法定速度と制限速度の違いを道路標識と車種別に解説

車を運転する際に必ず守らなければならない速度制限には、法定速度と制限速度の2種類があります。似たような言葉ですが、実は定義や適用ルールが異なることをご存知でしょうか?

法定速度と制限速度の違い

法定速度と制限速度の3つのポイント
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法定速度は法律で決まった速度

標識がない道路で適用される、政令で定められた最高速度です。道路の種類と車種によって決まります。

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制限速度は道路標識で指定される速度

道路標識や道路標示で個別に指定された最高速度です。各都道府県の公安委員会が道路環境に応じて決定します。

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制限速度が優先される

両方が存在する場合、制限速度(指定速度)が法定速度よりも優先されます。ただし原付など一部の車両には例外があります。

法定速度とは政令で定められた最高速度

 

法定速度(法定最高速度)とは、道路交通法施行令によって定められた、標識等による速度指定がない道路で適用される最高速度のことです。道路交通法第22条では「その他の道路においては政令で定める最高速度を超える速度で進行してはならない」と規定されており、この政令で定める速度が法定速度と呼ばれています。
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普通乗用車の場合、一般道路の法定速度は時速60km、高速道路では時速100kmと定められています。法定速度は道路の種類だけでなく、車両の種類によっても異なる点が重要です。たとえば大型貨物自動車や原動機付自転車は、普通乗用車とは異なる法定速度が設定されています。
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実は道路交通法には「法定速度」という言葉は直接出てこず、「政令で定める最高速度」と表現されています。一般的に広く使われている「法定速度」は通称であり、警察や行政の説明文でも便宜上この用語が使われています。
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制限速度とは道路標識で指定される速度

制限速度(指定速度)とは、道路標識や道路標示によって個別に設定された最高速度のことです。道路交通法第22条では「道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を」守ることが義務付けられており、これが制限速度に該当します。
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制限速度は、道路の構造や交通状況、周辺環境などを考慮して、各都道府県の公安委員会が決定します。住宅地の狭い道路では交通安全を重視して時速30kmに設定されたり、見通しの良い郊外の道路では時速60kmに設定されたりするなど、道路の特性に応じて柔軟に調整されています。​
一般道路では車線数や中央分離帯の有無、歩行者の交通量なども加味されて基準速度が設定され、さらに周辺の交通事情や生活環境などに応じて補正が加えられて最終的な制限速度が決定されます。高速道路でも同様に、車線や路肩の幅、曲線半径、道路の勾配などから個別構造適合速度が設定され、最終的な制限速度が決められています。​

法定速度より制限速度が優先される理由

道路標識で指定された制限速度は、常に法定速度よりも優先されます。たとえば法定速度が時速60kmの一般道路でも、「40」の標識があれば時速40kmが上限となり、法定速度が時速100kmの高速道路でも「80」の標識があれば時速80kmが上限です。​
これは道路交通法第22条の条文の構造からも明らかで、「道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を」という部分が最初に記されており、標識による指定が優先されることが示されています。逆に新東名高速や東北自動車道などの一部区間では、最高速度が時速120kmに指定されており、法定速度の時速100kmを上回っています。​
ただし、原動機付自転車や電動キックボードなどは、制限速度が法定速度以上であっても法定速度が優先されます。また、消防車や救急車などの緊急車両は制限速度よりも法定速度が優先され、パトカーは法定速度の時速100kmを超えてもスピード違反にならないことが道路交通法で定められています。​

法定速度と制限速度を混同した場合のリスク

法定速度と制限速度を混同すると、知らず知らずのうちに速度超過違反を犯してしまうリスクがあります。道路標識で時速40km制限と指定されている道路で時速50kmなど、指定された速度を超えて走行した場合は「速度超過違反」として警察の取締りを受けることになります。
参考)https://www.zurich.co.jp/carlife/cc-speed-limit/

速度超過違反の罰則は、超過速度や一般道路か高速道路かによって異なります。普通車の場合、一般道路で時速15km以上20km未満の超過では反則金12,000円と違反点数1点、時速25km以上30km未満の超過では反則金18,000円と違反点数3点となります。一般道路では時速30km以上、高速道路では時速40km以上のスピード違反をすると、刑事処分となり罰金または懲役が科せられ、前科がつくことになります。
参考)スピード違反の点数・罰金・反則金とは?捕まった場合の流れと免…

また、最高速度内の走行でも違反になることがあります。道路交通法第70条の安全運転義務に該当する「安全速度違反」として、交差点や横断歩道、見通しの悪い住宅街などで徐行や減速をせずに危険と判断される速度で走行した場合、最高速度内であっても違反とみなされ、普通乗用車であれば違反点数2点と反則金9,000円などの処分となります。​

法定速度の独自視点:生活道路の30km/h化で変わる運転常識

2026年9月から、生活道路における自動車の法定速度が時速60kmから時速30kmに引き下げられることが決定しました。警察は現段階で生活道路の定義を、センターラインや中央分離帯がない1車線の道路かつ、道幅5.5m未満の道路としています。
参考)生活道路における法定速度について 警視庁

この法改正により、法定速度と制限速度の関係がさらに複雑になることが予想されます。生活道路では標識がなくても法定速度が時速30kmとなるため、ドライバーは道路の種類を正しく判断する必要があります。従来から「ゾーン30」という取り組みが行われており、区域を定めて最高速度時速30kmの速度規制を実施していましたが、今回の法改正により生活道路全体が対象となります。
参考)生活道路の法定速度が60km/hから30km/hへ|コラム|…

ゾーン30は生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保することを目的とした交通安全対策の一つで、区域内におけるクルマの走行速度や通り抜けを抑制するものです。さらに「ゾーン30プラス」では、最高速度時速30kmの制限に加えて、ポールやハンプ(道路上に設けられた凹凸)などの物理的デバイスを設置することで、侵入抑止や速度抑制、注意を促す安全対策が実施されています。
参考)ゾーン30とは? 警視庁

車種別の法定速度一覧表

法定速度は車両の種類によって細かく定められています。以下の表に主な車種の法定速度をまとめました。
参考)高速道路の制限速度|車種別の最高速度、時速120kmの区間を…

車両の種類 一般道路の法定速度 高速道路の法定速度
普通自動車 時速60km 時速100km
軽自動車 時速60km 時速100km
大型自動二輪車(125cc超) 時速60km 時速100km
普通自動二輪車(125cc超) 時速60km 時速100km
大型貨物自動車(車両総重量8t以上) 時速60km 時速90km(2024年4月改正)
大型特殊自動車・トレーラー 時速60km 時速80km
緊急車両 時速80km 時速100km
原付一種(50cc以下) 時速30km 通行禁止
原付二種(51cc~125cc) 時速60km 通行禁止
特定小型原付(電動キックボード等) 時速20km 通行禁止

普通自動車や軽自動車は一般道路で時速60km、高速道路で時速100kmが法定速度です。大型貨物自動車(車両総重量8t以上)は、2024年4月1日から高速道路の法定速度が時速80kmから時速90kmに引き上げられました。これは物流の停滞が懸念される「2024年問題」への対策の一環として実施されたものです。​
緊急車両の一般道路での法定速度は時速80km、高速道路では時速100kmです。ただし速度取り締まりに際しては、一般道路・高速道路を問わず速度無制限となることが道路交通法第41条「緊急自動車等の特例」で定められています。​
原付一種(50cc以下)の法定速度は時速30kmで高速道路は通行禁止、原付二種(51cc~125cc)は一般道路で時速60kmですが高速道路は通行禁止です。特定小型原付(電動キックボード等)の法定速度は時速20kmと最も低く設定されています。​

道路標識で制限速度を確認する方法

道路標識による制限速度の確認方法を知ることは、安全運転に不可欠です。最高速度を示す標識は、青い円の中に白い数字で速度が表示されています。これは「規制標識」に分類され、その道路区間で超えてはいけない速度上限を指します。​
道路標識には「始まり」「終わり」「ここから○○m」といった補助標識が一緒に設置されている場合があり、指定された区間でのみ制限速度が適用されます。ドライバーは道路標識や道路標示の有無を確認し、そこに記載された時速で走行する必要があります。標識などがない場合のみ、法定速度に基づいて運転することになります。
参考)徐行の「速度」や「ルール」を確認しよう!

最低速度を示す標識も存在します。赤い円の中に青い数字と青い下線が引いてある道路標識は最低速度を示し、高速道路の対面通行区間でない本線車道の法定最低速度は時速50kmと定められています。最低速度違反の反則金は普通車で6,000円、違反点数は1点です。​
制限速度の標識は、道路の幅や周囲の環境に応じて警察が定めています。一般道では車線数や中央分離帯の有無に加え、歩行者の交通量なども加味されて基準速度が設定され、周辺の交通事情や生活環境などに応じて補正が加えられて最終的な制限速度が決定されます。​
警視庁の公式サイトでは、生活道路における法定速度の改正について詳細な説明がされています(生活道路の速度制限に関する参考情報)
国土交通省のゾーン30に関する資料では、生活道路における安全確保の取り組みが解説されています(ゾーン30の詳細資料)

 

 


法定速度ステッカー 大型車・中型車・トラック用 90km/h 高速道路 安全運転標識 あおり運転防止 走行車両標示 300mm