冬にオートモードをONにしたまま駐車すると、翌朝ブレーキが凍結してクルマが動かせなくなることがあります。
電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)は、従来のレバー式や足踏み式サイドブレーキを電動モーターで置き換えた装置です。スイッチひとつで後輪にブレーキをかけたり解除したりでき、2019年ごろを境にトヨタ車でも急速に普及しました。現在はアルファード・ヴェルファイア・ヤリスクロス・カローラ・RAV4・クラウンなど、多くの車種で標準または上位グレードに搭載されています。
仕組みはシンプルです。スイッチ操作の信号を受けたモーターアクチュエーターが後輪のブレーキキャリパー、またはワイヤーを引っ張り、パーキングブレーキをかけます。静かな場所で操作すると後ろから「ウィーン」というモーター音が聞こえるのが特徴で、これが正常に作動しているサインです。
つまり装置の名前です。
従来のサイドブレーキと根本的に異なるのは「自動作動」が可能になる点で、これがオートモードやブレーキホールドといった先進機能の土台になっています。車両から降りる際の「かけ忘れ」も防止できるため、安全性の向上という観点でも大きな意味を持ちます。ただし、電子制御が絡む装置である以上、手動式には存在しなかった注意点もセットで生まれています。それが後の章で詳しく解説する「冬の凍結問題」や「パッド交換時の整備モード」です。
参考:トヨタ公式FAQ「電動パーキングブレーキの操作方法とモードの選択方法について」
https://toyota.jp/faq/show/2293.html
トヨタの電動パーキングブレーキには「オートモード」と「マニュアルモード」の2種類があります。基本が原則です。
オートモードでは、シフトレバーをPに入れると自動でパーキングブレーキがかかり、Pから他のポジションに入れると自動で解除されます。停車のたびにスイッチを操作する必要がなく、かけ忘れや解除忘れを防ぎやすい設計です。一方、マニュアルモードはスイッチを手動で引く・押す操作が必要になります。スイッチを引くとブレーキがかかり(表示灯が点灯)、ブレーキペダルを踏みながらスイッチを押すと解除されます(表示灯が消灯)。
モードの切り替え方も把握しておきましょう。
| モード | 切り替え操作 | ディスプレイ表示 |
|---|---|---|
| オートモードON | 停車中・ブレーキ踏みながら、スイッチを引き続ける | 「EPBシフト連動機能ON」 |
| マニュアルモード | 停車中・ブレーキ踏みながら、スイッチを押し続ける | 「EPBシフト連動機能OFF」 |
操作はすべて「停車中・ブレーキペダルを踏みながら」が条件です。これが条件です。走行中に誤って操作した場合については後述しますが、一瞬だけスイッチを引いても通常は何も起こらない設計になっています。
また、緊急時に限った特別な使い方として、走行中にスイッチを「引き続ける」と急ブレーキが作動します。たとえば突然ドライバーが意識を失ったようなシーンで、助手席の同乗者がスイッチを引き続けることでクルマを停止させることが可能です。これはトヨタの取扱説明書にも明記されている公式の緊急機能です。ただし、通常走行中の気軽な操作には絶対に使用しないでください。
「電動パーキングブレーキ」と「オートブレーキホールド(ブレーキホールド)」は、同じスイッチパネル周辺にボタンが並んでいるため混同されがちです。意外ですね。しかし、両者は役割が全く異なります。
電動パーキングブレーキ(EPB)は「装置の名前」です。モーターでパーキングブレーキをかける機構そのものを指します。駐車時や長時間の停車時に使うもので、解除にはブレーキを踏む操作が伴います。
一方、オートブレーキホールドは「機能の名前」です。停車した瞬間にフットブレーキを自動で保持してくれる機能で、信号待ちや渋滞中でブレーキから足を離しても車が動き出さないようにします。アクセルを踏めば自動で解除されます。これは使えそうです。
重要なポイントとして、ブレーキホールドの保持状態が約3分続くと、自動的に電動パーキングブレーキが作動する仕様になっています(トヨタの取扱説明書に記載)。これは、長時間ブレーキホールドが保持されても車が確実に固定されるようにするための仕組みです。
日常的な使い方としては「信号待ちや渋滞ではブレーキホールド、駐車・降車時はEPB(オートモードなら自動)」と覚えておけば迷いません。これだけ覚えておけばOKです。
参考:トヨタ公式FAQ「信号待ちでブレーキを踏み続けるの疲れませんか?(ブレーキホールド機能について)」
https://toyota.jp/faq/show/10656.html
車好きなら絶対に知っておきたい注意点が、冬場の凍結問題です。
電動パーキングブレーキをかけた状態で駐車し、翌朝になると解除できない——これは電動式・手動式を問わず起こりえる現象ですが、特にオートモード搭載のEPBでは知らずに「自動でかかったまま」になりやすいという落とし穴があります。トヨタの全車種取扱説明書にも一様に「寒冷時に電動パーキングブレーキをかけると、ブレーキ装置が凍結し解除できなくなる恐れがあります」と明記されています。
凍結の条件は2つです。
つまり、雪道や雨天走行直後で濡れた状態のブレーキが、その夜急激に冷え込んだ場合に特にリスクが高まります。スキー場の駐車場が最も危険なシチュエーションのひとつです。日中に雪をかき分けて走行したあと、山間部の夜間に気温がマイナス圏まで下がると、翌朝「クルマが動かない」という事態になりかねません。痛いですね。
トヨタ公式の対処法は以下のとおりです。
もし凍結してしまった場合は、解氷スプレーかぬるま湯を使うのが有効とされていますが、熱湯は急激な温度変化で部品を破損させる危険があります。無理にクルマを動かすことはせず、ロードサービスや整備工場に連絡するのが最も安全な対処法です。ぬるま湯が原則です。
参考:モーターファン「寒さで電動パーキングブレーキが凍る——冬の駐車で知っておくべきこと」
「自分でブレーキパッドを交換してきた」というクルマ好きにとって、電動パーキングブレーキ搭載車への乗り換えは大きな転機になります。これは見落とせません。
従来のサイドブレーキ式であれば、リアブレーキのキャリパーピストンを専用工具で押し戻すだけでパッドを交換できました。しかし電動パーキングブレーキ搭載車では、キャリパーピストンにモーターアクチュエーターが連動しているため、通常の押し込み操作ができません。力任せに押し込もうとすると、アクチュエーターが破損し修理費用が3万〜10万円以上かかる事態になります。
対処法は「整備(メンテナンス)モード」への切り替えです。このモードを使えばOKです。
トヨタのアルファード・ヴェルファイアなど一部車種では、イグニッションONの状態でパーキングブレーキスイッチを特定の操作順序(ロック側3回→リリース側3回など)で操作することで整備モードに入れます。このモードでアクチュエーターが逆回転し、ピストンを手で押し戻せる状態になります。
ただし、整備モードへの入り方は車種・年式によって異なります。
車種別の整備モード手順は取扱説明書やトヨタ販売店に必ず確認してから作業を始めてください。知らずに作業して壊してしまうのが、車好きにとって最も「痛い」パターンです。
参考(PDFリンク):ToolPlanet「トヨタ リヤブレーキパッド交換モード(アルファード/ヴェルファイア)」
https://www.toolplanet.jp/wp-content/uploads/2020/02/Alphard_PKB-1.pdf
EPBを搭載したことで「できなくなった技」があります。それがモータースポーツで使われる「サイドターン(スピンターン)」です。
手動式のサイドブレーキは瞬間的かつ強力に後輪だけをロックできるため、ラリー競技やジムカーナで向きを素早く変えるテクニックに活用されてきました。しかし電動パーキングブレーキはモーターでゆっくりと制動力をかける仕組みのため、瞬間的なロックが不可能です。厳しいところですね。公道では絶対に行うべきではありませんが、サーキットや競技の世界では「EPB搭載車にはサイドブレーキ代わりのレバーを別途取り付ける」という対応策も存在します。
もうひとつ、EPBとバッテリー上がりの関係も覚えておくと有用です。
バッテリーが完全に上がると、電動パーキングブレーキが解除できなくなるケースがあります。この状態ではクルマを動かすことも牽引することも困難になります。バッテリー上がりに気づいてジャンプスタートしようとしても、タイヤが動かないと作業しにくい状況になりえます。
対策として、バッテリーの定期点検(一般的に3〜5年が交換目安)は従来以上に重要です。特にEPB搭載車でバッテリーが弱ってきたと感じたら、早めに交換を検討してください。バッテリーの状態確認は、トヨタ販売店でも無料点検してもらえる場合があります。確認は早めが条件です。
また、寒冷地や長距離旅行を控えている時期には、スマートフォンアプリ(トヨタの「My TOYOTA+」など)で車両コンディションをモニタリングする習慣をつけておくと、バッテリー状態の早期把握に役立ちます。これは使えそうです。
参考:GAZOO「電動パーキングブレーキのメリット・デメリット」
https://gazoo.com/column/daily/19/06/22/