道路交通法違反自転車罰則と反則金加害者責任

自転車の道路交通法違反に対する罰則や反則金制度が強化されています。青切符の導入による取り締まり内容や、事故を起こした際の加害者責任について、ドライバーも知っておくべき内容をご存じですか?

道路交通法違反自転車の取り締まり

自転車の道路交通法違反の概要
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青切符制度の導入

2026年4月から自転車の交通違反に反則金制度が適用され、16歳以上が対象となります

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反則金の範囲

違反内容により3,000円から12,000円の反則金が科されます

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悪質違反への対応

酒酔い運転など特に悪質な違反は赤切符が交付され刑事罰の対象となります

令和8年(2026年)4月1日から、自転車の交通違反に対して交通反則通告制度、いわゆる「青切符」が適用されることになりました。これは自動車と同様に、比較的軽微な交通違反について反則金を納付すれば刑事罰が科されない制度です。対象年齢は16歳以上の自転車運転者で、113項目の違反行為が反則金の対象となります。
参考)道路交通法の改正について(青切符についても含む) 警視庁

自転車は道路交通法上「軽車両」に位置付けられており、「車のなかま」として扱われます。従来は悪質な違反者に対してのみ赤切符が交付され、刑事罰が科されていましたが、青切符の導入により違反処理が簡易迅速になり、実効性のある取り締まりが可能となります。
参考)自転車の交通違反に対する交通反則通告制度の適用について(令和…

警察庁の資料によると、令和4年中に発生した自転車関連事故件数は69,985件で、全交通事故に占める構成比は増加傾向にあります。また、自転車の交通違反に対する指導警告は年間約132万件、検挙件数は約25,000件に上っており、取り締まりの強化が進んでいます。
参考)自転車の違反行為に対する罰則内容と罰金・反則金制度

道路交通法違反自転車の主な違反行為と反則金

自転車の交通違反で反則金が科される主な違反行為には、以下のようなものがあります。携帯電話使用等のながら運転が最も高額の反則金となっており、12,000円が科されます。具体的には、携帯電話を手に持って通話したり、画面を注視する行為が該当します。
参考)大阪市:自転車に関する道路交通法の改正について ~自転車の交…

信号無視や通行区分違反(車道の右側通行や歩道通行)については、反則金6,000円が設定されています。歩道通行については、スピードを出して歩行者を驚かせ立ち止まらせた場合や、警察官の警告に従わずに歩道通行を継続した場合などが対象となります。
参考)自転車の交通違反に対する交通反則通告制度(青切符)の適用につ…

指定場所一時不停止等、公安委員会遵守事項違反(ヘッドホン等の使用や傘差し運転)は5,000円の反則金です。大阪府道路交通規則では、警音器や緊急自動車のサイレン、警察官の指示等、安全な運転に必要な音や声を聞くことができないような音量でのヘッドホン使用が違反となります。軽車両乗車積載制度違反(二人乗りや並進運転)は3,000円となっています。​
以下に主な違反行為と反則金の一覧を示します。

 

違反行為 反則金 備考
携帯電話使用等(ながら運転) 12,000円 通話や画面注視が対象​
遮断踏切立入り 7,000円 遮断機が下りている踏切への進入​
信号無視 6,000円 赤信号での交差点進入​
通行区分違反(歩道通行・逆走) 6,000円 車道右側通行や危険な歩道走行​
一時不停止 5,000円 一時停止標識のある場所での違反​
傘差し運転・ヘッドホン使用 5,000円 安全確認を妨げる行為​
二人乗り・並進運転 3,000円 規定違反の乗車方法​

これらの反則金は、原動機付自転車の反則金額を参考に設定されており、既に自動車等の反則行為とされている違反行為については原付と同一の額になっています。
参考)自転車の交通違反の青切符による取り締まり、2026年4月に施…

道路交通法違反自転車の赤切符と刑事罰

青切符制度が導入される一方で、特に悪質な交通違反に対しては従来通り「赤切符」が交付され、刑事罰の対象となります。赤切符が交付された場合、書類送検、起訴、裁判を経て懲役や罰金が科される可能性があります。
参考)自転車で交通違反をした場合に交付される「赤切符」について解説…

酒酔い運転は最も重い刑事罰の対象で、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。酒気帯び運転については3年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。これらの違反は青切符の対象外で、必ず刑事罰が適用されます。
参考)https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/koutuu/jitensya/jitensya-rule.html

信号無視については、悪質な場合は赤切符の対象となり、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される可能性があります。通常は青切符による反則金6,000円の対象ですが、繰り返し行われる場合や重大な危険を生じさせた場合には刑事罰が適用されることがあります。
参考)あまり知らない自転車のルール|交通事故110番

自転車指導警告カードという黄色いカードもあり、これは危険運転をしている人に対する注意喚起として使用されます。取り締まりの強化により、従来は黄色いカードによる注意のみだった信号無視や一時不停止なども、悪質なケースにおいては赤切符が交付される場合があります。​

道路交通法違反自転車の危険行為と講習制度

平成27年6月1日から施行された改正道路交通法により、「自転車運転者講習制度」が導入されています。一定の危険な違反行為をして、3年以内に2回以上検挙され、または事故を起こした悪質自転車運転者に対して、公安委員会が講習の受講を命じる制度です。
参考)大阪市:「自転車運転者講習制度」について (…href="https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000312489.html" target="_blank">https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000312489.htmlgt;交通安全href="https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000312489.html" target="_blank">https://www.city.osaka.lg.jp/shimin/page/0000312489.htmlgt;ト…

自転車運転者講習の対象となる危険行為は当初14項目でしたが、現在は16類型に拡大されています。主な危険行為には、信号無視、通行禁止違反、歩行者専用道路における車両の義務違反、通行区分違反、路側帯通行時の歩行者の通行妨害、遮断踏切立入り、交差点安全進行義務違反等、交差点優先者妨害、環状交差点安全進行義務違反等、停止場所一時不停止等、歩道通行時の通行方法違反、制動装置(ブレーキ)不良自転車運転、酒気帯び運転等、安全運転義務違反、携帯電話使用等、妨害運転(交通の危険のおそれ・著しい交通の危険)が含まれます。​
講習の受講を命じられた者は、自転車運転者講習を受講しなければなりません。受講の命令に従わない場合は、5万円以下の罰金に処せられます。講習時間は3時間で、手数料は6,000円となっています。
参考)自転車運転者講習の受講命令とは?

この制度の目的は、危険な違反行為を繰り返す自転車運転者に対して、安全運転の意識を高めさせることにあります。自転車関連事故の死亡・重傷事故の相手当事者の内訳としては、対自動車が最も多く約76%で、自動車との事故で最も多いのが出会い頭衝突による事故(約55%)です。出会い頭衝突事故では、自転車運転者の安全不確認や一時不停止等の違反が事故の発生要因として多く見受けられます。
参考)「自転車運転者講習制度」の対象となる危険行為14項目|宝塚市…

道路交通法違反自転車の加害者責任と損害賠償

自転車事故の加害者となった場合、「刑事上の責任」と「民事上の責任」の2つが発生する可能性があります。刑事上の責任とは、交通法規を違反して事故を引き起こし、その結果として他人に重大な被害を与えた場合に刑事罰を受ける責任のことです。重大な過失により他人を死傷させてしまった場合は「重過失致死傷罪」に問われます。
参考)自転車事故にあったら損害賠償金はいくら?実際にあった3つの事…

民事上の損害賠償責任とは、自転車事故によって被害者に与えた精神的・財産的損害を賠償する責任のことです。自転車の交通事故の損害賠償は、基本的には加害者に請求することになりますが、加害者が過失によって被害者に怪我をさせているため、民法709条によって損害賠償を行う義務があるとされています。
参考)自転車事故の損害賠償請求(保険請求)の流れと賠償金の計算方法…

近年、自転車事故による高額な賠償判決が下されるケースが増えています。代表的な事例として、当時11歳の小学生が自転車で走行中に女性と衝突し、女性が意識不明状態となった事故では、裁判所が被害女性の深刻な状態を考慮し、賠償金額9,521万円の支払いを命じました。加害小学生ではなく、監護者である親がこの高額な賠償金を支払うことになります。
参考)https://hoken-room.jp/bicycle/6106

自転車事故の加害者が店舗などの従業員の場合、従業員を使用する事業主(使用者)が損害賠償責任を負うことがあります。これは使用者責任(民法715条)というもので、①従業員に責任が認められ、②使用関係があり、③業務遂行中の事故であると認められれば、事故を起こした人と同様の損害賠償責任を負うことになります。​
自動車との事故における過失割合については、基本的に自動車側の過失割合が高くなる傾向にありますが、自転車運転者に安全不確認等があれば、自転車側の過失も問われます。例えば、自転車と自動車が対向方向から交差点に進入した場合の過失割合の目安は、自転車が40%で自動車が60%です。同一方向から交差点に進入した場合は、自転車が15%で自動車が85%となります。
参考)自転車と自動車の事故の過失割合はどう決まる?事故状況の例と併…

道路交通法違反自転車と保険加入の重要性

2015年に兵庫県で初めて自転車保険加入を義務化する条例が制定されて以降、埼玉県や大阪府、京都府等、地方自治体の中で自転車保険の加入義務化が進んでいます。ただし、これらの条例は「努力義務」であり、加入しなくても罰せられることはありません。​
自転車保険には個人賠償責任補償が付いているため、事故を起こして相手を負傷させた際に賠償金を支払う場合に役立ちます。ただし、既に加入している自動車保険や火災保険に特約として個人賠償責任保険が設定されている場合、自転車事故も補償範囲に含まれます。
参考)自転車保険と個人賠償責任保険の違い、自転車傷害特約について …

個人賠償責任保険の理想的な補償金額は1億円まで支払えることが望ましいとされています。近年では加害者が未成年であっても、高額な賠償判決が下りるケースが多くなっているためです。前述の小学生による事故の例では、約9,500万円という高額な賠償金が命じられており、1億円という補償金額の上限は決して大げさではありません。​
自転車保険や個人賠償責任保険を選ぶ際には、示談交渉サービスの有無も重要です。示談交渉サービスとは、加害者となった時に保険会社が相手方と交渉してくれるサービスで、これがない場合は被害者と直接交渉しなければならず、感情的な対立により話し合いが進まなくなる可能性があります。​
加害者が自転車保険に加入している場合、加害者が支払うべき賠償金について、保険会社が保険金を支払うことになります。クレジットカードに個人賠償責任保険が付帯されていることもあるため、加入契約の際に取得した「契約のしおり」等で確認することが推奨されます。​
自転車利用者の交通ルール遵守に関するアンケート調査では、全体の46%が「道路交通法に違反した自転車に対する取締り(ペナルティの付与)」を警察や行政に期待していると回答しています。青切符制度の導入により、自転車運転者の交通ルール遵守意識が高まることが期待されています。
参考)https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/02/sankou04.pdf

自動車ドライバーの立場からも、自転車の交通違反取り締まり強化により、自転車と自動車の事故が減少することが期待されます。出会い頭衝突事故の多くは自転車の安全不確認や一時不停止が原因となっているため、自転車側の交通ルール遵守が進めば、自動車ドライバーにとってもより安全な道路環境が実現されるでしょう。​
警視庁公式サイトでは自転車の交通反則通告制度(青切符)について詳細な情報が掲載されており、対象となる違反行為や制度導入の背景について確認できます。
警察庁の資料では自転車の交通違反に対する交通反則通告制度の適用について、具体的な違反項目と反則金額が一覧で確認できます。