ホンダが1984年の「NCE(New Concept Engine)計画」で開発を開始したVTECエンジンは、「自然吸気でリッター100馬力を実現する」という目標を掲げていました。従来のエンジンは低回転域と高回転域のどちらかに特化する必要がありましたが、VTECの可変バルブ機構により、低速域でのトルクと高回転時のパワーの両立が実現したのです。この技術は、F1などモータースポーツの最前線で磨かれたホンダの技術哲学を象徴するものです。
参考リンク:Honda スポーツカーの歴史とモータースポーツのつながり
エンジンテクノロジー VTEC 技術解説
ホンダが従来のノンターボ方針から転換したのは、燃費規制と排出ガス規制への対応が急務だったからです。2.0L直噴ターボエンジンは、高出力を実現しながら、2014年に施行された欧州の排出ガス規制「EURO6」にも適合するよう設計されました。直噴システムの冷却効果とシリンダー内部の温度を低下させるメカニズムにより、ターボエンジンの課題であったノッキングを抑制。この技術革新により、Honda スポーツカーは環境性能とパフォーマンスの両立を実現しています。
現行シビック タイプRのボディ設計では、空力性能の最適化に徹底的にこだわられています。大型グリルエリアはラジエーター冷却性能の向上に寄与し、ダウンフォースを生み出す翼型デザインが、高速でのコーナリング安定性を実現。ニュルブルクリンクでのFF最速ラップ達成は、これらの空力デバイスとスポーツ足回りの協調性が生んだ結果です。Honda スポーツカーのデザインは単なる美学ではなく、空力効率という物理法則を基盤とした機能美なのです。
ホンダ スポーツカーの歴史は、VTEC技術の進化の歴史と言えます。1989年の初代インテグラから始まり、NSX初代型に搭載された3リッターV6 VTECエンジン(280ps)、そしてVTECを搭載した唯一の市販FRモデルであるS2000の2リッター直列4気筒エンジン(前期:8300rpm、後期:7800rpm)へと引き継がれました。S2000のレブリミット9000回転という超高回転特性は、今後の環境規制下では2度と味わえない、ホンダのエンジン開発哲学の最後の輝きとなっています。
参考リンク:ホンダVTEC技術の進化
ホンダが世界に誇るVTECエンジンが初めて搭載されたのは?
現在、新車で購入できるホンダ スポーツカーの最高峰は、6代目シビック タイプR(FL5型)です。2.0L直列4気筒VTECターボエンジンは330ps、最大トルク420Nmを発揮し、トランスミッションは6速マニュアルのみという硬派な仕様。ニュルブルクリンク北コースでFF最速ラップを記録した性能を日常の運転で体験できます。新車価格は499.7万~618万円で、中古市場ではプレミア価格となっており、受注停止が続いているほどの人気です。エクステリアはシンプルながら空力を最大限に考慮し、エンジン・ステアリング・サスペンション・エンジンサウンド・レブマッチシステム・メーターを個別設定できる「INDIVIDUAL」機能も新たに追加されています。
2024年9月に発売された新型シビック RSは、日常使いに適したスポーティさと快適性を両立するホンダ スポーツカーの新ジャンルです。1.5Lターボエンジンで直列4気筒、シビックタイプRより80万円以上安価な419万8700円という価格設定。シビック上位グレード「EX」をベースに専用装備を追加し、若年層にも人気があります。ボディサイズは全長4560×全幅1800×全高1410mm、WLTCモード燃費15.3km/Lと、実用性とスポーティドライビングのバランスを取った設計となっています。
ホンダ フィットRSとN-ONE RSは、スポーティグレードを備えたコンパクトなホンダ スポーツカーです。フィットRSは1.5L NAエンジン(118ps)またはe:HEVハイブリッド(123ps)をベースに専用チューニングを施し、RS専用の足回りセッティングにより街乗りでも快適な硬さを実現。新車価格177.7~292.9万円で、トランスミッションはCVTまたは電気式無段階変速のみです。一方、N-ONE RSは軽自動車でありながら6速マニュアルを搭載し、新車価格173.5~217.4万円と、手頃な価格でスポーツドライビングを楽しめるホンダ スポーツカーとして位置づけられています。
1990年に登場したホンダ NSX初代は、「日本初のスーパーカー」として世界に認識されました。ミッドシップにV6エンジンをマウントし、軽量なオールアルミ製モノコックボディを採用。最高280ps(AT車は265ps)のV6 3Lエンジンと5速MT/4速ATの組み合わせは、当時の自動車業界に革命をもたらしました。タイプRグレードではさらに鋭いレスポンスが味わえ、1992年11月にはタイプRを、1995年3月には開閉式ルーフのタイプTを設定。1997年2月のマイナーチェンジではMT車のエンジンを3.2Lに拡大し、2005年末まで販売が続きました。中古市場では600万~1780万円の価格帯で取引され、MT車は特に高値で、状態の良いものは1000万円を下回ることはありません。
ホンダの創立50周年を記念して1998年に発表されたS2000は、28年ぶりのFRレイアウトをもつオープン2シーターモデルです。2L直列4気筒F20C型エンジンは、量産車でありながらレッドゾーン9000回転という超高回転を許容。8300rpmで最高250psを発揮し、高回転カムへ切り替わってからの湧き出すようなパワーフィーリングは、現在の環境規制下では2度と味わえない領域です。2005年11月の後期型では2.2Lのf22C型に換装され、低中速トルクが向上し、より扱いやすい特性になっています。中古市場では165.8~935万円の価格帯で300台弱が流通しており、状態と走行距離で価格が大きく異なります。
1997年から現在まで、ホンダ シビック タイプRは6世代にわたり進化し続けています。初代EK9型(1997~2001)は1.6L B16B型で185ps、3ドアハッチバックの純粋なFF スポーツでした。2代目EP3型(2001~2006)はイギリス製で2L K20A型215psへ進化。3代目FD2型(2007~2010)は唯一の4ドアセダンで225ps、高いボディ剛性が特徴。4代目FK2型(2015~2016)は750台限定でターボ化が実現し、310ps、ニュルブルクリンクFF最速を目指した設計。5代目FK8型(2017~2022)は320psにアップし、マルチリンク式サスペンションでFF最速の座を奪還。そして現行6代目FL5型(2022~)は330ps、ニュルブルクリンク7分44秒881を記録しています。
参考リンク:ホンダ スポーツカー完全ガイド
ホンダのスポーツカー一覧23選+α| 歴代車種から最新型まで解説
ホンダ ビートは1991年から1996年まで生産された軽自動車初のミッドシップオープンスポーツカーです。直列3気筒SOHCにMTREC機構を採用し、自然吸気でありながら軽自動車の最高64psを発揮。パワーステアリング未装備、5速マニュアルのみという硬派な仕様で、軽快なハンドリングを実現。中古市場では43~348万円の価格帯で138台が流通しており、走行距離が少なく状態の良いものは300万円超の価格も珍しくありません。一方、S660(2015~2022)はビートの精神を引き継ぎながら、ミッドシップのターボエンジンで64ps、6速MTを搭載。タルガトップ式ルーフで開放感を実現し、軽スポーツ市場の最後の灯火となっています。
ホンダ スポーツカーを購入する際、乗車人数と荷物の積載量が限られることを理解する必要があります。初代NSXやS2000などの2シーターモデルは走行性能に特化する一方、実用性は著しく低下します。一方、現行モデル4車種(シビックタイプR、シビックRS、フィットRS、N-ONE RS)はいずれも4~5人乗りで後部座席があり、トランクスペースも確保されています。購入者は自分たちの使用シーンとスポーツ走行の楽しさのバランスを冷静に見極める必要があります。
ホンダ スポーツカーの維持で最大の課題は、生産終了したモデルの部品入手です。特に90年代~2000年代のNSX初代やS2000は生産台数が限定的で、純正部品の供給がストップしているものが少なくありません。修理には社外部品や部品の流用、場合によっては海外からの輸入が必要となり、ノウハウをもったショップを見つけることが不可欠です。一方、スポーツ走行に供された車両は、見た目の走行距離以上に消耗が進んでいる可能性があるため、中古購入時は実際の使用履歴確認と試乗による詳細なチェックが必須となります。
2025年にはホンダ プレリュードの新型発売が予定されており、2ドアクーペとしての新しいスポーツカージャンルが復活します。ハイブリッドe:HEVシステムの採用が見込まれ、新型プレリュードは快適な居住性と運転の楽しさを両立する次世代スポーツカーとしてポジショニングされています。環境規制の厳格化が進む中、ホンダ スポーツカーはハイブリッド化やターボ化へと進化し、モータースポーツで培ったテクノロジーをいかに次世代モデルに継承していくかが注視されています。
参考リンク:新型プレリュード発表とホンダの今後のスポーツカー戦略
ホンダの現行・歴代スポーツカー12選!

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