三菱エクスパンダーは、2017年のインドネシア国際オートショーで初公開された7人乗りのMPV(マルチパーパスビークル)です。全長4,595mm、全幅1,750mm、全高1,750mm、ホイールベース2,775mmというコンパクトながらも実用的なボディサイズが特徴です。この「ちょうどイイサイズ」に3列・7人乗りのレイアウトを実現するため、三菱は限られたボディ内で最大限の居住空間を確保する設計を採用しました。ルーフが傾斜していない水平基調のデザインにより、3列目の頭上空間も十分に確保。フル乗員の状態でも窮屈にならないよう配慮されています。
セカンドシートは60:40分割式、サードシートは50:50分割式となっており、多彩なシートアレンジが可能です。セカンドシートの中央席を倒せばアームレストとして活用でき、長さのある荷物も効率的に積載できます。インテリアは水平基調で見切りの良いインパネ設計となっており、視認性に優れたハイコントラストメーターと高効率エアコンシステムを装備。細部まで手の込んだ上質な内装素材を備えています。
エクスパンダーに搭載されるパワートレインは、MIVEC機構付きの1.5L直列4気筒ガソリンエンジン(4A91型)です。最高出力77kW(104ps)/6,000rpm、最大トルク141N・m(14.4kgf・m)/4,000rpmを発生します。トランスミッションは初期モデルで5速マニュアルと4速オートマが用意されていましたが、2021年11月のマイナーチェンジでより高効率なCVTに変更されました。この改良により、低燃費化が実現されています。
燃費性能については、公式カタログ値は明確に公表されていませんが、推定値として15~20km/Lの範囲であると考えられます。特に注目すべきは、2024年2月にタイ市場で発売された「エクスパンダーHEV」です。このハイブリッドモデルは独自開発の1.6Lエンジンにモーターを組み合わせ、燃費性能で約19.2km/Lを達成しています。これは、従来のガソリンエンジンモデルから大幅な効率改善を示しており、環境配慮と経済性の両立を実現しています。
エクスパンダーが活躍するインドネシア、タイ、フィリピン、ベトナムなどのASEAN地域は、雨季にスコールが頻発し、郊外には未舗装道路が多く存在します。こうした走行環境を想定して、エクスパンダーは最低地上高を220~225mm(初期モデルは205mm)と高めに設定しました。この高さは、ホンダフリードやトヨタシエンタなど競合する軽タイプのミニバンよりも明らかに優れています。
路面状況が悪い環境でも車体下部が損傷しないよう配慮されたこの設計は、ファミリー層の日常使用を想定したものです。インドネシアでの調査によると、地上高の高さは、スコール後のぬかるみはもちろん、農村部への移動時に大きなアドバンテージになると報告されています。さらに、三菱は定期的なマイナーチェンジを通じて、足回りのサスペンション性能も改善し、悪路走破能力を継続的に強化しています。
エクスパンダーのエクステリアデザインは、三菱ブランドのアイコンである「ダイナミックシールド」をさらにアグレッシブに進化させたものです。精悍なフロントマスクを基調にした力強いスタイリングが特徴で、同じくインドネシアで人気のパジェロスポーツのイメージが色濃く活かされています。フロントグリルのデザインは、単なる装飾ではなく、SUVらしい存在感と勇猛さを感じさせる三次元的な構成となっています。
ヘッドライトはLEDを採用し、明るく運転しやすい視界を確保。ポジションランプからエンブレムを通じて伸びるライトの流線表現は、フロントバンパー内に配置された2つのライト(ヘッドライトとウィンカー)と相まって、統一感のあるデザイン言語を実現しています。ボディ側面には、ブラックのホイールアーチモールディングが施され、SUV的な堅牢性が強調されています。リアビューはL字型のリアテールランプを装備し、どっしりとした頼もしい雰囲気を演出。マフラー付近の樹脂パーツは深いグレーで統一され、全体的に上質感を高めています。
2019年11月に追加されたエクスパンダークロスは、このデザイン言語をさらに進化させたモデルで、車高を20mm高め、ホイールアーチの幅を50mm拡大。17インチのアルミホイールと新デザイン組み合わせにより、より力強いプレゼンスを実現しています。カラーバリエーションでは、エクスパンダークロス専用色の「サンライズオレンジメタリック」を設定し、個性的な選択肢を提供しています。
エクスパンダーは、2017年のデビュー以来、東南アジア地域で未曽有の成功を収めています。販売開始から10か月で8万台以上を受注し、2018年3月にはインドネシアでカーオブザイヤーを受賞。同年10月にはベトナム市場での販売を開始し、2021年9月には50,000台販売達成を記念した特別仕様車「スペシャルエディション」を発売するなど、継続的な人気を保ち続けています。
2022年度のグローバル販売台数では、三菱自動車の全モデル中で3番手となる13万台以上を販売。実は三菱の屋台骨を支える主力モデルとなっているのです。2024年の販売台数はインドネシアだけで18,853台を記録し、「最も売れている三菱車」としての地位を確立しました。さらに注目すべきは、ガルーダ・インドネシア航空がエクスパンダーを描いた特別塗装機の運航を開始した点です。これは、人気の高いエクスパンダーを描くことで、両社に付加価値をもたらすという企業判断の表れであり、地域を代表する車種としての認識を示しています。
現在、エクスパンダーはインドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、バングラデシュ、さらには中南米や中東など、世界50か国以上に輸出されています。生産は、2017年に稼働が始まったミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)を中心に行われ、現地調達率は80%以上。インドネシアの経済成長に貢献しながら、世界戦略車としてのポジションを確立しています。
関連情報:三菱エクスパンダーの詳細スペックと販売情報
Wikipediaの三菱エクスパンダーページには、世界各地での販売開始時期とモデル沿革が記載されています。
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