道路法道路交通法違いを管理者と罰則から解説

道路法と道路交通法は目的も管理者も異なる重要な法律です。道路法は道路の整備・管理を規定し、道路交通法は通行ルールを定めます。両者の違いを理解することで、適切に道路を利用できるのではないでしょうか?

道路法と道路交通法の違い

道路法と道路交通法の主な違い
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道路法:道路そのものの管理

道路の整備、構造、保全、費用など道路インフラの管理を規定

🚗
道路交通法:通行ルールの規定

車両や歩行者の通行方法、交通安全、違反時の罰則を定める

⚖️
管理者と所管の違い

道路法は道路管理者が所管し、道路交通法は警察(国家公安委員会)が所管

道路法と道路交通法は、どちらも道路に関する法律ですが、その目的と規定内容は大きく異なります。道路法は昭和27年(1952年)に制定され、道路網の整備を図るため、道路の指定・認定、管理、構造、保全、費用の負担区分などを定めています。一方、道路交通法は昭和35年(1960年)に公布され、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図ることを目的としています。

 

簡単に言えば、道路法は「道路そのものの整備や管理」に関する法律であり、道路交通法は「道路を使用する際の行動やルール」に関する法律です。道路法が道路というハード面を扱うのに対し、道路交通法は道路利用者の行動というソフト面を扱っています。

 

両者の所管も異なります。道路法は国土交通省が所管し、道路管理者(国土交通大臣、都道府県、市町村)が権限を持ちます。一方、道路交通法は警察庁(国家公安委員会)が所管し、交通警察が執行権限を持っています。

 

道路法の目的と管理者の役割

 

道路法の目的は、道路網の整備を図り、交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することです。道路法では、道路を高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道の4種類に分類しています。各道路には管理者が定められており、高速自動車国道は国土交通大臣(一部は高速道路会社が代行)、一般国道の指定区域内は国土交通大臣、区域外は都道府県知事、都道府県道は都道府県、市町村道は市町村が管理します。

 

道路管理者は、道路管理権という特殊な権能に基づいて道路を管理します。具体的には、道路の新設、改築、維持、修繕、災害復旧などを行い、道路を常に良好な状態に保つ義務があります。また、道路占用許可や特殊車両通行許可などの許可権限も道路管理者が持っています。

 

道路法では、道路の構造や保全のために車両の大きさや重さを制限しており、一定の基準を超える特殊車両が道路を通行する場合には、道路管理者の許可が必要です。これは道路の損傷を防ぎ、交通の安全を確保するための重要な制度です。

 

国土交通省関連の詳細解説:道路法の基礎知識と道路管理者の役割について

道路交通法の目的と罰則の仕組み

道路交通法の目的は、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図り、道路交通に起因する障害を防止することです。この法律は自動車やオートバイだけでなく、自転車や歩行者に対する規定も設けており、すべての道路利用者が対象となります。

 

道路交通法に違反すると、行政処分と刑事処分の両方が科される可能性があります。行政処分には違反点数の累積による免許停止や免許取り消し、反則金の納付があります。反則金は比較的軽微な違反(違反点数6点未満)に対して適用され、青切符が交付されます。一定期間内に反則金を納めれば刑事責任を免れる制度です。

 

一方、重大な違反には刑事処分として罰金刑や懲役刑が科されます。飲酒運転無免許運転、速度超過など、一般的に違反点数6点以上の違反には赤切符が交付され、刑事手続きが行われます。罰金刑に処されると前科がつくという点が反則金との大きな違いです。例えば、駐車違反の場合、駐車禁止の標識がある場所で5分以上停車すると違反となり、普通車で反則金7000円が科されます。

 

道路交通法違反の罰金と反則金の詳細:違反の種類と処分内容について

道路法における許可制度と違反時の対応

道路法には、道路の適切な管理と保全のために複数の許可制度が設けられています。代表的なものが道路占用許可と特殊車両通行許可です。道路占用許可は、電柱、水道管、ガス管、看板、露店など、道路を継続的に使用する場合に必要な許可で、道路管理者に申請します。一方、道路使用許可は工事や作業など一時的な道路使用に必要で、警察署に申請します。

 

特殊車両通行許可は、一般的制限値(幅2.5m、長さ12m、高さ3.8m、総重量20tまたは25t)を超える車両が道路を通行する際に必要です。大型トレーラーや重機運搬車などが該当し、道路の構造や交通への影響を考慮して許可が出されます。許可を受けた場合でも、徐行や誘導車の配置など、指定された通行条件を守る必要があります。

 

道路法に違反した場合の罰則は厳格です。特殊車両の無許可通行や許可証の不携帯には100万円以下の罰金が科されます。許可条件に違反した場合も同様です。さらに、道路管理者から改善命令を受けたにもかかわらず従わない場合や、通行禁止・制限されている道路を通行した場合には、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。これらの罰則は運転手だけでなく、事業主体である会社や事業主にも適用されます。

 

特殊車両通行許可の違反と罰則:無許可通行や条件違反の具体例について

道路交通法における自転車と歩行者への適用

道路交通法は自動車だけでなく、自転車や歩行者にも適用されます。自転車は法律上「車両」として扱われるため、原則として車道を通行しなければなりません。しかし、以下の場合には例外的に歩道を通行できます:13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体に障害がある場合、車道の通行が危険な場合、道路標識等で歩道通行が許可されている場合です。

 

自転車が歩道を通行する際には、歩道の中央から車道寄りの部分を徐行(時速6~8km程度)しなければなりません。歩行者の通行を妨げる場合は一時停止する義務があります。これらのルールを守らずに歩行者との事故を起こした場合、自転車側の過失が大きくなります。

 

歩行者は道路交通法により、原則として歩道を通行しなければならないと定められています。歩道と車道の区別がない道路では、道路の右側端を通行することが推奨されています。横断歩道のない場所で道路を横断する際には、左右の安全を確認し、車両の通行を妨げないようにする義務があります。

 

道路法と道路交通法の関連性と実務での注意点

道路法と道路交通法は異なる法律ですが、実務では密接に関連しています。例えば、道路工事を行う場合、道路法に基づく道路占用許可と、道路交通法に基づく道路使用許可の両方が必要になることがあります。道路占用許可は道路管理者(国土交通省系統)に、道路使用許可は警察署に申請する必要があり、両方の許可を取得しなければ工事を開始できません。

 

また、特殊車両を運行する際には、道路法に基づく特殊車両通行許可を取得するだけでなく、道路交通法に定められた通行ルール(速度制限、車線変更の方法など)も遵守する必要があります。許可を取得していても、道路交通法違反を犯せば別途罰則の対象となります。

 

自動車を運転する人は、両方の法律の基本を理解しておくことが重要です。道路法は主に事業者や工事関係者が意識する法律ですが、一般のドライバーも特殊車両の通行制限や道路工事の規制について知っておくべきです。一方、道路交通法はすべてのドライバーが日常的に遵守すべきルールを定めており、違反すれば免許停止や罰金などの処分を受けます。両者の違いを理解し、適切に道路を利用することが安全運転につながります。

 

道路法違反と道路交通法違反の取締り強化の動向

近年、道路の安全性と構造保全のため、道路法違反と道路交通法違反の取締りが強化されています。特に特殊車両の無許可通行や条件違反については、国土交通省が取締りを徹底しており、悪質な違反者に対しては即時告発される事例も増えています。大型車両による事故は死亡事故などの重大事故につながりやすく、社会的影響も大きいためです。

 

道路交通法の分野でも、飲酒運転やあおり運転など悪質な違反に対する罰則が強化されてきました。時代や社会情勢の変化に伴い、道路交通法は都度改正されており、最近では自転車の交通ルール遵守や高齢ドライバーの安全対策なども重点的に取り組まれています。

 

企業や事業主は、従業員が道路法や道路交通法に違反しないよう、適切な管理と教育を行う責任があります。特殊車両を運行する企業では、許可申請の漏れがないか、条件違反になっていないか常に注意を払い、法令順守(コンプライアンス)を徹底することが求められています。違反が発覚した場合、運転手だけでなく会社や事業主にも同じ罰則が適用されるため、組織全体でのリスク管理が不可欠です。

 

法律 目的 管理者・所管 主な規定内容 違反時の処分
道路法 道路の整備・管理 道路管理者(国土交通省系統) 道路の種類、構造、占用許可、特殊車両通行許可 罰金(最大100万円)、懲役(最大6カ月)
道路交通法 交通の安全と円滑 警察(国家公安委員会) 通行ルール、速度制限、駐車規制、信号遵守 反則金、罰金、違反点数、免許停止・取消

国土交通省関東地方整備局:特殊車両通行許可制度と取締り強化について

 

 


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