ブレーキペダルの「遊び」とは、ペダルを軽く押しても実際にブレーキが作動せず、抵抗を感じない部分のことです 。この遊びが存在する理由は安全性の確保にあり、ペダルに軽く触れただけでブレーキが作動してしまうと、運転中に支障をきたしてしまうためです 。
参考)https://car-moby.jp/article/car-life/useful-information/accelerator-pedal-break-pedaru/
遊びがない状態では、ブレーキの引きずりが発生したり、運転者が意図しない制動がかかる可能性があります 。一方で、遊びが大きすぎると十分な制動力を得られなくなり、これも重大な安全上の問題となります 。
参考)https://faines.jaspa.or.jp/enduser/system/files/static/maintenance/infomation/toyota/tenken_zz0001/zz0001/pdf/toyota_teiten302.pdf
適正な遊びの量は車種によって異なりますが、一般的には1〜3mmの範囲とされています 。例えばニッサン・セレナでは3〜11mmと設定されており、車種による違いが見られます 。この基準値から外れている場合は、早急に調整が必要になります。
参考)http://www.remus.dti.ne.jp/~pochiinu/001Vitz-TechInfo/MaterialRoom/BreakPedalAdjust/000BreakPedalAdjust.htm
ブレーキペダルの遊び調整は、基本的にペダル裏側のプッシュロッドとナットを操作することで行います 。まず、ブレーキペダルの裏側にあるナットを緩め、次にプッシュロッドを回転させて遊びを調整します 。
調整手順は以下の通りです。
調整後は必ずストップランプの点灯確認を行うことが重要です 。遊び部分でランプが点灯しないよう、適切な位置でスイッチが作動するように設定する必要があります 。
ブレーキペダルの遊びに異常がある場合、様々なトラブル症状が現れます。遊びが少なすぎる場合は、ペダルに軽く触れただけでブレーキランプが点灯し続けることがあります 。これは後続車への誤った信号となり、交通事故の原因になりかねません。
遊びが大きすぎる場合は、ペダルを踏み込んでも制動力が十分に発揮されず、制動距離が延びる危険性があります 。特に緊急時のブレーキ操作で、期待した制動力が得られない可能性があります。
参考)ニッサン PAO ブレーキペダルが深い - 増高自動車工業有…
さらに、ブレーキフルードの漏れが原因で遊びが突然大きくなることもあります 。フルードタンクの経年劣化によるヒビ、ブレーキラインの劣化・損傷などが主な要因となります 。このような症状が現れた場合は、直ちに整備工場での点検を受ける必要があります。
参考)車のブレーキペダルの遊びって突然大きくなることはありますか?…
専門の整備工場では、より精密な測定器具を使用してブレーキペダルの調整を行います 。ノギスやスケールなどの計器を用いて、正確な測定と調整が実施されます 。
整備工場での作業工程。
参考)https://www.yoshida-oil.co.jp/maintenance/s07.html
整備工場では、車種固有の基準値に基づいた調整が可能です 。例えば、タントのようなダイハツ車では、車種によってカム式自動調整機構と手動調整機構の違いがあり、それぞれに応じた適切な作業が行われます 。
参考)『車のブレーキ調整に付いて質問です。普通の軽自動...』 ダ…
長時間の運転において、不適切なブレーキペダルの調整は運転者の身体に様々な負担をかけます。特に高齢ドライバーでは、ペダル操作時の筋活動パターンに変化が生じ、前脛骨筋や大腿四頭筋での遅れが顕著になることが研究で明らかになっています 。
参考)高齢ドライバーと急制動時の誤操作リスク〜下肢運動学・筋電図か…
適切でないペダル位置は、足首や膝を動かす筋肉に過度な負担をかけ、疲労の蓄積につながります 。これにより、緊急時の反応速度が低下し、事故リスクが高まる可能性があります。
バイクの場合ですが、ブレーキペダルを踏む際は親指の腹で操作することが疲労軽減のポイントとされています 。自動車でも同様に、ペダルの根元に対して垂直に足を置き、かかとを床につけて操作することで、疲労を軽減し安全性を向上させることができます 。
参考)疲れにくいブレーキ操作、その要は母指球の使い方あり。 ケニー…
定期的な調整により適切なペダル位置を保つことは、運転者の健康維持と安全運転の両面で重要な意味を持ちます。