ホンダは現在、スポーツカーからファミリーカーまで多数のVTEC搭載車を販売しています。以下は主要な現行モデルの一覧です。
| 車種 | グレード | 排気量 | 駆動方式 | 最大出力 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| シビック タイプR(FL5) | タイプR | 2.0L ターボ | FF | 330PS | 最新の高性能FF スポーツ。6MT専用。330馬力超のハイパフォーマンスを実現。 |
| シビック | RS | 1.5L ターボ | FF | 182PS | 実用性と走行性能を両立。CVT と 6MT の選択が可能。 |
| フィット | RS | 1.5L NA | FF | 132PS | 軽快な走りが魅力のスポーティグレード。クラス最高レベルの燃費性能。 |
| N-BOX | G/カスタム | 660cc(NA/ターボ) | FF/4WD | 58-64PS | 国内販売台数トップ。広さと安全性が最大の強み。 |
| N-WGN | G/カスタム | 660cc(NA/ターボ) | FF/4WD | 58-64PS | 安全・快適性重視の軽ハッチバック。実用的な室内空間。 |
| N-ONE | RS | 660cc(NA) | FF | 58PS | レトロでスポーティなデザイン。RS は 6MT 設定あり。 |
| N-VAN | G/L | 660cc(NA/ターボ) | FF/4WD | 58-64PS | 仕事&アウトドア対応のピラーレス軽バン。 |
| WR-V | X/Z/Z+ | 1.5L NA | FF | 131PS | コンパクトSUV 。燃費と使いやすさが売り。 |
| グレイス | HYBRID DX など | 1.5L(ハイブリッド) | FF | 137PS | 上質な小型セダン。法人需要も高い。 |
| M55(ミツオカ) | ベース:シビックRS | 1.5L ターボ | FF | 182PS | シビックRS ベースのレトロスポーツセダン。個性的な魅力。 |
| オデッセイ | e:HEV ABSOLUTE EX | 2.0L(ハイブリッド) | FF/4WD | 175PS | 高級ミニバンの最高峰。広さと静粛性、ハイブリッド性能が特徴。 |
ホンダがVTEC技術を世に送り出したのは、1989年のインテグラDA6に搭載した B16A型エンジンです。その後、技術は大きく進化を遂げています。
1990年には、NSX初代NA1型に搭載した C30A型3リッターV6エンジンが、当時の自主規制上限である280馬力を発揮し、スーパーカーの領域に到達しました。チタン製コンロッドを採用し、可動部の重量を極限まで抑えた設計により、高回転フィールの気持ちよさは多くの愛好家に愛されています。
1995年には6代目シビックに1.5Lモデルが登場し、3ステージVTECを搭載。低回転、中回転、高回転の3つの領域で吸気バルブタイミングとリフト量を独立制御する技術が導入されました。
1999年には、唯一の市販FRモデルであるS2000が登場。2リッターの F20C エンジンは8,300rpmで250馬力を発揮し、リッター当たり125馬力という当時としては驚異的な数値を記録しました。レブリミット9,000回転という超高回転型エンジンは、高回転カムへ切り替わってからの湧き出すようなパワーで、多くのドライバーを魅了しました。
2000年からはホンダが i-VTEC エンジンを搭載し始めます。これは従来のVTECに加え、VTC(連続可変バルブタイミング・コントロール)機構を搭載したもので、より細かい制御が可能になりました。
2013年11月には、VTECターボ技術の開発が発表されました。排気量のダウンサイジングと直噴ターボにより、環境規制に対応しながらもハイパフォーマンスを実現する技術として注目されています。1.5L、2L、1Lの3種類が開発され、ステップワゴンへの搭載を皮切りに多数のモデルに展開されています。
ホンダのVTEC搭載スポーツカーは、クルマ好きの心を掴んで離しません。特に記憶に残るモデルをご紹介します。
**初代インテグラタイプR(DC2)**は、1995年に登場した「FF最強の車」として語り継がれています。B18C spec.Rエンジンは8,200rpmで190馬力を発揮し、フルノーマルながら市販車らしからぬ吹け上がりで猛然と加速します。ヘリカルLSDを効かせた信じがたい旋回性能により、モータースポーツのジムカーナでも第一線で活躍し、現在も中古車市場では高値で取引されています。
**S2000(AP1・AP2)**は、ホンダが送り出した唯一のFRスポーツです。2005年のマイナーチェンジで排気量を2.2Lへ拡大した F22C エンジンは、最高出力242馬力を7,800rpmで発揮し、最大トルク発生も6,500rpmと低くなりました。街乗りからスポーツ走行まで、気持ちよい走りに適した万能性が魅力です。ホンダは現在も純正部品供給を継続しており、名車としての地位を確固たるものにしています。
**3代目シビックタイプR(FD2)**は、最後の自然吸気VTECスポーツです。K20A R-Specエンジンは2リッター排気量で225馬力に達し、4ドアセダンとしては失格といえるほどのガッチガチな足回りでありながら、サーキット走行では抜群の走行性能を発揮します。タマ数も135台と比較的入手しやすく、現実的な価格帯でハイパフォーマンスなVTECスポーツを楽しめる貴重な存在です。
**現行シビックタイプR(FL5)**は、VTECスポーツ最後の戦いの主役です。K20Cターボエンジンはついに330馬力に到達し、6速MTによる操作感も秀逸。ベースグレードでも499.73万円という高価格帯ですが、ホンダが現在販売しているVTEC搭載車で唯一「VTEC搭載車だからとオススメする理由がある」モデルとして、クルマ好きから絶大な支持を受けています。
ミニバンでありながらVTECの持ち味を活かした数少ない存在がオデッセイです。オデッセイがVTEC搭載車の中でも特別な理由は、快適性と走行性能を高次元で両立させた点にあります。
3代目オデッセイ(RB3系)に搭載された2.4L DOHC i-VTECエンジンは、最大出力173PSと最大トルク222Nmを発揮します。ピストンスカートにドットパターンを施すパターンコーティングやピストンオイルジェットの採用により、摩擦低減と熱対策が積極的に施されています。冷却水の流路設計も見直され、エンジン全体の耐久性とノッキング耐性が向上しました。
結果として従来よりも高い圧縮比を実現しながら、燃費性能が向上。走行時の静粛性や振動の少なさにもつながり、ミニバンとして求められる快適性も高いレベルで確保されています。環境性能の面でも、平成22年度燃費基準+25%を達成し、排出ガスについても「平成17年基準75%低減レベル」に適合しています。
アブソルートグレードに搭載される高出力型VTECエンジンは200馬力を超えるパワーを発揮し、スムーズで力強い加速を実現。ダブルウィッシュボーンサスペンションの採用により、優れた路面追従性と安定感あるコーナリング性能が実現されています。床面を低く抑えた超低床プラットフォームにより、重心が下がり、ミニバンとは思えないような俊敏な挙動を発揮します。
オデッセイは「家族も快適に、でも運転も楽しみたい」というニーズを叶える、ミニバンの中でも特にバランスの取れたグレードです。高級感のある内装デザインも採用されており、質感と使い勝手の両方に優れています。
軽自動車にもVTECが広がっています。N-BOX、N-WGN、N-ONE、N-VANなど、660cc排気量のi-VTECエンジンを搭載したモデルが登場しました。
N-BOXはホンダの軽自動車の中でも販売台数が多く、広々とした室内空間と充実した安全機能が特徴です。NA版とターボ版が用意されており、用途に応じて選択できます。
N-ONEはレトロでスポーティなデザインが特徴で、RS グレードでは6速MTの設定があります。軽自動車とは思えないほどのハンドリングの良さで、スポーツドライビングを楽しむユーザーからの支持も厚いです。
N-VANはピラーレスの軽バンで、仕事やアウトドアなど多目的に活用できます。660cc i-VTECエンジンは、軽自動車とは思えない走行性能を実現しており、実用性と楽しさが両立しています。
これらの軽自動車は、昨今の厳しい排出ガス規制の中でも、ホンダのi-VTEC技術により「低排出ガス&低燃費」と「走る楽しさ」を両立させています。軽自動車ユーザーにとっても、VTECは憧れのテクノロジーとして認識されています。
VTECの切り替えメカニズムは、ロッカーアーム内部の油圧ピンが特定の回転数で動作し、通常とは異なるカムに物理的に切り替わることで実現しています。ホンダのエンジンではおおむね5,000回転を超えるとVTECが切り替わり、力強い加速が得られます。このとき、エンジン音が一段と大きくなり、アクセルレスポンスも鋭くなるのが特徴です。
VTECサウンドという独特のエンジン音は、多くのファンにとって「聞きたいがために回す」ほど魅力的です。切り替え時にエンジンの吸気量が一気に増えることで、スポーティーで刺激的な吸気音が生まれるからです。峠道や高速道路でアクセルを深く踏み込むと、VTECサウンドが車内に響き渡り、走る楽しさが倍増します。
さらに、意外と知られていないのが、VTECとi-VTECの違いです。i-VTECは従来のVTECに加え、VTC(連続可変バルブタイミング・コントロール)機構を搭載しており、吸気バルブの開閉タイミングをエンジン負荷に応じて連続的に制御できます。このため、低速時には燃費を重視しながらも、高速時にはパワーを引き出すことが可能です。
結果として、i-VTECはスポーツカーからファミリーカーまで幅広く展開できる柔軟性と効率性を備えた技術となっています。街乗りの快適さと高速走行時の力強さ、そして環境対応性能を備えた、より進化したVTECシステムです。
VTECスポーツの中古車は、プレミアムがついているモデルも多くあります。初代インテグラタイプRは1~1,155万円の価格帯で取引されており、程度良好車には特に高い価格がついています。S2000も同様に、AP1が176万~880万円、AP2が287万~1,100万円という幅広い価格帯で販売されています。
**3代目フィットRS(GK5)**の6速MT車は全国でわずか71台と限定的ですが、最新ながらCVTのみとなった現行モデルと比較しても遜色ない価格帯で購入できます。GK3フィットRSなら78万円~244.9万円で、ジムカーナ競技でも活躍した軽快な走りを味わえます。
**3代目シビックタイプR(FD2)**は中古車市場でタマ数135台、価格帯は188万~478万円と、まだ強烈なプレミアで「資産化」も進んでいないため、現実的な価格で比較的新しく高性能なVTECスポーツを楽しみたいなら、文句なしにオススメできる選択肢です。
ただし、年式が古いモデルは整備記録や修復歴の有無をしっかり確認することが大切です。キッチリとメンテナンスを受けたVTEC搭載車なら、20年以上経過した現在でもモータースポーツの第一線で活躍できるだけの能力を持っているのは事実です。予防整備を中心にメンテナンスを受けた個体ほど、本来の性能を発揮する可能性が高いといえます。
VTECエンジンは高回転域での運転が前提で設計されているため、無理な高回転域での運転はエンジンに負担をかけます。VTECの使いどころは適切に判断し、定期的なメンテナンスを欠かさないことが重要です。
ホンダは名車に対して純正部品供給を継続する意欲を示しており、例えばS2000の純正部品は公式サイトの「S2000 PARTS CATALOG」で確認でき、かなりの頻度で更新し続けています。このような体制があれば、VTECスポーツは長期間にわたって所有し続けることが可能です。
オイル交換や冷却水の管理、スパークプラグの交換など、基本的なメンテナンスを定期的に実施することが、エンジンの寿命を大きく左右します。特にVTECが頻繁に切り替わる走行をする場合は、エンジンへの負荷が大きくなるため、オイルの質と交換頻度に注意が必要です。
ホンダのエンジンは高い信頼性で知られており、きちんとしたメンテナンスを受けたVTEC搭載車であれば、現在でも第一線で活躍できるだけの能力を持っています。「どれだけ高性能でも、純正部品不足で維持に苦労するクルマ」とは一線を画す存在として、VTECスポーツは末永く相棒になり得るのです。
参考:ホンダ公式サイト S2000 PARTS CATALOG
https://www.honda.co.jp/S2000parts/
参考:VTECとホンダエンジンの30年の歩み
https://www.honda.co.jp/sportscar/vtec_history/