フロントエンジン・リアドライブ（FR）は、車体の前部にエンジンを搭載し、後輪を駆動する駆動方式です。エンジンから生み出された動力は、トランスミッションを経てプロペラシャフトという回転軸を通じて後方に伝達され、デファレンシャルギア（デフ）を介して左右の後輪に配分されます。この構造により、前輪は操舵（ハンドル操作）に専念し、後輪が駆動を担当するという役割分担が実現されています。
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プロペラシャフトは車体の中央を縦方向に通る金属製の回転軸で、FR車や4WD車に不可欠な部品です。大型車両では振動を抑えるためにプロペラシャフトを2〜3分割する設計が採用されることもあります。デフから左右のタイヤへの最終的な動力伝達はドライブシャフトが担い、この一連のメカニズムによってスムーズな後輪駆動が可能になっています。
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FR方式は効率的な構造として知られ、前後の重量バランスを理想的な50:50に近づけやすい特徴があります。エンジンなどの重量物を車体前方に、駆動ユニットを後方に配置することで、車両全体のバランスが最適化されるのです。この重量配分の優位性が、FR車特有の優れた走行性能を生み出す基盤となっています。
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FR車の最大のメリットは、前後の重量配分が優れていることです。エンジンを前部に、トランスミッションやデフなどの駆動系部品を後方に分散配置することで、理想的な50:50に近い重量バランスを実現できます。この均等な重量配分により、直進時の安定性が高まり、コーナリング性能も向上します。ハンドリングが素直で、車がドライバーの思い通りに動かせるようになるのです。
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加速性能の面でもFR車は優れています。後輪駆動の特性上、加速時や発進時には車の重心が後方に移動し、駆動輪である後輪に荷重がかかりやすくなります。この効果によってトラクション（タイヤが路面をとらえる推進力）が強化され、力強い加速が可能になります。そのため大排気量のハイパワーエンジンを搭載することもでき、スポーティな走りを実現できるのです。
操作性の面では、前輪が操舵のみに専念できる点が大きな利点です。FF車のように駆動と操舵を同時に行わないため、前輪周りの構造が簡素化され、ハンドルの切れ角を大きく取ることができます。これにより小回りが利きやすく、駐車や狭い道での取り回しが容易になります。また、駆動力の影響がステアリングに伝わらないため、自然で滑らかな操作フィーリングが得られ、運転の質感が向上します。高級セダンにFR方式が多く採用されるのは、この上質な乗り心地と操縦性が理由の一つです。
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FR車の主なデメリットは、室内空間が犠牲になる点です。プロペラシャフトが車体の中央床下を通るため、特に後部座席の足元にセンタートンネルと呼ばれる盛り上がりができてしまいます。さらに、リアサスペンションの大型化やデフのためのスペースが必要となり、FF車と比較して全体的に室内空間が狭くなる傾向があります。フロア高も高くなりがちで、天地方向の余裕も取りにくいという制約があります。
参考）駆動方式による違い
雪道や凍結路面での走行性能も課題です。FR車は駆動輪である後輪への荷重が相対的に少ないため、滑りやすい路面では後輪が空転しやすくなります。FF車が駆動輪である前輪にエンジンの重量がかかり雪道での発進が有利なのに対し、FR車は後輪のグリップ力が抜けやすく、コントロールが難しくなります。積雪地域や路面凍結が頻繁に発生する地域では、FR車よりも4WD車の方が推奨されることが多いのはこのためです。
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車両価格の高さもデメリットの一つです。FF車と比べてプロペラシャフトやリアデフなど追加の部品が必要となり、機構が複雑化するため生産コストが高くなります。また、FR車は高い走行性能を追求するケースが多く、大きなエンジンや高剛性の車体を採用するため、そもそもの価格水準が高くなる傾向があります。走行性能と乗り心地を重視する高級車やスポーツカーに多く採用される結果、一般的な大衆車よりも高額になりやすいのです。
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FR（フロントエンジン・リアドライブ）とFF（フロントエンジン・フロントドライブ）は、駆動輪の位置が最も大きな違いです。FF車はエンジン、トランスミッション、デフ、駆動輪がすべて車体前方で完結しており、プロペラシャフトが不要です。この構造により生産工数が削減でき、低コストで利益効率が高いため、現代の大衆車の主流となっています。FF車は車内空間を広く確保できる利点があり、コンパクトカーやミニバンに適しています。
重量配分の面でもFRとFFには明確な差があります。FF車は重量物がすべて前方に集中するため前輪に荷重が偏り、カーブでは車の前方に強い遠心力がかかりやすくアンダーステア（外側に飛び出そうとする現象）が発生しやすい特性があります。一方、FR車は前後の重量配分が50:50に近く、素直なハンドリングと優れたコーナリング性能を実現します。ただし、FF車は雪道での発進が有利で扱いやすいという利点があり、一般的なドライビングではクセが少ないとされています。
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4WD（四輪駆動）は前輪と後輪の両方を駆動する方式で、雪道や悪路での走破性が高い点が特徴です。FFベースやFRベースの4WDがあり、基本構造を引き継ぎながら全輪に駆動力を伝達します。MR（ミッドエンジン・リアドライブ）やRR（リアエンジン・リアドライブ）は、エンジンを車体中央や後方に配置する特殊なレイアウトで、主にスポーツカーやレーシングカーに採用されます。これらの駆動方式は、それぞれ異なる走行特性やメリット・デメリットを持ち、車の用途や目的に応じて選択されています。
トランスアクスルは、FR車の前後重量配分をさらに最適化するための先進技術です。通常のFR車ではエンジンとトランスミッションが車体前方に配置されますが、トランスアクスル方式ではエンジンとミッションを切り離し、トランスミッションを後輪車軸付近に移動させます。エンジンに次ぐ重量物であるトランスミッションを後方に配置することで、理想的な前後重量配分を実現し、ミッドシップレイアウトに匹敵する高いトラクション性能を獲得できます。日産GT-RやレクサスLFAなどの高性能スポーツカーがこの方式を採用しています。
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フロントミッドシップは、エンジンの搭載位置を工夫したレイアウトです。一般的なFR車ではエンジンが前輪車軸よりも前方に位置しますが、フロントミッドシップでは前輪車軸よりも後方、かつキャビン（運転席）よりも前方にエンジンを配置します。この設計により車の重心を理想的な位置に近づけることができ、前後重量配分の最適化が可能になります。BMW車の多くがこのレイアウトを採用し、優れたハンドリング性能を実現しています。
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これらの技術は、FR車の走行性能をさらに高めるために開発されました。通常のFR車では、エンジンとトランスミッションが前方に集中するため、どうしてもフロント寄りの重量配分になりがちです。トランスアクスルやフロントミッドシップを採用することで、ホイールベースの延長や車室寸法の短縮といった不利な調整を行わずに、理想的な重量バランスを達成できるのです。ただし、これらの技術は機構が複雑でコストが高くなるため、主に高級車やスポーツカーなど性能を重視する車種に限定して採用されています。
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グーネット - フロントエンジン・リヤドライブ（FR）の詳細解説
JAF - 駆動方式「FF・FR・4WD」の意味と特徴
WEB CARTOP - FF・FR・MR・RR・4WDなど駆動方式の違い
