ランエボ クーペ コンセプトRA デザイン性能解説

三菱が2008年に発表したコンセプトRAは、ランエボのクーペ版として注目を集めた幻のスポーツカーです。ディーゼルターボエンジンや先進4WDシステムを搭載したその全貌とは?

ランエボ クーペ コンセプトRA 全貌解説

ランエボ クーペ コンセプトRAの魅力
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幻のクーペモデル

2008年デトロイトモーターショーで発表された三菱の野心作

革新的パワーユニット

2.2Lクリーンディーゼルターボで204PS・420Nmを発生

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先進4WDシステム

S-AWCによる高度な車両統合制御を実現

ランエボ クーペ コンセプトRA デザイン特徴

三菱コンセプトRAは、力強さと流麗さを兼ね備えた2ドアクーペのフォルムが最大の特徴です。フロントデザインには当時のランサーエボリューションXにも通じる逆スラントノーズを採用し、三菱のデザインアイコンである台形のジェットファイターグリルが印象的な存在感を放っています。

 

特に注目すべきは、ボンネットの斬新なデザインです。搭載エンジンの外観を大胆に造形し外部に露出させるという、従来のスポーツカーでは見られない革新的なアイデアが採用されています。マットフラット塗装と相まって、メカニカルなイメージを強調し、エンジンそのものがデザインの一部となっている点は、コンセプトカーならではの大胆な発想といえるでしょう。

 

コンセプトカーらしい演出として、ドアには上方へ開くバタフライドアが備わっており、スーパーカーのような華やかさも演出しています。足元には大径21インチホイールが装着され、力強く張り出したホイールアーチとともに、スポーツ4WDの高い走行性能を視覚的に表現しています。

 

リアデザインもランサーエボリューションXをモチーフとしており、三菱のスポーツカーDNAを色濃く反映した仕上がりとなっています。

 

ランエボ クーペ ディーゼルターボ エンジン性能

コンセプトRAの最も革新的な要素は、パワーユニットに2.2リッタークリーンディーゼルターボエンジン「4N14型」を搭載していることです。当時のスポーツカー界では珍しいディーゼルエンジンの採用は、三菱の「走る歓び」と「環境への貢献」を高次元で両立するという明確な意図がありました。

 

このエンジンには、可変バルブタイミング機構「MIVEC」、コモンレール式燃料噴射、ピエゾ式インジェクター、そしてVD/VGターボチャージャーといった先進技術が惜しみなく投入されています。これらの技術により、最高出力150kW(204PS)・最大トルク420Nmという高出力と高効率を実現しており、環境性能にも配慮したディーゼルスポーツカーという提案は当時非常に斬新でした。

 

トランスミッションには、ランサーエボリューションXにも採用された高効率な2ペダルMT「Twin Clutch SST」が組み合わされ、スポーツ走行に適した変速制御を実現しています。

 

興味深いことに、このコンセプトRAに搭載されたクリーンディーゼルエンジン「4N14型」は、その後2010年の欧州向け「アウトランダー」や2013年以降の「デリカD:5」などに搭載され、改良を重ねながら現在も三菱の主力ディーゼルエンジンとして活躍しています。

 

ランエボ クーペ 4WD システム S-AWC

コンセプトRAの走行性能を支える核心技術が、三菱が誇る車両運動統合制御システム「S-AWC」(スーパーオールホイールコントロール)です。このシステムは、ランサーエボリューションXの「ACD」(アクティブセンターデフ)、「AYC」(アクティブヨーコントロール)、「スポーツABS」、「ASC」(アクティブスタビリティコントロール)の4機構に加え、新たにアクティブステアリングとアクティブダンパーをも統合制御する進化版となっています。

 

この進化したS-AWCは、4輪の駆動力と制動力を高度にコントロールし、様々な路面状況や走行シーンで優れた駆動性能、旋回性、安定性を発揮します。ドライバーの意のままに操れる、まさにランサーエボリューションのクーペ版と呼ぶにふさわしい走りを実現するとされていました。

 

さらにボディ構造には軽量化と高剛性を両立するアルミスペースフレームを採用するなど、走りへのこだわりが隅々まで貫かれていました。これらの技術により、コンセプトRAは単なるデザインスタディを超えた、本格的なスポーツカーとしての実力を備えていたのです。

 

ランエボ クーペ エクリプス 歴史的背景

コンセプトRAを理解するためには、三菱のクーペモデルの歴史を知ることが重要です。三菱は過去に「ランサーセレステ」「ギャランラムダ」「スタリオン」「FTO」「GTO」「エクリプス」など、数多くの2ドアクーペを生産していました。

 

特にエクリプスは、北米市場におけるスタリオンの後継車という位置付けで1989年に登場し、1990年には日本への輸入が開始されました。ギャランをベースにしたFFのクーペで、ギャラン譲りの4WD+ターボを装備した「GSR-4」も高く評価されていました。

 

コンセプトRAは、当時北米で販売されていたクーペモデル「エクリプス」の次期型を示唆するデザインスタディとして開発されました。しかし、その内容は単なるデザイン提案にとどまらず、三菱の技術力を結集した先進技術のショーケースとなっていました。

 

クロスオーバーへの注力を強めていた当時の三菱ですが、このコンセプトカーは同社がスポーツカー開発にも情熱を注いでいたことを明確に示しています。

 

残念ながら、コンセプトRAが次期エクリプスとして市販されることはありませんでした。エクリプス自体も北米で販売されていた4代目が2012年に生産を終了し、後継モデルは登場せず、三菱のラインナップからクーペモデルが消滅してしまいました。

 

ランエボ クーペ 現代的意義と未来展望

コンセプトRAが発表されてから17年が経過した現在でも、このモデルが自動車ファンの間で話題となり続けているのには理由があります。それは、電動化が進む現代の自動車業界において、コンセプトRAが示した「環境性能とスポーツ性能の両立」という思想が、今なお色褪せない価値を持っているからです。

 

現在の三菱は、アウトランダーPHEVに代表される電動化技術に注力していますが、コンセプトRAで示されたディーゼルスポーツカーという提案は、当時としては非常に先進的でした。特に欧州市場では、ディーゼルエンジンの環境性能が高く評価されており、スポーツカーにディーゼルエンジンを搭載するという発想は、現在でも十分に通用するコンセプトといえるでしょう。

 

また、S-AWCに代表される車両統合制御技術は、現在の電動化時代においてもその重要性を増しています。電動モーターの瞬時トルク特性を活かした4WD制御技術は、コンセプトRAで培われた技術の延長線上にあるといえます。

 

海外では、ファンによる独自のランエボクーペ製作プロジェクトも存在します。アメリカのアーチー・コンコン氏は、ミラージュクーペにランサーエボリューションIVのパーツを移植し、4WD化まで敢行したカスタムカーを製作しています。このような草の根レベルでの活動は、ランエボクーペへの根強い需要を物語っています。

 

三菱が再びスポーツカー市場に参入する際には、コンセプトRAで示された技術思想が重要な指針となる可能性があります。電動化技術と4WD制御技術を組み合わせた新世代のスポーツカーは、三菱の技術力を示す絶好の機会となるでしょう。

 

コンセプトRAは単なる幻のコンセプトカーではなく、三菱の技術思想と未来への展望を示した重要なマイルストーンとして、今後も語り継がれていくことでしょう。その革新的な技術と美しいデザインは、現代の自動車開発においても多くの示唆を与える存在として、価値を持ち続けています。