三菱のミニバンラインナップの中核を担うデリカD:5は、2007年の登場以来18年間にわたってフルモデルチェンジを行わずに販売を継続している異例のモデルです。この長期継続販売の背景には、ミニバンでありながら本格的な4WD性能を持つ「唯一無二」の存在価値があります。
デリカD:5の最大の特徴は、三菱独自のAWC(All Wheel Control)思想に基づいた4WDシステムです。電子制御4WDが前後輪へ駆動力を最適配分し、ASC(アクティブスタビリティコントロール)が走行中の横滑りと発進時のタイヤ空転を抑制します。さらに、4WDロック機能により、ミニバンとしては異例ともいえる険しい路面にも対応可能です。
現行モデルの価格帯は422万2900円から445万1700円(税込)で、2.2Lコモンレール式DI-Dクリーンディーゼルターボエンジンを搭載。最低地上高185mmを確保し、アプローチアングル24度、デパーチャーアングル21.5度という本格的なオフロード性能を実現しています。
月間目標販売台数は2300台と設定されており、ニッチながらも確実な需要を持つモデルとして位置づけられています。
2023年のジャパンモビリティショーで発表されたD:Xコンセプトは、三菱が描く次世代デリカの姿を示すコンセプトカーです。このモデルは、従来のデリカのDNAを継承しながら、電動化技術を最大限に活用した革新的な設計となっています。
最も注目すべきは、アウトランダー譲りの2.4リッターPHEVシステムの採用です。ツインモーター4WDと三菱自慢のS-AWC(スーパー・オールホイール・コントロール)を組み合わせることで、従来の4WDシステムを大幅に上回る性能を実現しています。
エクステリアデザインでは、箱形のカクカクとしたデザインを採用し、キャビン前方からDピラーまで続くサイドウインドウという「デリカ」のアイコンを継承。フロントグリル部までガラスとしたワイドなフロントウィンドウに加え、フロントカメラ映像を加工してダッシュボード上のスクリーンに投影する「シースルーボンネット」機能も搭載されています。
インテリアの革新性も際立っており、上下動と180度回転が可能な「パノラミックシート」を装備。乗員が向き合って座れる「対座モード」も備わり、かつてのデリカスターワゴンを彷彿とさせる機能性を現代に蘇らせています。
ASEAN市場で高い人気を誇るエクスパンダーは、2017年にインドネシアでデビューした3列シート・7人乗りのクロスオーバーミニバンです。全長4595mm×全幅1750-1790mm×全高1730-1750mmというサイズは、日本の道路事情にも比較的マッチする実用的な設計となっています。
エクスパンダーの魅力は、コンパクトなボディサイズながら3列シートを確保した実用性と、SUVテイストのデザインを両立している点です。特に「エクスパンダークロス」は、ルーフレールや樹脂フェンダー、大径タイヤを装備し、最低地上高はガソリン車で最大225mmを確保しています。
2024年には待望のハイブリッドモデル「エクスパンダー/エクスパンダークロスHEV」が登場しました。1.6リッターエンジンと85kWモーターを組み合わせた三菱独自の新開発ハイブリッドシステムを搭載し、市街地では従来比34%の燃費向上を実現しています。
価格面では、インドネシア市場でのエクスパンダークロスが約300万円(5MT車)から320万円(CVT車)となっており、日本市場に導入された場合も競争力のある価格設定が期待できます。
三菱のミニバンが他社と一線を画すのは、本格的な4WD技術との融合です。一般的なミニバンが居住性や燃費性能を重視する中、三菱は走破性能を最優先に設計しています。
デリカD:5の電子制御4WDシステムは、路面状況に応じて前後のトルク配分を瞬時に変更可能です。「4WD LOCK MODE」に切り替えることで、ミニバンとは思えないオフロード走破性を実現し、2WDに切り替えることで市街地での燃費性能も確保しています。
また、三菱独自の「ツインモーター4WD」技術では、前後輪をそれぞれ独立した強力なモーターで駆動することで、通常の4WDよりもレスポンス良く、瞬時にきめ細かなトルク配分を実現しています。プロペラシャフトが不要になることで、床下に電池を搭載して低重心化も図られています。
エクスパンダーHEVに搭載される「e:MOTION」システムは、ハイブリッドシステムに加えて、左右輪間の駆動・制動力を最適制御するAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)、7つのドライブモード(ノーマル、チャージ、EV、ウェット、グラベル、ターマック、マッド)を統合したシステムです。
三菱のミニバン戦略は、従来の「ファミリーカー」という枠を超えた「アクティブファミリー」をターゲットとしています。デリカD:5の18年継続販売は、この戦略の成功を物語っており、次世代モデルでもこの方向性は継承されると予想されます。
D:Xコンセプトが示す未来像では、電動化技術の進歩により、さらに高度な走破性能と環境性能の両立が図られています。PHEVシステムの採用により、充電インフラに左右されない長距離走行が可能となり、「どこへでも行ける」というデリカの思想が完全に実現されます。
エクスパンダーの日本導入については、コンパクトミニバン市場の活性化という観点から注目されています。フリードやシエンタといった既存のコンパクトミニバンとは異なる、SUVテイストを強調したデザインと走破性能により、新たな市場セグメントの創出が期待されます。
2025年秋に開催予定のジャパンモビリティショー2025では、より具体的になった次世代モデルの登場が期待されており、三菱のミニバン戦略の新たな展開が注目されています。
三菱自動車公式サイト - デリカD:5の詳細情報と最新技術について
https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/delica_d5/
三菱自動車公式サイト - 4WD技術の詳細解説
https://www.mitsubishi-motors.co.jp/carlife/4wd/