道路運送車両の保安基準とは|車検基準と違い改正履歴安全装置

自動車を安全に運行するには、道路運送車両の保安基準を満たす必要があります。この基準は車検とどう関係し、どんな装置の規定があるのでしょうか?

道路運送車両の保安基準とは

📋 保安基準の3つのポイント
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安全性の確保

車両の構造や装置が安全基準を満たし、道路上での事故を防止する

🌱
環境保全

排気ガスや騒音などの公害防止を目的とした環境基準の遵守

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法的義務

道路運送車両法に基づき、すべての車両が満たすべき技術基準

道路運送車両の保安基準は、道路運送車両法の第三章に規定されている技術基準で、自動車が公道を走行するために必要な安全性と環境性能を定めたものです。この基準は昭和26年運輸省令第67号として制定され、車両の構造や装置に関する具体的な要件を明確化しています。保安基準は、自動車検査(車検)の判断基準としても機能し、この基準に適合しない車両は運行することができません。
参考)自動車:道路運送車両の保安基準(2025年1月10日現在) …

保安基準の目的は大きく分けて2つあります。第一に、交通事故や故障による危険を防止し、運転者や歩行者の安全を確保すること、第二に排気ガスや騒音などの公害を防止し、環境保全を図ることです。これらの基準は国土交通省令で定められ、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」によって詳細が規定されています。​
基準の対象となるのは自動車、原動機付自転車、軽車両で、それぞれの車種や用途に応じた細かな規定が設けられています。保安基準に違反した場合は道路運送車両法第40条から第42条に基づき、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。
参考)24.道路運送車両法

道路運送車両の保安基準の基本的な規定内容

保安基準では車両の寸法、重量、各種装置について詳細な規定が設けられています。自動車の基本的な寸法基準として、長さは12メートル以下、幅は2.5メートル以下、高さは3.8メートル以下と定められています。軽自動車については、長さ5メートル以下、幅2メートル以下、高さ4メートル以下、最低地上高15センチ以上という基準があります。​
国土交通省の保安基準の条文一覧
保安基準の全条文と細目告示の対応関係が確認でき、各装置の技術基準を詳しく知ることができます。

 

重量に関する基準も重要で、車両総重量、軸重、輪荷重などが規定されています。軸重は10トン以下、輪荷重は5トン以下、接地圧は200kg/cm以下という制限があります。最小回転半径についても12.0メートル以内という基準が設けられています。
参考)http://www.tokusya.jpn.com/hourei.html

装置に関する規定では、制動装置、かじ取装置、灯火装置、窓ガラス、消音器など多岐にわたる項目が含まれています。各装置は安全性と機能性の両面から基準が設定され、定期的な検査によって適合性が確認されます。
参考)https://www.naltec.go.jp/publication/regulation/hbh5ss0000002mk7-att/gtg5d20000002kf2.pdf

道路運送車両の保安基準と車検の関係性

車検(自動車検査)は、保安基準に適合しているかを確認するための制度です。国土交通省が一定期間ごとに検査を実施し、自動車の所有権を公証するとともに、安全性を確保する役割を果たしています。車検に合格するには、すべての項目が保安基準を満たしている必要があります。
参考)http://car-tatsumi.com/mot/kijyun.html

指定自動車整備事業者(指定工場)で車検を受けた場合、保安基準適合証が発行されます。この証明書があれば、国の検査場に車両を持ち込まずに書類だけで新しい車検証を発行してもらえます。保安基準適合証の有効期限は検査日から15日間で、この期間内に運輸支局へ提出する必要があります。
参考)車検の保安基準適合証の意味と役割

自動車検査登録ポータルの検査と整備の違い
車検制度の仕組みと点検整備との違いについて、国土交通省が公式に解説しています。

 

「車検対応品」と「保安基準適合品」は基本的に同じ意味で、どちらも保安基準に適合していることを示しています。ただし、パーツメーカーが表示する「車検対応」は想定される装着方法での適合を意味するため、取付方法や車種によっては基準不適合となる場合もあります。車検は検査員が目視で行うため、取付が不完全だったり安全とみなされなければ不合格となります。
参考)車検対応と保安基準適合の違いとは

道路運送車両の保安基準における灯火装置の規定

灯火装置は保安基準で最も詳細に規定されている項目の一つです。ヘッドライト(前照灯)は白色または淡黄色と定められ、左右の色が異なってはいけません。色温度は3,500~6,000ケルビン程度が適切で、明るさは1つのライトに対し6,400カンデラ以上が必要です。
参考)車検の前にチェックしたい「灯火類の保安基準」とは? |Dr.…

ヘッドライトの取付位置も厳密に規定されており、レンズ上部の高さが地面から120cm以下、下部が50cm以上であることが求められます。ハイビームは100m先を確認できる性能が必要で、2灯式では15,000カンデラ以上、4灯式では12,000カンデラ以上の明るさが必要です。
参考)ヘッドライトで車検落ち!?現役整備士が検査基準や注意点につい…

ヘッドライトの保安基準詳細解説
車検時のヘッドライト検査基準について、光度、色温度、光軸など具体的な数値を含めて解説しています。

 

制動灯(ブレーキランプ)は赤色で、車両後方から主制動装置や補助制動装置を操作していることを示す必要があります。尾灯、方向指示器、後退灯などすべての灯火器具には、色、明るさ、取付位置に関する詳細な基準が設けられています。番号灯は夜間後方20メートルからナンバープレートの数字が確認できる明るさ(照度30ルクス以上)が必要です。
参考)https://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokukokuji/saikoku_218_00.pdf

道路運送車両の保安基準における騒音と排気ガス規制

消音器(マフラー)に関する保安基準は、騒音防止の観点から厳格に定められています。現在の法令では「原動機の作動中に加速走行騒音を有効に防止し、かつ、その性能を損なうおそれのないもの」という基準が設けられています。近接排気音は乗用車で96デシベル以下、定常走行騒音は85デシベル以下という数値基準があります。
参考)https://www.mlit.go.jp/common/000017844.pdf

社外品マフラーに交換する場合、排気騒音だけでなく加速走行騒音も防止する性能が求められます。マフラーのより厳格な基準として、日本自動車スポーツマフラー協会(JASMA)の認定品があり、保安基準よりも厳しい審査基準をクリアした製品にJASMA認定プレートが付けられます。
参考)車検でマフラーを通す基準は? 騒音の基準や不合格の対処法も解…

排気ガスに関する規定も重要で、ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置について詳細な基準が設けられています。車種や年式によって異なる排出ガス規制値が適用され、無負荷急加速黒煙の測定方法や車載式故障診断装置の技術基準なども定められています。環境保全の観点から、これらの基準は継続的に強化される傾向にあります。
参考)自動運転化により加速する法改正! - くるまが|車両管理 B…

道路運送車両の保安基準の改正履歴と自動運転対応

保安基準は時代の変化や技術革新に合わせて継続的に改正されています。近年の大きな改正として、自動運転車の実用化に対応した制度整備があります。2019年の道路運送車両法改正では、保安基準の対象装置に「自動運行装置」が新たに追加されました。
参考)https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001851520.pdf

この改正により、自動ブレーキなどの先進技術搭載車や、通信を活用したソフトウェア更新による性能変更が可能な車両に対応できるようになりました。自動運転車の設計・製造過程から使用過程に至るまで、安全性を確保するための制度が整えられています。
参考)https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001894885.pdf

過去の主要な改正としては、ハイマウント・ストップランプ(補助制動灯)の装備義務付けや、車両総重量3.5トン以上の貨物自動車への突入防止装置の装備義務付けなどがあります。また、盗難防止装置の基準見直しやバスの緊急時表示装置の許可など、時代のニーズに応じた改正が実施されてきました。保安基準と細目告示の関係も整理され、基本的事項は保安基準に、細目は告示に定めるという構造に変更されました。
参考)https://hourei.ndl.go.jp/simple/detail?lawId=0000162628amp;current=-1