自動車のメーターパネルには、クルマの状態を知らせるために多くの警告灯と表示灯が備えられています。従来のガソリン車では、国際規格で定められた警告灯がほぼ統一されていました。しかし、ハイブリッド車や電気自動車、先進運転支援システムの普及に伴い、法規に定められていない珍しい警告灯が次々と出現しています。これらは各メーカーが独自にデザインするため、見慣れぬマークが点灯してドライバーを戸惑わせることが増えています。
珍しい警告灯には、独特のマークが使用されます。例えば「カメ」のマークは、初代プリウスから使われ始めた出力制限を示す警告灯です。また「靴に矢印」「コーヒーカップ」「青いイカ」のような表現で呼ばれるマークも存在します。これらは従来の赤色の危険警告ではなく、システムの異常や特定の状態を示す表示灯として機能しており、色や形状によって緊急度が異なります。
メーターパネルの警告灯は、色によっても意味が区別されます。赤色は最も危険度が高く、すぐに走行を停止して対処が必要です。黄色やオレンジは比較的緊急度が低く、速やかな点検が必要という程度です。一方、緑色は警告灯ではなく「表示灯」と呼ばれ、システムが正常に機能している合図となります。
もっとも有名な珍しい警告灯が「カメ」マークの出力制限表示灯です。日産のEVやハイブリッド車に装備されており、「出力制限表示灯」と正式に呼ばれています。三菱では「パワーダウン警告灯」、トヨタでは「出力制限警告灯」と呼称が異なります。この警告灯が点灯するのは、動力用バッテリーの残量が極端に低下している場合、システムの温度が低すぎたり高すぎたりする場合です。
出力制限表示灯が点灯しているとき、走行用・発電用モーターの出力が制限されるため、アクセルペダルを踏んでも速度が上がりにくくなります。この状態は安全運転の観点から意図的にシステムが制限しているため、強制的に加速することはできません。メインバッテリーの充電などで状態が正常に戻れば、自動的に警告灯は消灯し、通常の走行性能が復帰します。
もし消灯しない場合は、バッテリーシステムやモーター制御系統の故障のおそれがあります。この場合は、整備工場などで点検と修理を受けることが必須です。消灯するまで無理に走行を続けると、より深刻な故障につながる可能性があるため注意が必要です。
ハイブリッド車やEVには、単なる出力制限だけでなく、ハイブリッドシステム全体の異常を示す警告灯も装備されています。これは「ハイブリッドシステム異常警告灯」と呼ばれ、トヨタ、日産、三菱など各メーカーで異なるマークが採用されています。日産では「e-POWERシステム警告灯」、三菱では「パワーユニット警告灯」と呼ばれるなど、メーカーごとに名称が異なります。
このシステム異常警告灯が点灯する場合、バッテリー異常、モーター制御系統の故障、電力管理システムの不具合など、複数の原因が考えられます。ハイブリッド車の動力構造は複雑で、内燃エンジンと電気モーターが統合されているため、原因の特定が困難な場合も多いです。ただし、この警告灯が点灯しているということは、クルマの安全性が危険な状態にあることを示しています。
もし走行中に点灯した場合は、安全な場所にすぐに停車して、販売ディーラーなどに連絡し、指示を仰ぎます。そのまま走行を続けると、突然運転操作ができなくなるなど、極めて危険な状態に陥る可能性があります。特に高速走行中は事故のリスクが跳ね上がるため、細心の注意が必要です。
1980年代から1990年代にかけて、自動車産業では電子制御技術が急速に進歩しました。従来のメカニカルなシステムから、電子制御パワーステアリング(EPS)、電子制御ブレーキ、電子シフトレバーなど、多くの重要機能が電子化されたのです。これに伴い、各システムの異常を知らせる珍しい警告灯が必要になりました。
電子制御ステアリング系では「靴に矢印」のようなマークの警告灯が使われ、EPS(電動パワーステアリング)に異常があることを示します。ホンダやトヨタ、日産などで微妙に異なるデザインが採用されており、統一性がない点が特徴です。一方、電子制御ブレーキ系では、赤や黄色などの色で緊急度を表示し、ドライバーへの警告程度を視覚的に伝えています。
ディーゼルエンジン車の増加も、新たな珍しい警告灯の出現を促しました。「DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)警告灯」は、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる粒子状物質がフィルターに蓄積した場合に点灯します。マツダでは特にこのシステムが採用されており、定期的な高速走行が必要という独特の対処法が求められます。
「青いイカ」に見えるという奇妙な表現で呼ばれるハイビーム表示灯は、複数の横棒に楕円形が組み合わさったマークです。これはヘッドライトがハイビームになっているか、パッシング操作をしているときに点灯する表示灯で、通常の警告灯ではなく機能表示灯に分類されます。このようなユニークなマークが採用される背景には、各メーカーがドライバーへの視認性を高めるため、独自のデザイン工夫を施していることがあります。
最近では疲労運転を検知するシステムも普及してきました。マツダの「ドライバー・アテンション・アラート(DAA)」はこの一例で、ドライバーの疲労や注意力低下を自動検知し、休憩を促す警告灯を点灯させます。このようなシステムの異常があると、珍しい警告灯が点灯し、ドライバーに点検の必要性を知らせます。
さらに、オープンカーのソフトトップ開閉中を示す「ソフトトップ開閉中・表示灯」など、特定の車種にのみ搭載される珍しい警告灯も存在します。フォルクスワーゲンのようなヨーロッパ系メーカーでは、独自のデザイン哲学に基づいた表示灯を採用しており、国産メーカーとの違いが顕著です。
珍しい警告灯が点灯した場合、対処方法は警告灯の種類によって大きく異なります。出力制限表示灯(カメマーク)の場合は、バッテリーの充電や周辺温度の改善で自然に消灯することが多いです。特に冬場の低温時に点灯しやすいため、暖機運転により温度が上がれば消灯することがあります。ただし、充電後や温度改善後も消灯しない場合は、バッテリー関連システムの故障が疑われるため、ディーラーへの点検が必須です。
電子制御系の珍しい警告灯(EPS警告灯やAT警告灯など)の場合は、自動的に消灯することはほぼありません。これらは電子系統の異常を示唆しているため、診断機器による詳細な故障コード読み出しが必要になります。販売ディーラーや専門整備工場では、車両に接続した診断装置で故障原因を特定し、適切な修理方法を判定します。
すべての珍しい警告灯に共通する重要な原則があります。赤色で点灯した場合は、すぐに安全な場所に停車し、エンジンを切って点検するか救援を要請してください。黄色やオレンジで点灯した場合でも、できるだけ早く点検を受けることをお勧めします。警告灯の消灯タイミングや正確な原因判定には、各車種の取扱説明書を参照するか、メーカーのカスタマーサービスに問い合わせることが最善の方法です。
珍しい警告灯・表示灯について詳しく解説した記事。カメマークやEPS警告灯、AT警告灯など具体的なマーク例と対処法がまとめられています。
車の警告灯全般を網羅した一覧。珍しい警告灯だけでなく、一般的な警告灯との色による緊急度の違いや、メーカー別の違いについても記載されています。