EVが盛り上がってるはずのデトロイトで、今年はEV試乗コースがゼロになりました。
2026年のデトロイトショー(正式名称:北米国際オートショー)は、1月14日〜25日の期間、米ミシガン州デトロイトのハンティントンプレス・コンベンションセンターで開催されました。一般公開は1月17日〜25日の9日間です。
出展ブランド数は、コーポレートスポンサー付きの企業ブースが27ブランドと、前年2025年の22ブランドから5ブランド増加しました。さらに地元ディーラー主催の展示も含めると、アストンマーティン、アウディ、フェラーリ、ジャガー、ランドローバー、ミニ、ポールスターなどを合わせ、計40以上のブランドが会場に並びました。つまり「27ブランド」と「40以上のブランド」は別の数え方であり、媒体によって報じ方が異なる点は覚えておくとよいでしょう。
入場料金は大人25ドル、65歳以上のシニアは15ドル、3〜12歳の子どもは10ドル、2歳以下は無料。ファミリーパスは大人2名と子ども3名まで約60ドルという設定でした。
ショー全体の経済効果については、2025年の同イベントが27万5,000人の来場者を集め、最大3億7,000万ドルの経済効果と試算されていた実績があります。2026年も同水準以上の盛況が見込まれていました。注目ポイントです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会期(全体) | 2026年1月14〜25日 |
| 一般公開日 | 1月17〜25日(9日間) |
| 会場 | ハンティントンプレス(デトロイト) |
| コーポレートブランド数 | 27ブランド(前年比+5) |
| 総出展ブランド数 | 40以上 |
| 入場料(大人) | 25ドル |
2026年のデトロイトショーで世界初公開の新型車はたった1台でした。それが「2027年型 フォード ブロンコRTR」です。
ブロンコRTRは、ドリフト界の著名ドライバー、ヴォーン・ギッティン・ジュニア率いるRTR(Ready to Rock)ブランドとのコラボレーションによる第2世代モデル。1月13日夜のフォード・プレスイベント「Detroit Proud Off-Road Edition」で華やかに発表されました。会場のデトロイト・グランプリ・トラックには7台のフォードF-150やオフロード仕様のF-150ラプター、ブロンコが砂漠をイメージした空間に配置され、約1,000人が集まったイベントとなりました。
フォードのCEO、ジム・ファーリー氏が自らショーホストを務めてF-150の49年連続アメリカ販売1位という記録に触れた点も話題を呼びました。なお、ブロンコは2025年に米国内で年間14万5,000台を販売しており、根強い人気を誇ります。
気になる価格については、「ラプターへの入門モデル」として「より手が届きやすい(more attainable)」価格帯と説明されたものの、具体的な金額は発表されませんでした。これが原則です。
世界初公開の新型車がわずか1台というのは、ひと昔前の「各社競うように大型発表を繰り広げるデトロイト」の姿を知る業界関係者にとっては寂しく映る光景でもあります。しかし、それもまた2026年のショーの正直な姿を反映した結果だったと言えます。
■ CNBC:フォード ブロンコRTRのデトロイト発表に関する詳細レポート(英語)
今年のデトロイトショーで最も象徴的だったのは、EVが後退した現実でした。
かつて会場内には屋内のEV専用試乗コースがあり、電気自動車の未来を体感できる空間として注目を集めていました。ところが2026年は、両方のコースがガソリン車やハイブリッド車に開放されています。「ショーは業界に起きていることを反映するもの。EVをめぐる状況が変化したのは明らかだ」とショー委員長のトッド・ゾット氏は述べています。
背景にあるのはトランプ政権の政策転換です。トランプ大統領はバイデン政権時代の「新車販売の半分をEV化する目標」を撤回し、EV購入者への最大7,500ドルの税控除を削減。さらに燃費基準の緩和と、基準未達メーカーへの罰則廃止まで行いました。2025年の米国純EV市場シェアは約7.8%にとどまり、中国の急成長と対照的な状況となっています。
この流れの中で、フォードはEV事業の抜本見直しにより2027年にかけて195億ドル(約3兆円)の損失計上を発表。主力EVピックアップ「F-150ライトニング」の生産も終了しました。GMも60億ドル規模のEV関連損失を発表しています。痛いですね。
一方でトヨタなど日本メーカーは、米ハイブリッド車市場で6割以上のシェアを持ち、今回も「脱EV」の波に対しての対応力の高さを示しました。EV失速の陰で、ハイブリッド技術への再評価が進んでいるのは、日系メーカーにとっては追い風と言えます。
■ Newsphere:「中国に差をつけられる」北米オートショーでEV後退が鮮明になった経緯の解説記事
デトロイトショー 2026で「国際」を名乗るにもかかわらず、コーポレートスポンサー付きのOEMブースを持った日本メーカーはトヨタとスバルのみでした。これが基本です。
トヨタは現地販売店が主催する形でショーに参加し、ランドクルーザー、タコマ、タンドラ、セコイア、RAV4などフルラインアップを展示。売れ筋のハイブリッド「カムリ」を中心に、ショー来場者の関心を集めました。また、日本総領事館とJBSD(日系ビジネス支援デトロイト)の協力により、今回初めて「Japan Plaza」がシャレ—形式で設けられ、ウィットマー・ミシガン州知事も立ち寄るなど注目を集めました。
スバルはブランドのシンボルともいえる看板犬(保護犬)を連れ来場者と交流するという恒例のPR手法を今年も展開。デトロイトのような厳冬地域では、高性能AWDを持つスバルへの注目が自然と高まる土地柄で、既存ラインアップの展示だけで十分な存在感を放ちました。
注目すべきは、日本ブランドの米国内での立ち位置です。2019年以降、アメリカにおける日本の対米投資額は世界1位となっており、アメリカで販売されている車の約3分の1は日本ブランドというデータも示されています。今回の「Japan Plaza」での展示でも、この統計が紹介され、初めて知ったという来場者が多くいたと報告されています。これは使えそうです。
かつてデトロイトショーといえば、世界中の自動車メーカーが最新モデルの世界初公開を競う「報道の祭典」でした。しかし2026年を振り返ると、その性格は明らかに変わってきています。
今回の世界初公開はフォード ブロンコRTR1台のみ。かつてのデトロイトでは同じ期間に数十台の新型車がお披露目されていたことを思えば、隔世の感があります。自動車メーカーが発表の場をZoomやオンラインイベントに移したこと、プレスカンファレンスへの費用対効果が下がったことが背景にあります。
その代わりに今回強調されたのが「体験」です。2026年のデトロイトショーには屋内試乗コース3本が設置され、キャンプジープ(本格オフロードコース試乗)、ブロンコマウンテン(40度の急傾斜コース)、そしてミシガン・オーバーランド・アドベンチャーという、まるでアウトドアフェスのような空間が展開されました。特にキャンプジープでは、2026年型ジープ・グラジエーター・ルビコンに試乗できる体験が大人気を博しました。
さらに、映画「フォールガイ」や「ブリット」「スタースキー&ハッチ」の劇中車も展示されるなど、エンタメ色が強まっています。アメリカ建国250周年記念の特別展示や、ルート66開通100周年を記念してサンタモニカからデトロイトまでをクラシックカーで走破した「ドライブホームVII」も大きな話題となりました。
つまり今のデトロイトショーは「記者のための発表の場」から「家族が楽しむ自動車フェスティバル」へと変化しつつあります。ショーの評価軸が変わっているということですね。
これは一見、寂しい変化のように見えます。しかし一般来場者にとっては、むしろ「試乗もできてエンタメも楽しめる」という体験価値が高まっており、公開9日間でアメリカ国内最大級の自動車展示会として健在です。自動車ファンが1年に一度、リアルで多くの車を比較・体感できる場としての価値は、今後もデトロイトが担い続けるでしょう。
■ MarkLines:デトロイトモーターショーの開催日程・背景に関するレポート(日本語)
2026年のデトロイトショー前後の最大のニュースのひとつが、GMの新本社移転です。
ゼネラルモーターズはかつてのシンボル「ルネサンスセンター」から移転し、デトロイト中心地のハドソンズ・デトロイトビルに新しいGM本社を構えました。GMのCEOメアリー・バーラ氏はじめ経営幹部が新本社で報道陣を迎え、会期中には1階の「エントランス1」が一般公開スペースとして開放されました。
会場のGMブースでは、シボレー・コロラド・トレイルボス特別仕様車、GMCキャニオンAT4X AEV版(Desert Sun色の鮮やかなオレンジがかったイエロー、35インチタイヤ装備)など、オフロード系ラインアップが目を引きました。コルベットZR1Xの「Stars & Steel」エディションはアメリカ建国250周年を祝う特別モデルとして展示され、さらにコルベットCXコンセプトとして次世代フルEVハイパーカーの方向性も示されています。
キャデラックの「エレベーテッドベロシティ」コンセプトは24インチホイール、ガルウィングドア、ステンレスアクセント、赤革インテリアという超個性的なEVコンセプト。ヨーク式ステアリングホイールにLEDボタン、バタフライドア、そしてなんとマッチングポロセットまで付属するという驚きの展示でした。EV自体の「需要」ではなく、ブランドの「夢」を打ち出したアプローチとも解釈できます。
なお、ショー開幕後すぐにGMのロゴがルネサンスセンターから外されたというニュースも流れ、デトロイトの街の風景が変わるという象徴的な出来事となりました。つまり2026年は、GMにとって「古い時代との決別と新拠点への移行」を内外に示した年でもあったということです。
■ JETRO(日本貿易振興機構):デトロイトオートショー2026の開催情報・出展対象品目まとめ