デファレンシャルギアは、車がコーナーを曲がる際に左右の車輪の回転差を調整する重要な装置です。カーブを曲がるとき、外側の車輪は内側の車輪よりも長い距離を走行するため、両輪の回転数に差が生じます。この回転差を吸収しなければ、タイヤが路面を引きずり、走行抵抗の増加やタイヤの異常摩耗が発生してしまいます。
参考)新卒採用で知っておくべき自動車用語:デファレンシャルギアとは…
デファレンシャルギアは大きく分けて「オープンデフ(標準的な差動装置)」「LSD(差動制限装置)」「デフロック」の3種類が存在します。オープンデフは左右輪の回転差を自由に吸収できる一方、片方の車輪が空転すると駆動力が失われる弱点があります。この欠点を解消するために開発されたのがLSDで、片方のタイヤが空転し始めると反対側のタイヤに駆動力を伝達させる機構を持っています。
参考)自動車の部品「LSD」とは?仕組みや効果を解説 - GEAR…
デファレンシャルギアの選択は、車の使用目的や走行環境によって大きく異なります。一般的な街乗り車にはオープンデフが搭載され、スポーツ走行やオフロード走行を重視する車にはLSDが採用されることが多くなっています。
参考)LSDとは?種類やメリット・デメリットについて徹底解説!

Domoni 37ピース テクニカルパーツ レゴキット用 ギアデファレンシャルショックアブソーバー 6.5L 列車ホイールアクスル Moc ビルディングセット DIY
オープンデフは最も一般的なデファレンシャルギアで、差動制限機構を持たないシンプルな構造が特徴です。複数のギアを組み合わせた構造で、左右輪の回転差を自由に吸収できる機能を持っており、差動装置とも呼ばれています。
参考)トラックのデフとは?構造・種類・役割からメンテナンス、故障…
この装置の仕組みは、内輪と外輪で異なる軌跡を通る際に、内側のタイヤの回転数を減らした分だけ外側のタイヤの回転を増やすことで、スムーズな右左折を可能にしています。直進走行時には左右の車輪に均等にトルクを配分し、デフケースからの入力トルクが内部のピニオンギヤとサイドギヤを介して左右の車軸に伝達されます。
しかしオープンデフには大きな欠点があり、片方のタイヤが空転してしまうと車が前へ進めなくなるという問題を抱えています。負荷が軽い方のタイヤを多く回転させようとする特性があるため、通常の走行では問題ありませんが、片輪が浮いた状態や滑りやすい路面では駆動力を失ってしまいます。この欠点により、悪路走破性や高速コーナリング性能を求める用途には不向きとされています。
参考)LSDとデフロックの違いとは?それぞれの役割と種類について解…
機械式LSDは、内蔵された多板クラッチを駆動トルクによって押しつけることで、強力な差動制限効果を発揮するデファレンシャルギアです。片方の車輪がスリップして回転数が高まると、圧着されていた複数のクラッチ板が押し広げられ、もう一方の車輪に駆動力を伝達します。
参考)デファレンシャルギアの仕組み-自動車リサイクルパーツは京都の…
機械式LSDには1Way・2Way・1.5Wayの3種類が用意されており、駆動方式や用途によって基本的な選択が異なります。最も強力なLSD効果を発揮する機構として知られ、ドリフト走行やサーキット走行を楽しむドライバーに高く評価されています。作動時はデフロックに近い状態になるため、左右両輪がしっかりと接地している時には車は安定した駆動力を発揮できます。
ただし機械式LSDは高価であることがデメリットで、車種やLSDの種類にもよりますが、本体価格と組み込み工賃を併せて15~25万円程度かかります。また専用のデフオイルが必要で、FR車なら粘度が高く硬いLSD専用オイルを選べば問題ありませんが、FF車などはオイル選びを間違うと思わぬトラブルに繋がります。定期的なメンテナンスとオイル交換が欠かせず、クラッチ板の摩耗により効果が低下していく特性も持っています。
参考)機械式LSDのデフオイルは専用品を! 選び方や交換時期につい…
トルセン式LSDは「トルクセンシング」の略称で、駆動力を感知して左右の車輪に生じる回転差に制限を加える仕組みを取り入れているのが特徴です。デフケースと呼ばれる器の中に複数のギヤが内蔵されており、噛み合わせたことによる抵抗およびデフケースとの抵抗を使って駆動力の配分を行います。
参考)LSDとは?トルセンLSDとヘリカルLSDの違い、メリットな…
ねじられるように歯が刻まれたウォームギアの回転抵抗を利用して差動制限をかける構造で、左右輪にかかるトルク差に応じた差動制限が可能です。機械的な構造で瞬時にトルク配分を変更できる利点があり、高い信頼性と応答性を特徴としています。摩擦部品を使用しないため、耐久性にも優れています。
トルセン式LSDはスポーツカーやSUVなど走行性能を重視されるジャンルの車に採用されているケースが多く、走行安定性に長けていることが強みとなります。街乗りでの扱いやすさを損なわず、必要なシーンではしっかりと差動制限をかけられるため、スポーツタイプの車に純正採用されることが多いのが特徴です。安定して動作し、かつ摩耗する箇所が少なく高寿命である点も純正採用される理由と言えます。しかし機械式LSDに比べると効きが弱く、ドリフトなどをしている人からするとどうしても物足りなく感じてしまうこともあります。
参考)トルセンLSDの効きは感じられるのか!?オープンデフと比べて…
ヘリカル式LSDはトルク感応式LSDの一種で、「ヘリカルギヤ」を用いて差動を制限する方式です。トルセン式LSDのType Bをヘリカル式LSDと呼ぶこともあり、斜めの歯を持つヘリカルギヤ(はすば歯車)を使用しているのが特徴です。
ヘリカルギヤは平行な歯を持つ平歯車よりもかみ合い率が高いため、伝達精度が高いことが特徴となっています。すべてヘリカルギアと呼ばれる形状のギアで構成され、プラネタリーギアを左右不等形状として、プラネタリーギアがデフケースに不均等に押しつけられる力を利用して差動制限力を向上させる仕組みです。
参考)オフロード車の魅力! ~LSDってなに?~ - ドレスアップ…
片方の車輪がスリップし、その車輪にトルクが集中したとき、反力(歯車同士が離れようとする力)が大きくなります。この反力により歯車がデフケースに押し付けられて抵抗が発生し、差動が制限されます。スリップを検知して差動制限をかけるまでの速度が速いことが特長で、差動を制限する力が強いことも利点となっています。
ヘリカルLSDの構造は、4個の「ロングピニオンギヤ」と4個の「ショートピニオンギヤ」と2個のサイドギヤで構成されており、デフケースに組み込まれているピニオンギヤは常時噛み合っています。サイドギヤの上を自転しながら公転する構造をとることで、効率的な差動制限を実現しています。
ビスカス式LSDは高粘度のシリコンオイルが封入されたビスカスカップリングで左右の車輪を連結したタイプです。ビスカスカップリングは流体クラッチの一種であり、内部の流体を介して回転運動を伝達する仕組みを持っています。
速度感応式の機構で、スリップする回転数に対応してトルクを配分するものです。片方の車輪がスリップして回転数が高まると、その車輪の力がビスカスカップリングによってもう片方の車輪に伝わり、駆動力を確保します。スムーズに差動制限に移行できることがビスカス式LSDの利点となっています。
ただしビスカス式は基本的に油圧でコントロールしてくれるタイプですが、正直効きは弱いという評価が多く見られます。旧式のものとなり、現在販売中の国産車で搭載されているケースは減少傾向にあります。構造がシンプルでメンテナンスフリーに近い点はメリットですが、高負荷走行時の性能面では他のLSDタイプに劣る傾向があります。
参考)LSDについてのお話。
電子制御式LSDは、センサーとコンピューターを使って最適なトルク配分を自動制御する最新のデファレンシャルギアです。走行状況や路面状態をリアルタイムで検知し、電子的に差動制限力を調整することで、あらゆる走行シーンで最適なトラクション性能を発揮します。
参考)スポーツカーなどに使われるLSDを車につけるメリットやデメリ…
電子制御式の大きな利点は、ドライバーの操作や走行条件に応じて瞬時に差動制限の強さを変更できることです。機械式LSDのように固定された特性ではなく、状況に応じた柔軟な制御が可能なため、街乗りからスポーツ走行まで幅広いシーンで快適性と性能を両立できます。
しかし電子制御式は内部のクラッチ機構や電子部品など複雑なシステムを持つため、他のLSDタイプと比較して高価格になりやすい傾向があります。また電気系統のトラブルが発生した場合の修理費用も高額になる可能性があり、長期的なメンテナンスコストを考慮する必要があります。最新の高級車やスポーツカーに採用されることが多く、先進的な走行性能を求めるユーザーに適した選択肢となっています。
デファレンシャルギアの配置と必要性は、車の駆動方式によって大きく異なります。FF車(フロントエンジン・フロントドライブ)の場合、デファレンシャルギアは左右の前輪の車間に配置され、トランスミッションと一体になったトランスアクスルを採用しています。
参考)FF・FR・4WD? 駆動形式の違いとメリット・デメリット
FR車(フロントエンジン・リアドライブ)では、デファレンシャルギアは左右の後輪の間に配置されます。FR車は前輪で操舵、後輪で駆動するという役割分担がされているため、車が効率的に動き、自然なステアリングフィールを得られる特徴があります。プロペラシャフトを通じてエンジンからの動力を後輪に伝達するため、デファレンシャルギアは独立した構造となっています。
参考)デフの寿命と交換時期
4WD(四輪駆動)車の場合は、エンジンからの回転力をセンターデフを通じて4つのタイヤに分配するため、より複雑なデファレンシャルギアシステムが必要です。フロントとリアの両方にデファレンシャルギアが配置され、さらにセンターデファレンシャルで前後輪の回転差も吸収します。高性能を発揮できる代わりに、3つのデファレンシャルギアを持つなど複雑な構造になります。4WDはFFやFRに比べて車体が重くなり、燃費が悪いというデメリットがありますが、悪路走破性や高速走行時の安定性に優れています。
参考)デファレンシャルギアとは?仕組みと役割を徹底解説!故障原因と…
駆動方式によって最適なデファレンシャルギアのタイプも変わってきます。FF車などはトランスミッションとデフが一体になっているため、機械式LSDに交換する場合でも極端に硬いオイルや極圧剤の添加量が多いGL規格のギヤオイルを入れるのは厳禁です。一方FR車や4WDのリアデフでは、より高い粘度のオイルが使用できます。このように駆動方式に応じた適切な選択とメンテナンスが、デファレンシャルギアの性能を最大限に引き出すために重要となります。
デファレンシャルギアは、デフオイル交換を適切に行っていれば、そう簡単に壊れるパーツではなく、通常であれば10~15万キロ程度もつと言われています。明確な寿命は特になく、タクシードライバーの中にはデフが壊れたら車を買い替えるという人もいるほど長寿命な部品です。
デフオイルの交換時期の目安は、一般的に2~3年間または走行距離にして5万km程度、あるいは20,000キロ前後と言われています。カーブの多い山道などデファレンシャルギアに負荷がかかる運転をする場合は、より頻繁な交換が推奨されます。このオイル交換を適切に行っていればデフはかなり長期間使えます。
参考)デフオイルとは?交換方法やかかる費用について解説!
デフオイルの交換にかかる費用は、デフ1箇所あたり3,000円から1万円程度が目安となります。使用するオイルの種類、車種、そして依頼する業者によって費用は変動します。機械式LSDを装着している場合は、専用のLSDオイルが必要となり、メーカーや車種、駆動方式によって最適なオイルが異なります。
参考)デフオイル交換時期の目安と費用|メーカー・車種別に解説します…
デフが故障した場合は、左右のタイヤの速度差(回転数の差)の調整ができなくなるため、走行が不安定になったり、最悪の場合は走行不能になります。デフオイルの漏れを修理する場合は50,000円程度、ベアリングの交換となると120,000円~140,000円程度の費用がかかります。デフの交換は、ジャッキアップして車体の下から行うことになりますが、外しにくくかなり重量のあるパーツのため、整備工場などの専門家に依頼することが推奨されます。
参考)デフの故障とは?放置するとカーブでの事故の原因に…
参考:オイル選びや交換時期については、メーカーの整備マニュアルや専門店での相談が重要です
機械式LSDのデフオイルは専用品を! 選び方や交換時期につい…

YIBOOOM 116ピース ギアと車軸パーツセット レゴテクニックと互換性あり ショックアブソーバー ホイール チェーンリンク フレーム ジョイント DIY モック ギア チェーン リンクス ピン 車軸 差動詰め合わせパック (ランダムカラー)