コーナリング ロールとは車体の傾斜現象でハンドリング性能に影響する走行特性

コーナリング ロールとは車体が曲がる際に外側に傾く現象のことで、遠心力によって発生し、サスペンションや重心高さが影響します。車の安全性や操縦性にどのような影響を与えるのでしょうか?

コーナリング ロールとは

コーナリング ロール現象の基本構造
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車体傾斜メカニズム

カーブ時に遠心力により車体が外側に傾く自然な物理現象

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荷重移動の発生

外輪側への荷重集中とタイヤ接地面の変化

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ロール角の測定

水平面からの車体傾斜角度で走行性能を評価

コーナリング ロール現象の基本メカニズム

コーナリング ロールとは、自動車がカーブを走行する際に車体がその進行方向の軸を中心として左右(カーブの外側)に傾く動きのことです 。この現象は物理学的には避けられない自然な動作で、遠心力が車体の重心位置に対して横方向に作用することで発生します 。
参考)車のロールとは?カーブで車体が傾く理由と対策

 

車がコーナーを曲がる時、車体に遠心力が働き、普通は外側に傾きます 。この傾く動きをロール、垂直からの傾角をロール角と呼びます 。どんな車でもサスペンションがある限り、ロールは大小の違いはあれど必ず起こる現象であり 、車の構造上避けられない自然な動きなのです。
参考)自動車の旋回時ロール姿勢 : 運動方程式

 

コーナリング時、車体に遠心力が掛かると、外輪側のサスペンションが沈み込み、内輪側が伸びて、遠心力に対して車のX軸を中心に回転するようにバランスさせています 。この動作により車体は「横揺れ」とも表現される特徴的な傾斜運動を示します 。
参考)AutoExe:貴島ゼミナール

 

コーナリング ロール角の計算方法と影響要因

ロール角の計算には複数の要因が関係し、基本的な公式として「ロール角 = ロールモーメント ÷ ロール剛性」で表現されます 。ロールモーメントは車体をロールさせようとする力で、遠心力×重心高さ×車重で算出されます 。
参考)AutoExe:貴島ゼミナール

 

実際の計算例として、0.5G×5000N×(0.5m-0.2m)÷20000N・m/rad = 0.0375rad(2.141deg)となります 。この計算にはロールセンター高(0.2m)とロール剛性(20000N・m/rad)が含まれており、これらの値が変わることでロール角も変化します 。
重心が高い車ほどロールは大きくなる傾向がありますが、必ずしもそうとは言い切れません 。それはロールセンターと重心の位置関係が影響するからで、ロールセンターと重心は振り子を上下逆さまにしたような関係になります 。ロールセンターと重心が離れていればロールは大きくなり、近ければ少なくなるという特性があります 。
参考)重心とロールセンターの関係・自動車の基礎知識(83) - 自…

 

コーナリング ロールが荷重移動に与える影響

コーナリングでの荷重移動は、ロール運動と密接な関係があります。実際のコーナリングでは荷重移動で旋回外輪の接地荷重が大きくなり、旋回内輪の荷重が小さくなります 。左右輪で垂直荷重が増減した場合、荷重が増える旋回外輪側では摩擦力が向上し、グリップが高まります 。
参考)基礎編①「ロールするから荷重移動する?」ロールとロールセンタ…

 

ロール剛性と掛け算することで、スプリングにかかる力を求め、L字モーメントと同様にトレッドで割れば、荷重移動量が計算できます 。計算式は「0.0375rad×20000N・m/rad÷1.5m=500.0N」となり、これが実際の荷重移動量を表しています 。
興味深いことに、「ロールするから荷重移動する」のではなく、実際には荷重移動とロール運動は同時に発生する現象です 。タイヤの接地状態が変わることで地面に対するキャンバー角が変わり、タイヤが発生できる横力も変化します 。
参考)セットアップ講座 サスペンション編③|EmperorD

 

コーナリング ロール制御技術とスタビライザーの効果

現代の自動車では、ロールを制御するためにスタビライザー(アンチロールバー)が広く使用されています。スタビライザーは左右のサスペンション同士をつなぐ、コの字型やU字型のバネ棒状のパーツで 、コーナーを曲がるときや車線変更時に発生するロール(車体が左右に傾く力)を抑え、横揺れを防ぐことで乗り心地をよくします 。
参考)スタビライザーの役割や効果とは?交換時の費用やセッティング例…

 

スタビライザーの効果は、車のロール量を抑制することで、タイヤの接地面積をより大きく保つことにあります 。ロールが抑えられることで、タイヤの接地面積が均等に保たれ、グリップ力を最大限に発揮できます 。その結果、旋回中の安定感がアップし、高速コーナーでも安心して踏めるようになります 。
参考)スタビライザーは「走りを変える魔法のパーツ」BMW M4に装…

 

最新の技術では、アクティブサスペンションやアクティブスタビライザーバーなどが開発されており、電子制御によってリアルタイムでロール角を調整することが可能になっています 。これらの技術は車両の安全性と快適性を大幅に向上させています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11394359/

 

コーナリング ロール特性が運転感覚に与える意外な効果

多くのドライバーが知らない事実として、適度なロールは実際に運転に有益な効果をもたらします。車体がロールすることで、ドライバーは横G(遠心力)を体感しやすくなり、コーナリングの限界を感覚的に把握しやすくなります 。実際に、ロール角が分かればその時の横Gは tan(φ)だけで計算でき、45°寝かしたらtan(45)=1ですから1Gのコーナリングとなります 。
参考)VD講座 第58回

 

レーシングカーにおいては、ロール剛性配分の調整により、フロントとリアの荷重バランスを最適化してアンダーステアやオーバーステアの特性をコントロールしています 。フロントのARBのレートを上げるとロール剛性配分はフロント寄りになり、フロント側への荷重移動が増えます 。
一方で、ロール剛性を過度に高めすぎると、左右のサスペンションの独立性が失われ、一輪への入力に対してもARBが働き、本来の動きを阻害する可能性があります 。このため、スプリングとARBの硬さを適切に保つバランスが重要となります 。
車高の高いSUVなどでは、ロール現象がより顕著に現れるため、強化スタビライザーの装着により走行中の安心感が大きく向上します 。特に横風の影響を受けやすい高い車では、ロール制御技術の恩恵を大きく受けることができるのです 。