排出ガス 2014年基準 何次と規制内容を解説

排出ガス2014年基準は何次規制に該当し、どのような規制内容なのでしょうか?建設機械や特殊自動車を使用する方にとって重要な排出ガス規制の詳細を、わかりやすく解説します。

排出ガス2014年基準何次規制

📋 この記事でわかること
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2014年基準は第4次規制

平成26年(2014年)10月から適用された最新の排出ガス規制基準です

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対象となる車両

建設機械や農業機械などの特殊自動車が規制対象となります

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大幅な環境性能向上

NOx(窒素酸化物)が最大90%削減される厳しい基準です

排出ガス2014年基準は第4次規制に該当

排出ガス2014年基準は、正式には「第4次規制」または「4次基準値」と呼ばれる排出ガス規制です。平成26年(2014年)10月から段階的に施行された、特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(通称:オフロード法)に基づく規制となります。この規制は、建設機械や農業機械など公道を走行しない特殊自動車を主な対象としており、環境省と国土交通省が共同で定めた基準に適合する必要があります。第4次規制では、特に窒素酸化物(NOx)の排出量が大幅に削減され、環境性能が飛躍的に向上しました。
参考)特殊自動車排出ガス規制

排出ガス規制は1次基準から順次強化されてきた歴史があります。第1次基準が平成15年(2003年)10月に導入されて以降、第2次規制(2006年10月~)、第3次規制(2011年10月~)と段階的に厳しくなり、2014年基準で第4次規制に到達しました。各規制では、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、粒子状物質(PM)、黒煙の5つの項目について基準値が定められており、世代を重ねるごとに基準値が厳格化されています。
参考)国土交通省が認める、排出ガス対策された建設機械とは

第4次規制の特徴として、定格出力56kW以上560kW未満の機種において、NOx排出量が第3次規制と比較して約90%削減される点が挙げられます。具体的には、56kW以上のクラスでNOx基準値が3.3g/kWh(第3次)から0.4g/kWh(第4次)へと大幅に引き下げられました。これは、ディーゼルエンジンに高度な後処理装置(DPFや尿素SCRシステムなど)の搭載が必要となる厳しい基準です。
参考)排出ガス規制法|日本キャタピラー【公式】

排出ガス2014年基準の規制値と適用時期

第4次規制(2014年基準)における排出ガスの基準値は、エンジンの定格出力によって5つのカテゴリーに分類されています。19kW以上37kW未満のクラスでは、NOxが4.0g/kWh、NMHCが0.7g/kWh、COが5.0g/kWh、PMが0.03g/kWhという基準値が設定されています。37kW以上56kW未満のクラスも同様の基準値ですが、PMは0.025g/kWhとわずかに厳しくなっています。注目すべきは56kW以上のクラスで、NOx基準値が0.4g/kWhと第3次規制から大幅に強化されている点です。​
規制の適用時期は、エンジンの出力クラスごとに段階的に設定されました。最も出力の大きい130kW以上560kW未満のクラスが平成26年(2014年)10月1日から最初に適用開始となり、その後、75kW以上130kW未満と56kW以上75kW未満が平成27年(2015年)10月1日、37kW以上56kW未満と19kW以上37kW未満が平成28年(2016年)10月1日と順次適用されました。各クラスには猶予期間が設けられており、継続生産車両については最長で平成29年(2017年)8月31日まで旧基準での製造が認められていました。
参考)https://www.env.go.jp/content/900398775.pdf

黒煙の測定方法も第4次規制で変更されています。第3次規制までは黒煙濃度を%表示していましたが、第4次規制からはオパシメーターによる測定値として「0.50m⁻¹」という新しい基準が導入されました。これにより、より精密な黒煙濃度の管理が可能となり、視覚的な排出ガスのクリーン化が実現されています。実際、第4次規制適合機械からは、ほとんど黒煙が見えない状態となっています。​

排出ガス規制の対象となる特定特殊自動車とは

特定特殊自動車とは、オフロード法(特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律)で定義される、公道を走行しない特殊な構造の自動車を指します。具体的には、建設機械(ブルドーザ、バックホウ、ホイールローダ、クローラクレーン、油圧ショベルなど)、農業機械(トラクター、コンバインなど)、産業車両(フォークリフトなど)が該当します。これらの車両は、道路運送車両法における大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類され、主に建設現場、農地、工場内などで使用されます。
参考)特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律 - Wikipe…

オフロード法は平成17年(2005年)5月に制定され、平成18年(2006年)4月から施行されました。この法律の目的は、特定特殊自動車からの排出ガスを抑制することで大気汚染を防止し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全することです。自動車全体における建設機械からの排出ガスは、窒素酸化物(NOx)で約20%、粒子状物質(PM)で約10%を占めており、これらの機械化施工が大気汚染に与える影響は決して小さくありません。​
規制適用日以降に製作または輸入された特定特殊自動車は、基準適合表示等が付されたものでなければ国内で使用できません。基準適合表示は、車両に貼付されるステッカーやプレートで確認でき、「特定特殊自動車排出ガス2014年規制適合」などの表示がなされています。ただし、一部の小型機械や低出力機械など、規制対象外となる車両も存在するため、購入時や使用時には基準適合表示の有無を必ず確認する必要があります。
参考)特定特殊自動車排出ガス規制法

排出ガス規制の歴史と各次規制の違い

日本における特殊自動車の排出ガス規制は、平成15年(2003年)10月の第1次規制から始まりました。第1次基準では、定格出力19kW以上560kW未満のディーゼル特殊自動車を対象に、NOx、HC、CO、PM、黒煙の5項目について初めて具体的な規制値が設定されました。例えば、130kW以上560kW未満のクラスでは、NOxが6.0g/kWh、HCが1.0g/kWh、PMが0.2g/kWhという基準が定められています。この第1次規制により、それまで野放し状態だった建設機械の排出ガスに初めて歯止めがかかりました。​
第2次規制(2006年10月~)では、オフロード車両も規制対象に加わり、規制範囲が大幅に拡大されました。この時期から「オフロード法」が施行され、公道を走行しない特殊自動車にも本格的な排出ガス規制が適用されるようになりました。第2次規制では、第1次規制と比較してNOxが最大で3.0g/kWh、PMが最大で0.4g/kWh削減され、環境性能が大幅に向上しています。特に37kW以上56kW未満のクラスでは、NOxが7.0から4.0g/kWhへと約43%削減されました。​
第3次規制(2011年10月~)では、粒子状物質(PM)の削減に重点が置かれ、約90%の削減が実現されました。例えば、37kW以上のクラスではPMが0.3g/kWh(第2次)から0.025g/kWh(第3次)へと劇的に減少しています。また、炭化水素についても従来のHC(全炭化水素)からNMHC(非メタン炭化水素)へと測定対象が変更され、より環境負荷の高い成分に焦点を当てた規制となりました。第3次規制により、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の装着が事実上必須となり、建設機械の価格上昇要因となりました。​

排出ガス規制適合車を選ぶメリットと注意点

排出ガス規制適合車を使用する最大のメリットは、国土交通省が発注する公共工事に参加できる点です。国土交通省は「排出ガス対策型建設機械指定要領」に基づき、発注する工事において排出ガス対策型建設機械の使用を原則化しています。そのため、公共工事を受注する建設会社にとって、規制適合機械の保有は必須条件となっています。また、地方自治体の中にも同様の方針を採用しているケースが増えており、今後さらに適合車の重要性が高まることが予想されます。
参考)https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/13/130331_.html

環境面でのメリットも見逃せません。第4次規制適合機械は、従来機と比較してNOx排出量が最大90%削減されており、大気汚染防止に大きく貢献します。特に、都市部や住宅地近くでの工事では、周辺住民への配慮として低排出ガス機械の使用が求められる場面が増えています。また、作業現場の環境改善にもつながり、作業員の健康保護という観点からも重要です。黒煙がほとんど見えなくなることで、視覚的にもクリーンな作業環境が実現されます。​
ただし、注意点もあります。規制適合のために高度な排出ガス後処理装置が搭載されているため、機械本体の価格が上昇しています。また、尿素SCRシステムを搭載した機械では、尿素水(AdBlue)の定期的な補充が必要となり、ランニングコストが増加します。さらに、DPFの再生処理やメンテナンス作業も必要となるため、従来機よりも維持管理に手間がかかる場合があります。購入時には、これらのコスト増加分を考慮に入れた投資判断が求められます。​

排出ガス規制と自動車の税制優遇制度の関係

排出ガス規制に適合した自動車には、税制面での優遇措置が用意されています。代表的なものが「エコカー減税」で、排出ガス性能や燃費性能に優れた車に対して自動車重量税が免税または減税される制度です。この制度は2026年4月30日まで延長されており、環境性能基準を満たした車を適用期間内に新規登録すれば、環境性能の高さに応じて自動車重量税が軽減されます。電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車などは特に優遇され、新車新規登録時と初回継続車検時の両方で免税となります。
参考)【2025年】エコカー減税とは?いつまで?わかりやすく解説。…

また、「グリーン化特例」という制度もあり、自動車税・種別割の軽減措置が受けられます。この制度は2023年4月1日から2026年3月31日まで適用され、新車新規検査を受けた翌年度に限り軽減措置が適用されます。一方で、環境性能の低い古い車両に対しては重課措置もあり、新車登録から13年を経過したガソリン車やLPG車(ディーゼル車は11年)は、自動車税が概ね15%重課されます。この重課措置により、環境性能の高い新しい車両への買い替えが促進される仕組みとなっています。
参考)環境対応車に対する軽減

乗用車では、2021年4月以降、燃費基準達成車と低排出ガス車を示すステッカーの貼付が廃止されました。これは、ステッカー自体に法令の定めがなく、メーカーが自主的に貼付していたものだったためです。現在では、車検証や車両情報で環境性能を確認する形となっています。ただし、車検ステッカーは法律で義務化されているため、引き続き貼付が必要です。星マークで表示されていた低排出ガス車認定制度も、新しい排出ガス基準(2030年基準など)への移行に伴い、表示方法が変更されています。
参考)燃費基準達成車と低排出ガス車のステッカーなぜ廃止? クルマ…

環境省の特定特殊自動車排出ガス規制法ページ
オフロード法の詳細な規制内容、適用対象車両、基準適合表示などについて、環境省の公式情報が掲載されています。

 

国土交通省の排出ガス対策型建設機械指定状況
排出ガス対策型建設機械の指定型式数や届出状況など、最新の指定状況が確認できる国土交通省の公式ページです。