です。参考リンクとして、当日の発表まとめが詳しく掲載されています。
参考:次世代モビリティ展示の詳細レポート
2025年のLAオートショー全体を通じて浮かび上がってきた最大のトレンドは、「EV一辺倒からの揺り戻し」です。数年前のショーではEV一色だった展示が、ハイブリッドやPHEV(プラグインハイブリッド)を含む幅広いパワートレインへとバランスよく広がりました。
具体的な数字で見ると、屋外試乗コースには20種類以上のEV・ハイブリッドが並ぶ一方で、ストリートテストドライブコースには30種類以上のガソリン車・EV・ハイブリッドが用意されていました。このバランスこそが、「現実的な電動化」というメッセージを体現しています。EV一辺倒が基本ではありません。
カリフォルニア州は2035年までに新車販売をゼロエミッション車のみとする方針を維持していますが、同時にトランプ政権によるEV補助金廃止の動きも重なり、消費者の間では「今すぐEVに切り替えるべきか」という迷いが生まれています。そのような背景の中でキア テルライドやホンダ プレリュード、日産 ローグなどのハイブリッド・PHEV化は「現実的な選択肢」として強い支持を得ました。
もうひとつ注目したいのが体験型コンテンツの充実です。Camp JeepのオフロードコースやフォードBroncoのインドアコース体験は、「静かに見る展示会」から「乗って感じるイベント」へのシフトを象徴しています。入場料に試乗が含まれる形式は、来場者にとって「複数の車を乗り比べてから買う」という理想的な車選びの場となっています。
「次の車はEVか、ハイブリッドか」を迷っている段階でこそ、同一会場でさまざまなパワートレインを乗り比べられるこのショーは理想的な判断材料を提供してくれます。結論は、LAオートショーは2025年最高の試乗体験イベントです。
ショー全体を振り返ると、2025年はキア・ヒョンデ・スカウトの「新しい価値観」と、ホンダ・トヨタ・日産の「定番の進化」が見事に共存したショーでした。AIロボカーや電動航空機まで展示されたことで、LAオートショーが「北米最大の自動車展示会」から「世界のモビリティの未来を占う場」へと進化したことをはっきりと示しています。