アルミ2mm厚で自作したスキッドプレートは、林道でヒットした瞬間に曲がって役に立たなくなります。
オフロードバイクや林道ツーリングを楽しむライダーなら、スキッドプレートの重要性は身に染みているはずです。しかし「街乗りメインだから不要」「ノーマルのプラスチックカバーで十分」と思っているライダーも多いのが現実です。
スキッドプレートの本来の役割は、走行中に巻き上げた石や、岩・倒木への接触からクランクケースとエンジン下部を守ることです。フルサイズの250ccオフロードマシンでも、自分が巻き上げた石でエンジンケースを割ることがあると言われており、これは意外と知られていない事実です。
では、スキッドプレートなしでクランクケースを割ってしまった場合、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。クランクケース交換は周辺パーツの交換も伴うため、現行車では35〜45万円以上、状況によっては20万円近くかかるケースも報告されています。数千円〜1万円程度の素材でスキッドプレートを自作することを考えると、いかにコストパフォーマンスが高い保険であるかがわかります。
クランクケース修理が高額になる理由の解説記事はこちら。
クランクケース修正ですが・・・ | 埼玉のバイク修理屋・てくにかるHG
また、スキッドプレートは「エンジン底面だけ守ればいい」と思いがちですが、リンク周りやウォーターポンプなどのエンジン前部も飛び石のリスクにさらされています。DトラッカーやKLX250のようにウォーターポンプが露出しているバイクでは、サイドに張り出した「エラ」部分もカバーする設計が理想的です。スキッドプレートの守備範囲を「エンジン底面」と限定せず、走行スタイルに合わせて設計するのが原則です。
自作スキッドプレートで最初に悩むのが素材選びです。素材の選択ミスは、完成後に「使い物にならない」という最悪の結果を招きます。素材が基本です。
よく使われるのはアルミ板材です。ホームセンターやモノタロウなどで手軽に入手でき、金ノコやジグソーでカットでき、曲げ加工もしやすいため、DIYビギナーにも扱いやすい素材です。では、厚みはどう選べばよいでしょうか。
主な選択肢と特徴は以下の通りです。
| 厚み | 用途目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 2mm以下 | 軽い飛び石対策(街乗り) | ガレ場・林道では強度不足で即変形する |
| 3mm | 林道・フラットダート | 標準的な自作プレートの定番厚み |
| 5mm以上 | ガレ場・岩場・ハードエンデューロ | 重量増加に注意。曲げ加工には工具が必要 |
アルミの合金種類はA5052やA6061が代表的です。A5052は加工性が高く、曲げ時にひび割れしにくいため自作向きです。一方、A2017(ジュラルミン)は強度は高いものの、曲げ加工で割れるリスクがあります。みんカラの実例では、A2017の5mm板を曲げた際に「バキッン!」と真っ二つに割れた例が報告されており、素材の特性を理解してから選ぶ必要があります。
費用感は、400×300mm程度のアルミ板(3mm厚)でおよそ2,000〜2,500円前後が目安です。ボルト・ナット・ワッシャーなどを加えてもトータル3,000〜5,000円程度に収めることは十分可能です。市販の専用スキッドプレートが1万円〜3万円以上することを考えると、大幅なコスト削減になります。意外ですね。
アルミ以外の素材として、鉄板(スチール)を選ぶライダーもいます。鉄は強度でアルミに勝りますが、重量とサビの問題があります。自作するなら、防錆処理(塗装・亜鉛スプレー)とセットで考えるのが条件です。
アルミ板材の選定・購入に役立つページ。
素材が決まったら、次は型紙(テンプレート)作りです。ここを省略すると、高価なアルミ板を無駄にする可能性があります。型紙が先に必要です。
まず、ダンボールやプラダン(プラスチック段ボール)を使って大まかな形を作ります。プラダンは薄くて折り曲げやすく、型紙材料として非常に使いやすいです。バイクの下に潜って、フレームとエンジン下部の形状に合わせながら型を切り出していきます。
型紙を作る際のポイントは次の通りです。
型紙が完成したら、実際のアルミ板に鉛筆またはケガキ針でトレースします。曲げ位置には折り線を引いておくことで、後のベンダー作業がスムーズになります。
カット作業は金ノコ、ジグソー(金属用刃)、コンタマシンなどを使います。工具がない場合でも、ボール盤で穴を連続して開けて「つなぐ」方法でカットすることも可能です。切断後は必ずバリ取り(ヤスリ仕上げ)を行い、手や配線を傷つけるリスクを排除してください。これは必須です。
バイクのスキッドプレート自作の具体的な製作例(みんカラ)はこちら。
いよいよ取り付けです。自作の仕上がりに満足していても、固定方法を間違えると走行中に脱落するリスクがあります。固定が全てです。
取り付けの基本ステップは次の流れで進めます。
カラー(スペーサー)は必ず使ってください。フレームとプレートの間に隙間が生じる場合、カラーで高さを調整しないとボルトに無理な曲げ力がかかり、走行中にボルトが折れたり、プレートが振動でタイヤや排気管に接触するリスクがあります。
単気筒エンジンのバイク(セロー、KLX、CRFなど)は特に振動が大きく、ボルトの緩みが起きやすいことで知られています。取り付け後50〜100km走行したら、必ず増し締めを行うことを忘れないでください。
また、アルミプレートをスチールフレームに直接取り付ける場合は、異種金属接触腐食(電食)のリスクがあります。ゴムブッシュや耐食グリス(スレッドコンパウンド)を介在させることで、長期的な腐食を抑えることができます。取り付けが完了したら、ハンドルの左右フルロックとサスペンションを沈み込ませた状態で、プレートとエキゾーストパイプ・ブレーキホース・タイヤとのクリアランスを必ず確認しましょう。
バイクのボルト緩み防止と振動対策の解説。
振動対策について「ネジ・ボルトの脱落防止」 | Single Riders Blog
スキッドプレートを取り付けたあとのメンテナンスは、意外と見落とされがちです。これを知ってるだけで損失を防げます。
まず、取り付け後の定期的な清掃が重要です。プレートの内側に泥・小石・チェーンオイルが蓄積しやすく、放置すると重量増加・冷却気流の阻害・ビビリ音の発生につながります。林道走行後は、プレートの排泥孔や後端折り返し部から水流で洗い流すと効率的に清掃できます。
アルミ製スキッドプレートに「反射音(共鳴音)」が気になる場合があります。プレート内側上面に薄手の制振材(制振ゴムシートや防音シート)を小面積でスポット貼りすると、高域の反射音が和らぎます。ただし、貼り過ぎると泥水の滞留を招くため、排泥経路を塞がない面積・位置に限定することが条件です。
自作プレートで最も注意したいのが、素材の経年変化です。アルミは繰り返し衝撃を受けると疲労が蓄積し、ある時点で亀裂が入ることがあります。特に取り付け穴の周辺は応力集中が起きやすい部分です。オイル交換時などにプレートを外す機会を利用して、亀裂・変形・ボルト穴の拡大がないか目視で確認する習慣をつけてください。
取り付けボルトの増し締めサイクルは以下を目安にしてください。
オイル交換穴(ドレンホール)付きで自作したとしても、穴の位置とドレンボルトの向きが合っていないと、オイルがプレート内側に飛散するトラブルが起きます。穴の内側にパイプ状に丸めた紙を差し込んでオイルを誘導する方法もありますが、自作時点で穴の位置を正確に開けることが最善の対策です。
アルミプレートの腐食防止には、定期的に腐食防止スプレー(ラストリムーバーやシリコングリス)を薄く塗布しておくと効果的です。特に海沿いの走行が多い場合は塩害対策が欠かせません。これだけ覚えておけばOKです。
自作スキッドプレートのメンテナンス事例(セロー・力造アンダーガード装着後のオイル交換)はこちら。