フットブレーキは、ブレーキペダルを踏むことでタイヤの回転を直接制御し、車両を減速・停止させる仕組みです 。ブレーキパッドがブレーキローターを挟むディスクブレーキや、ブレーキシューがドラムに押し付けられるドラムブレーキなど、摩擦による制動力を発生させます 。
運転者の踏み込み加減によって強弱を変えられるため、感覚的に使いやすいメインブレーキとして位置づけられています 。フットブレーキを使用するとブレーキランプが点灯し、後続車に減速の意図を明確に伝えることができます 。
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現代の自動車では油圧式が主流で、ブレーキペダルから車輪に圧力を伝える際にブレーキ液を使用します 。15W以上60W以下の電球で、100メートル離れた場所からでも確認できる基準が定められています 。
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エンジンブレーキは、アクセルペダルから足を離した際にエンジン内の抵抗が増えることによって発生する減速力です 。エンジンブレーキという部品は存在せず、走行中にアクセルから足を離すだけで自動的に作動します 。
アクセルを離すとエンジンへの燃料供給が抑えられ、タイヤの回転力だけで走行する状態になります 。このとき、タイヤと路面との摩擦により自然な抵抗力が生まれ、エンジンの回転数が徐々に下がることで車の速度が自然に低下していきます 。
より強い制動力が必要な場合は、ギアを下げることで調整が可能です 。オートマ車では「2」や「L」のポジション、マニュアル車では1段下のギアに切り替えることで、より強いエンジンブレーキ効果を得られます 。
フットブレーキとエンジンブレーキの最も重要な違いの一つが、ブレーキランプの点灯有無です。フットブレーキを使用するとブレーキランプが点灯しますが、エンジンブレーキでは点灯しません 。
この違いは安全運転において非常に重要です。ブレーキランプは後続車に減速や停止の意図を明確に知らせる役割を担っており、悪天候時の視認性向上にも貢献します 。エンジンブレーキによる減速では後続車に減速したことが伝わりづらく、車間距離の調整に注意が必要です 。
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道路運送車両法に基づく保安基準では「後面2箇所に赤色の灯火をつけること」と決められており、2006年からはハイマウントストップランプも義務化されています 。ブレーキランプの故障は交通安全に重大な影響を与えるため、定期的な点検が不可欠です 。
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フットブレーキは直接タイヤの動きを抑えることで車両を減速・停止させるため、エンジンブレーキと比較して強い減速力を発揮します 。ブレーキペダルを踏む力に比例して勢いよく減速でき、急な停止や緊急時には非常に有効です 。
赤信号前での停止や車間距離がない状態での瞬時の減速など、確実な制動力が必要な場面で使用されます 。運転者の踏み込み加減によって強弱を調整できるため、状況に応じた柔軟な対応が可能です 。
ただし、長時間の使用には注意が必要です。フットブレーキを多用すると、ブレーキパッドやディスクが過熱してブレーキが効かなくなる「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が発生するリスクがあります 。
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エンジンブレーキの使用は燃費向上に効果があることが知られています。アクセルペダルから完全に足を離してシフトダウンを伴うエンジンブレーキを使うと、燃料カットのエンジン制御が入り、理論上は燃料噴射量がゼロになります 。
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エンジンブレーキを使っている間はガソリンの消費が少なくなり、使用距離が長いほど燃費向上効果を得られます 。坂道を下っているときにアクセルオフにしている場合も、理論上は燃料カットとなるため燃費が改善されます 。
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ただし、その効果は比較的小さく、格段に燃費が良くなるものではありません 。車速が下がってエンジン回転数がアイドリング回転付近まで低下すると、エンジンストールを防ぐために燃料噴射が復帰します 。
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長い下り坂では、エンジンブレーキとフットブレーキの適切な使い分けが安全運転の鍵となります。下り坂では車重による慣性で思った以上に速度が出てしまうため、エンジンブレーキを主体とした減速が推奨されます 。
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長い下り坂でフットブレーキのみを使い続けると、ブレーキの過熱によってフェード現象やベーパーロック現象が発生する危険性があります 。2022年10月には静岡県でフェード現象による観光バスの横転事故が発生し、1人死亡、多数の重軽傷者を出す事故となりました 。
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オートマ車の場合、Dレンジから「O/D機能をオフ」または「2」にシフトダウンすることで、より強いエンジンブレーキ効果を得られます 。エンジンブレーキで基本的な速度調整を行い、必要に応じてフットブレーキを補助的に使用することが安全な運転方法です 。
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フットブレーキの多用によって発生する二つの危険な現象について理解することは、安全運転に不可欠です。フェード現象は摩擦材の発熱により起こり、ベーパーロック現象はブレーキオイルの沸騰により発生します 。
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フェード現象では、ブレーキパッドが過熱して摩擦材が熱分解されガスが発生し、そのガスがブレーキローターとの間に挟まることで摩擦力が低下します 。一方、ベーパーロック現象は摩擦熱によってブレーキフルードが沸騰し、気泡が発生することで油圧がうまく伝わらなくなる現象です 。
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これらの現象を予防するためには、エンジンブレーキを積極的に活用してフットブレーキへの負荷を軽減することが重要です。また、ブレーキフルードは吸湿性が高く水分を含むと沸点が下がるため、定期的なメンテナンスと交換が必要です 。
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