2019年に国内市場から惜しまれつつ姿を消した三菱の伝説的SUV「パジェロ」が、2026年の復活に向けて着々と準備が進められています。三菱自動車が推進する中期経営計画「Challenge 2025」のもと、選択と集中、電動化推進の戦略の中で、なぜこのタイミングでブランドの象徴を復活させるのか、その背景には複数の要因があります。
ピックアップトラック「トライトン」が2023年に日本市場へ再導入された際、大ヒットを記録しました。この成功体験が新型パジェロ開発の強力な追い風となり、同じプラットフォームを共有することで開発効率化も実現しています。また、近年の三菱は「デリカミニ」やトライトンの成功を通じて、「三菱らしさ=タフで信頼性の高い四駆」というブランドイメージの再構築に成功。その集大成として、かつてパリ・ダカールラリーで世界を席巻した「パジェロ」という名を復活させることは、ブランド価値再構築の上でも不可欠な一手となったのです。
スパイショットされた開発車両から明らかになってきた新型パジェロのデザインは、三菱の最新デザインコンセプト「ダイナミックシールド」を前面に押し出した、力強くも洗練されたものです。フロントフェイスには垂直に配置されたLEDデイタイムランニングライトが採用され、リアは垂直基調のウィンドウに最新のコネクテッドLEDテールライトが組み合わされています。大胆なスキッドプレートやサイドステップが装備され、悪路走破性の高さを視覚的に表現する圧倒的な存在感を放っています。
ボディサイズにおいても市場に大きなインパクトを与えます。予想される全長は約5,100mm、全幅約1,930mm、全高約1,815mm、ホイールベース約3,130mmとなり、トヨタのフラッグシップSUV「ランドクルーザー300」(全長4,985mm、全幅1,980mm)に匹敵、またはそれを上回る堂々たる体躯を持つことになります。特に3,130mmという長いホイールベースは、広大な室内空間と優れた走行安定性への期待を高めます。
新型パジェロのメカニズムの核心は、その心臓部と骨格にあります。メインのパワートレインとしては、新型トライトンにも搭載されている新開発の2.4L直列4気筒クリーンディーゼルターボエンジン(4N16型)が予想されています。このエンジンは低回転域から豊かなトルク47.9kgmを発生させ、最高出力204psを発揮します。高速巡航から本格的なオフロード走行まで、あらゆるシーンで余裕のある走りを提供し、見込まれる燃費性能は13.5km/L程度と優れた環境性能を両立しています。
そして新型パジェロを唯一無二の存在にするのが、三菱の代名詞ともいえるPHEV(プラグインハイブリッド)システムの搭載です。アウトランダーPHEVで世界をリードする三菱の技術が、ラダーフレーム構造の本格オフローダーに初めて融合されます。システムをベースに大幅な改良が加えられ、システム総合出力は382ps以上に達するとの予測もあり、これはライバルのランドクルーザー(ガソリン305kW、ディーゼル227kW)を凌駕する可能性を秘めた驚異的なパワーです。100km超のEV航続距離を目指しているとの情報もあり、日常生活のほとんどを電気だけでカバーできる経済性も期待されています。
駆動方式はパジェロの伝統である「スーパーセレクト4WD-II」が採用されます。このシステムは、センターデフを持つことで、後輪駆動(2H)、フルタイム4WD(4H)、センターデフロック直結4WD(4HLc)、そしてローレンジ付き直結4WD(4LLc)を走行中でも切り替えられる画期的なものです。舗装路での安定性から、雪道、ダート、岩場のような極悪路まで、あらゆる路面状況に最適に対応します。
新型パジェロには、高速道路での運転をサポートする「MI-PILOT」の搭載が期待されています。アクセル、ブレーキ、ステアリング操作をアシストし、渋滞時や長距離ドライブでのドライバーの疲労を大幅に軽減します。充実の安全装備として、衝突被害軽減ブレーキシステム(夜間対応)、後側方車両検知警報、後退時車両検知警報、踏み間違い防止アシスト、アダプティブクルーズコントロールなどが搭載される見込みです。また、アダプティブLEDヘッドライトと全方位モニター(マルチアラウンドモニター)により、あらゆるシーンで高い安全性を確保します。
複数のメディア情報を総合すると、新型パジェロの価格帯は600万円〜750万円程度になると予想されています。具体的には、クリーンディーゼル標準グレードが約600万〜650万円、ディーゼル上級グレードが約650万〜700万円、そして最上級のPHEVモデルが約700万〜750万円程度と想定されます。最新のPHEVシステムや先進安全装備の搭載、車格の向上を考えれば、先代パジェロの最終モデル(最上級で約495万円)からの大幅な価格上昇は妥当な設定と言えるでしょう。
最大のライバルはトヨタ・ランドクルーザーシリーズ、特に「ランドクルーザー250」(約520万~735万円)と「ランドクルーザー300」(約540万~800万円)が直接の競合となります。新型パジェロの明確な戦略は、サイズではランクル250と300の中間以上の堂々たるボディで存在感をアピールすること。最大の武器は「PHEV」の存在で、ディーゼルとガソリンのみのランクルシリーズに対し、電動化による静粛性、環境性能、そしてモーターアシストによる圧倒的なパワーという明確なアドバンテージを持ちます。新型パジェロは「PHEVという選択肢を持つ、唯一無二の本格ラダーフレームSUV」として、市場に新たな価値を提案することになるでしょう。

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