道路に引かれた区画線は、色と線の形状によって意味が大きく異なります。白色の実線は、原則としてその右側にはみ出して通行することが禁止されている場所を示します。これは主に片側6メートル以上の道路幅がある場合に設置され、十分なスペースがあるためはみ出しての追い越しは不要と判断されるためです。
白色の破線は、片側6メートル未満の道路に設けられることが多く、安全を確認した上でセンターラインをはみ出しての追い越しが可能なエリアを示しています。対向車がないことを必ず確認し、方向指示器で合図を出す必要があります。
黄色の実線は「追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止」を意味します。ただし、工事や路上駐車の車両を避けるためなど、やむを得ない状況では追い越しではないため、ウインカーを出した上で右側にはみ出して通行することが認められています。道幅が狭く交通量も多い道路に設置されることがほとんどです。
区画線の実線と破線の違いは、道路の通行方法に直接影響を与える重要な要素です。実線と破線を組み合わせた二重線が引かれている場合もあり、自車線側の線の種類によって通行ルールが決まります。
車線境界線においても実線と破線の違いがあります。実線の場合は車線変更が禁止されており、破線の場合は車線変更が可能です。交差点手前の矢印標示にも実線と破線があり、破線の矢印は「予告標示」と呼ばれ、その車線を進んだ先の進行方向を事前に知らせるものです。実線の矢印は「進行方向別通行区分」という規制標示であり、指定された車両通行帯を通行しなければなりません。
道路標識、区画線及び道路標示に関する命令により、ペイントによる車道中央線や車線境界線の設置時の長さ、間隔及び幅が標準化されています。車道中央線の破線は5メートル間隔で引かれ、車線境界線は5メートル間隔と、6メートル塗って9メートル空きの2種類があります。
区画線は道路法に基づいて道路管理者が設置するもので、道路の構造を保全し、交通の安全と円滑を図る目的があります。一方、道路標示は道路交通法に基づいて都道府県公安委員会が設置し、特定の交通方法を禁止または指定するものです。
道路標示には「規制標示」と「指示標示」の2種類があります。規制標示は、転回禁止、追い越し禁止、駐停車禁止、最高速度、停止禁止部分など、車両や歩行者に対して通行の禁止や制限を知らせるものです。指示標示は、横断歩道、停止線、進行方向、中央線、車線境界線、安全地帯など、特定の交通方法ができることや道路交通上決められた場所を指示するものです。
路面標示材料は主にJIS K 5665で定義され、液状塗料(ペイント型)と粉体塗料(溶融型)に大別されます。液状塗料は主に高速道路や一般道路の区画線に、粉体塗料は主に一般道路の道路標示や区画線、横断歩道に使用されています。
区画線には「ガラスビーズ」と呼ばれる小さなガラスの粒が多数含まれています。このガラスビーズは車のヘッドライトに反射する「再帰反射」という特殊な反射機構を持ち、光が光源方向に戻ることで夜間の視認性を大幅に高めています。
車のヘッドライトの光は、路面標示に露出しているガラスビーズに入射します。入射光がガラスビーズにより屈折し、裏側の塗料面で反射して再び入射した方向に帰るため、ドライバーは路面標示が光って見え、夜間でも視認することができます。ガラスビーズはソーダ石灰ガラス製で、屈折率1.52、比重2.5の特性を持ち、廃ガラスを原料としたサステナブルな製品です。
高視認性区画線は、夜間や降雨時に視認性を向上させるために用いられる技術です。ライン上に凹凸を設けてガラスビーズの反射率を上げる「リブ式」と、多条の筋をもった粗面塗膜を成形し大粒径ガラスビーズを混入させる「非リブ式」の2種類があります。リブ式は車線を逸脱した際にタイヤノイズで危険を知らせることができる利点もあります。
雨天時には、塗膜が平滑なためガラスビーズの上に水膜ができ、前照灯の光は前方に反射してしまい、運転者に前照灯の光が戻ってこず視認性が低下します。そのため高視認性区画線の導入が安全対策として重要です。
区画線の適切なメンテナンスは交通安全の確保に不可欠です。溶融式区画線の耐久年数は都市部で3~5年、都市部以外では5~10年が目安とされていますが、これはあくまで標準的な数値であり、道路の舗装状況や交通量によって大きく変動します。
メンテナンス時期の判断基準として、視認性による判断が最も重要です。昼間の視認性については、周囲の路面との明度差が30%以下になった場合、夜間の反射性能についてはJIS規格値の70%以下になった場合にメンテナンスを検討する必要があります。物理的損傷による判断では、線の欠損、剥離、ひび割れなどが線長の20%以上に及んだ場合は、早急なメンテナンスが必要です。
材料の種類によってメンテナンス周期も異なります。ペイント系区画線は1~2年、溶融式区画線(一般道)は3~5年、溶融式区画線(幹線道路)は2~3年、高性能樹脂系は5~7年が目安とされています。施工後は3~5分ほどで乾きますが、夏季など路面温度が高い場合はそれ以上の時間を要します。
定期的なメンテナンスを怠ると視認性が低下し、事故のリスクが高まります。特に交差点や横断歩道などの重要箇所では、より厳しい基準でメンテナンス時期を判断することが求められています。路面標示施工技能士という国家資格もあり、技術力や信頼性の向上に寄与しています。
区画線の種類と特性について詳しく解説している道路施設協会の資料
路面標示材料の種類とJIS規格について詳細が確認できる路材協公式サイト
道路標示・区画線の規制標示と指示標示の具体例を網羅した技術資料

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