アンダーステアとは、一定のハンドル角で旋回する際、速度が上がるにつれて車が外側に膨らんでいく現象です。これは主に前輪の横滑りによって発生し、ハンドルを切っても思ったより曲がらない状態を指します。前輪が曲がろうとする力よりも直進しようとする力のほうが大きくなってしまうのが原因です。
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オーバーステアとは、一定のハンドル角で旋回する際、速度が上がるにつれて車が内側に切れ込んでいく現象です。これは後輪の横滑りによって発生し、車が想定した進行方向よりも狭い弧を描いてしまう状態です。後輪のグリップ力が遠心力に負けてしまうのが主な原因で、クルマが内側に過剰に曲がり、やがてスピンしてしまうこともあります。
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FF車(前輪駆動車)はアンダーステアが起こりやすい特徴があります。前輪が舵取りと駆動の両方の役割を担っているため、コーナリング時にフロントタイヤのグリップが不足しやすくなります。FF車は前輪だけで曲がる・進む役割を同時に担っているため、限界を超えるとアンダーステアが発生する傾向があります。
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FR車(後輪駆動車)はオーバーステアが起こりやすい特徴があります。重たいフロントを後輪で押し出すような格好となり、カーブの内側へ回り込むオーバーステアとなります。後輪が駆動力を伝えるため、コーナリング時にリヤタイヤが滑りやすく、オーバーステアが発生することがあります。いわゆる「ドリフト」はこのオーバーステアの特性を利用した走行技術ですが、公道での走行は法令違反や事故の原因となるので絶対に行わないようにしましょう。
参考)FFとFRの違い | スタッフブログ
アンダーステアの原因は主として3つあります。
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アンダーステアの対処法は発生場所によって異なります。入り口のアンダーステアは、進入速度を下げることでほとんど解消しますが、単純にハンドルを切り足せばもう少し曲がるということも稀にあります。出口側のアンダーは、舵角が大きいままアクセルオンした場合、ステアリングを戻しながら、アクセルを加減しながら踏めばよく、舵角が適切にもかかわらずアンダーステアが出る場合は、単にオーバースピードなので、アクセルを戻すかブレーキを踏み直して車速を落とすしかありません。
FF車の場合、アクセルを少し戻してあげることでフロントタイヤのグリップを回復させることができます。一方、FR車の場合は、アクセルを踏んで後輪にトラクションをかけ、意図的にオーバーステア傾向を作ることで車体の向きを変えるテクニックもありますが、これはかなり難しい技術です。
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オーバーステアは、コーナリングの際にタイヤのグリップ力が遠心力に負けて後輪が横滑りすることによって発生します。カーブへの進入でステアリングを過度に切り込んだり、後輪駆動車がカーブからの立ち上がりで急加速したりすると、後輪の接地摩擦力が遠心力に負けて、車体後部が外側へ流れ始めます。このまま後輪が滑り続けると巻き込んでスピン状態に陥る恐れがあります。
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オーバーステアの対処方法は、駆動方式により変わってきます。FR車や4WDの場合、アクセルを少し戻してあげることで、後輪がグリップを失ってしまう状態を解消できます。アクセルを踏みすぎて後輪がグリップを失っている際、アクセルを少し戻し、後輪のグリップを回復してあげることでオーバーステアは解消します。
FF車の場合、アクセルを踏み、車を安定させる必要があります。オーバーステア状態時に、意図的にアクセルを踏むことでアンダーステア状態を作り、オーバー傾向を軽減します。スピンしそうなのにアクセルを踏むという感覚は、練習しなければ身に付かないものです。
カウンターステアも重要な対処法です。運転者が横滑りを感知した瞬間、ステアリングをカーブの外側方向へ切ると、操舵輪である前輪が車体前部の回頭を食い止め、後輪の滑りを収束させます。カウンターステアにおいて重要なのは「切り始めのタイミング」「舵角」「戻すタイミング」の3つです。
参考)カウンターステア - Wikipedia
タイヤの空気圧調整は、アンダーステアとオーバーステアの特性を変える効果的な方法です。オーバーステアの対策として挙げられるのが、原因となる後輪のグリップ力を高めることです。そのためには、後輪の空気圧を下げるようにしましょう。後輪の空気圧を下げることで、接地面が増えグリップ力が増します。逆に、アンダーステアを解消したい場合は、前輪の空気圧を下げることでフロントのグリップ力を高めることができます。
参考)オーバーステアって具体的にどんな現象?
サスペンションの調整も効果的です。フロント部分が重くなっていると、リアのグリップ力が弱まってしまいます。そのため、サスペンションを調整することで、オーバーステア対策に繋げられます。サーキット走行などでは、前後のダウンフォース量を調整するなどして、クルマの特性やドライバーの好みに合わせて最適なバランスを探り続けています。
参考)オーバーステアとアンダーステアとは?
多くの市販車では、安全性の観点から意図的にアンダーステア傾向のセッティングが施されています。これは、オーバーステアが発生すると修正が難しく、スピンに至る可能性が高いためです。オーバーステアは発生すると修正が難しく、アクセルを開くとそのままスピン、アクセルを閉じても車の姿勢は既に崩れており、ブレーキを踏むとフロントに荷重がかかってトラクションが抜けかねないという状況になります。
参考)https://intensive911.com/car-related-topics/95282/
公道での走行では、アンダーステアとオーバーステアの発生を未然に防ぐことが最も重要です。カーブ走行時は必ず減速することが基本です。速度が高すぎることがアンダーステア、オーバーステア両方の主要な原因となります。
参考)実は身近な危険現象!アンダーステア・オーバーステア!カーブ走…
一般道で発生する事故の多くは、カーブを曲がり切れずに対向車と衝突するアンダーステア起因のものが多いとされています。車の走行ラインが外側に膨らみ、対向車線にはみ出してしまうパターンです。一方、オーバーステア起因の事故は、一般道だと交差点で停止している状態から急発進し、格好良く交差点やカーブを曲がろうとした時に発生することが多いようです。
弱めのアンダーステアが出ているときに、車速を落としてフロントタイヤのグリップが一気に回復すると、リヤタイヤが横に流れ出すことがあります。これをリバースステアといい、急なハンドル操作やアクセルワークの変化によって発生します。特にFF車では、急なカーブで高回転からいきなりアクセルをオフにすると「アンダーからオーバーステアに」転じて車の先端がいきなりカーブ内側を向く「タックイン」が生じることがあります。
現代のロードカーでは、センサーで横滑りを感知するとパワーステアリングが補助的にカウンターステア制御を行うアクティブステアリングを搭載する車種が増えています。ホンダの「モーションアダプティブEPS」はオーバーステアを感知すると、逆操舵方向へのステアリングを軽くして、ドライバーの操作を誘導する機能があります。しかし、こうした電子制御に頼りすぎず、基本的な車の挙動を理解しておくことが安全運転につながります。
トーヨータイヤによるアンダーステアとオーバーステアの詳しい解説
コーナリング時の挙動や駆動方式による違いについて、図解を交えて分かりやすく説明されています。
J SPORTSによるGTVディクショナリー
プロのエンジニアによるオーバーステアとアンダーステアの解説動画や、レーシングカーでのセッティング方法が紹介されています。