ブルーバードu12と最先端、セダン技術の集大成

1987年登場の日産ブルーバードU12型は、FF化と先進技術を備えた革新的なセダンです。ATTESA 4WD、HICAS 4輪操舵、CA18DET ターボエンジンなど、当時最先端の技術を集約したこのモデルは、どのような特徴を備えていたのでしょうか?

ブルーバードu12と最先端セダン技術の融合

ブルーバードU12型の技術革新
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デザインの進化

先代U11型の直線基調から、全体的に角を丸くした有機的で若々しいデザインへ変貌。ボンネットラインのわずかな傾斜とラウンドしたメータークラスター・ダッシュボードで、一気に世代が変わったことをアピール

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駆動方式の革新

ブルーバード史上初の4WD搭載。FF化による安定性と、新開発のATTESAフルタイム4WDシステムで、50:50の前後駆動トルク配分を実現

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操舵システム

4輪操舵システムHICASを搭載し、高速旋回時に後輪を前輪と同位相方向へ操舵。操縦安定性と回頭性能を飛躍的に向上

ブルーバードu12のボディサイズとプラットフォーム

 

U12型ブルーバードのボディサイズは全長4,520mm、全幅1,690mm、全高1,390mmとなっており、同年代のスカイラインよりもやや コンパクトな設計です。ボディタイプは4ドアセダンと4ドアハードトップの2種類で、先代モデルにあったステーションワゴンやバンは廃止されました。この変更によって、ファミリーカーからスポーツセダンへのポジション転換が明確になりました。

 

プラットフォームはFF(前輪駆動)を基本としながらも、フルタイム4WDシステム「ATTESA」の搭載により、悪路走行性能と旋回時の安定性を両立させています。4ドアハードトップは、センターピラーレス構造による美しさと開放感を備え、時代を超えた魅力を放つデザインとして評価されています。このコンパクトなボディながら、室内空間の効率的活用により5名の乗車定員を確保しています。

 

日産公式:ブルーバード4ドアハードトップツインカムSSSの詳細仕様

ブルーバードu12のエンジンバリエーション

U12型ブルーバードに搭載されたエンジンは、すべて直列4気筒となっており、排気量のバリエーションが豊富でした。1.6リッター、1.8リッター、1.8リッターターボ、そして2リッターディーゼルをラインナップしており、トランスミッションは3速AT、4速AT、5速MTから選択可能でした。

 

特にトップグレード「SSSアテーサリミテッド」に搭載された1.8リッターDOHCターボ「CA18DET型」は、インタークーラーを装着したプレミアムガソリン仕様で、最高出力175馬力を発揮しました。1989年のマイナーチェンジでは、さらにエンジンが「SR型」に換装され、SSSアテーサリミテッドの最高出力は205馬力へと向上。さらに、高出力版の「CA18DET-R型」をベースにしたニスモ開発の「SSS-R」では、185馬力以上の出力を実現し、モータースポーツへの参画を達成しました。

 

当時としては、ファミリーセダンにスポーツカーレベルのターボエンジンを搭載することは、日産の技術力を示す大胆な選択だったのです。

 

グレード別スペック詳細:ブルーバードU12型全グレード一覧

ブルーバードu12のATTESAフルタイム4WDシステムの仕組み

ATTESA(アテーサ)システムのルーツは1960年代のファーガソンシステムに遡りますが、U12型ブルーバードへの搭載により、本格的な量産フルタイム4WDの実用化が進みました。ATTESAシステムの最大の特徴は、車庫入れから高速道路まで、2WDと4WDの切り替え操作を必要としない利便性を提供することです。

 

動作原理としては、センターデフにビスカスカップリングを組み合わせており、前後駆動トルク配分を基本50:50とします。前後輪で回転差が生じた際には、ビスカスカップリングの作用でセンターデフの差動を制限し、駆動力を確保します。この仕組みは左右輪に対するLSD(リミテッドスリップデフ)と同様な機構です。

 

さらに重要なのは、エンジンブレーキ力を4輪に配分することで、減速時の安定性も抜群となる点です。雨天時や冬季の走行時に、ドライバーが意識することなく最適な制御が行われます。STC-SUS(スーパー・トー・コントロール・サスペンション)による後輪操舵機構や4輪ABSブレーキシステムと統合されることで、「走る・曲がる・止まる」のすべてのシーンで総合的な性能向上を実現しています。

 

HICASシステムの制御理論と動作メカニズム

ブルーバードu12の独自視点:SSS-Rモータースポーツモデルの秘話

U12型ブルーバードの開発と並行して、ニスモによって開発され、オーテックジャパンによって生産されたのが「SSS-R」です。このモデルは、単なるストリート用のチューニングカーではなく、本格的なラリー競技に参加することを目的に設計されました。

 

SSS-Rに搭載されるエンジンは、CA18DET型をベースとしながら、専用のピストンやカムシャフトターボチャージャーの可変、ステンレス製エキゾーストマニホールド、ブーストアップにより、最高出力185馬力にチューンナップされた「CA18DET-R型」です。トランスミッションはクロスレシオの5速MTのみに限定されており、いかにレース仕様に特化しているかが伺えます。

 

快適装備を徹底的に排除して軽量化が施され、室内にはロールケージが標準装備されています。初期型では2名乗車(後期型では4名乗車)に限定されるなど、競技マシンとしての側面が強いものでした。外観はあえて廉価グレードの加飾に近く、ボンネットに控えめに取り付けられたエアスクープが、内に秘める高性能を静かに物語っています。

 

SSS-Rは主に国内のラリー選手権で活躍し、かつてサファリラリーで優勝した510型ダットサンブルーバードの栄光を彷彿とさせました。このモデルによって、日産が「ラリーの日産」としての伝統を守り続けていたことは、自動車ファンにとって大きな意味を持つのです。

 

ブルーバードu12のグレード構成とSSS系統の違い

U12型ブルーバードのグレード展開は、スポーツ志向の「SSS系統」とファミリー志向の「アーバンサルーン系統」の2つのモデルラインに大別されました。SSS系統には、基本的に1.8リッターターボエンジンやATTESA 4WDシステムが搭載され、より高い性能を求める顧客をターゲットとしていました。

 

SSSシリーズ内でも、「SSSアテーサV」「SSSアテーサX」「SSSアテーサリミテッド」などのグレードが用意され、装備や仕様の違いで段階的に上級グレードへと上がっていきます。最上級の「SSSアテーサリミテッド」には、インタークーラー装着の1.8リッターDOHCターボエンジンが搭載され、175馬力(マイナーチェンジ後は205馬力)の高い出力を実現しました。

 

一方、アーバンサルーン系統は、1.6リッターエンジンや2リッターディーゼルエンジンを搭載し、より実用性と燃費性能を重視した設計となっていました。中古車市場では、SSSシリーズの方が人気が高く、特に175馬力時代のSSSアテーサリミテッドは高い評価を受けています。新車時価格も163万円から262万円までの幅広い価格帯が設定されていました。

 

U12型全グレード仕様表と新車時価格一覧
U12型ブルーバードは、日産の技術力を結集した最先端セダンとして、1987年から1991年の間に多くのファンに愛されました。ATTESA、HICAS、CA18DET ターボなどの先進技術により、ファミリーセダンの枠を超えた高い走行性能を実現し、その後の日産セダン開発に大きな影響を与えたのです。オーナーズクラブも今なお活動を続けており、40年近く経た現在でも、多くのマニアから支持され続ける傑作セダンとなっています。

 

 


ハセガワ 1/24 ニッサン ブルーバード 4ドアセダン SSS-R(U12型) 1988年 全日本ラリー プラモデル 20470