カムシャフトとクランクシャフトはエンジン内部で重要な役割を果たしながらも、その機能と位置は大きく異なります。カムシャフトはエンジンの「上端」に位置し、卵形の「カム」を使用してエンジンバルブの開閉を制御する部品です。一方、クランクシャフトはエンジンの「下端」に位置し、ピストンの直線的な上下運動を回転運動に変換する役割を担っています。
参考)https://ja.kfx-machining.com/news/camshaft-vs-crankshaft-what-is-the-difference-48142343.html
両者の連携は極めて重要で、タイミングベルトまたはタイミングチェーンによって接続されています。4ストローク燃焼サイクル(吸気・圧縮・パワー・排気)の間、クランクシャフトは2回転し、各ピストンを上下に2回動かしますが、その間にカムシャフトは1回転するという仕組みになっています。この精密な回転比率により、バルブタイミングと呼ばれる完全な調和が保たれ、エンジンがスムーズに動作します。
カムシャフトは「カム」と「シャフト」から構成される部品で、エンジンのバルブ開閉という重要な機能を担っています。「カム」はしずく型の部品で、回転することで対象物を周期的に押し上げる働きをします。直列4気筒エンジンの場合、ひとつのシャフトに4つのカムが組み合わされた構造となっています。
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カムシャフトは吸気バルブと排気バルブの開閉タイミングを制御し、エンジンの「吸気」「圧縮」「爆発膨張」「排気」というサイクルを適切に機能させています。カムローブ(カムの山部分)は異なる形状とサイズで設計されており、バルブが開く量と長さを精密に制御します。現代の内燃機関では、最大4つのカムシャフトを備えるデュアルカム方式もあり、1気筒あたり4つのバルブ(吸気2つ、排気2つ)を制御することで、エンジン出力を向上させています。
クランクシャフトは車のエンジンにおいて心臓部とも呼べる部品で、ピストンの往復運動を回転運動に変換する役割を担っています。エンジン内部では燃焼によってピストンが上下に動きますが、この直線的な運動だけでは車を効率的に動かすことはできません。クランクシャフトがこの往復運動を回転運動に変換することで、タイヤを回し車を走らせる動力源となります。
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クランクシャフトは、軸となるクランクジャーナル、コンロッドとつながるクランクピン、両者をつなぐクランクアームで構成されています。コンロッド(コネクティングロッド)はピストンとクランクシャフトを接続し、燃焼による爆発力を回転運動に変換します。さらにクランクアームには、ピストン運動とコンロッドの運動が発生させる慣性力を打ち消すためのバランスウエイト(カウンターウエイト)が取り付けられており、エンジンの振動を抑制しています。
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カムシャフトとクランクシャフトは、タイミングベルト(またはタイミングチェーン)によって連結され、エンジンがスムーズに動作するために精密に連携しています。タイミングベルトはクランクシャフトの動力を規則的にカムシャフトへ伝達し、カムシャフトがバルブを適切なタイミングで開閉するサポートをしています。
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この連動システムでは、バルブタイミングと呼ばれる完全な調和が極めて重要です。4ストローク燃焼サイクルでは、吸気バルブのみが吸気ストロークで開き、両方のバルブは圧縮および燃焼ストローク中は閉じたまま、排気バルブのみが排気ストローク中に開きます。この精密な制御により、エンジンの規則的な回転運動に必要な4工程(吸気・圧縮・燃焼・排気)を適切なタイミングで繰り返すことが可能になります。
カムシャフトの配置方式には主にSOHCとDOHCの2種類があり、エンジンの性能特性に大きな影響を与えます。SOHC(Single OverHead Camshaft)は、シリンダーヘッド側に1本のカムシャフトを備える方式で、この1本のカムに吸気側と排気側のバルブを開閉するカム山が備わっています。シンプルな構造であるため、エンジン全体をコンパクトにでき、軽量化やコスト低減につながるのが特徴です。
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DOHC(Double OverHead Camshaft)は、各シリンダーヘッドに2本のカムシャフトがある方式で、別名「ツインカム」とも呼ばれます。1本は吸気バルブ専用、もう1本は排気バルブ専用となり、それぞれ独立したカムシャフトでバルブを駆動します。2本のカムを備えることで吸排気バルブの制御自由度が高まり、高回転・高出力化に有利なレイアウトとなっています。より多くのバルブによって、より多くの吸気および排気ガスが流れやすくなるため、エンジンの出力が向上します。
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クランクシャフトが故障し始めると、いくつかの重要な兆候が現れます。最も特徴的なのは、エンジンから独特のノック音やガタガタ音が発生することです。この音は機械的な故障によって生じ、クランクシャフトの破損を示唆しています。油圧ゲージまたはダッシュボードの警告灯に表示される油圧の低下も、クランクシャフトが正常に機能していない可能性を示す重要なサインです。
参考)クランクシャフトが故障するとどうなるのか? - VOLGEN…
クランクシャフトはエンジンの回転をトランスミッションへ伝えるため、エンジン本体から飛び出る構造となっており、この部分にクランクシャフトオイルシールが使用されています。走行距離が長くなっている、経年劣化が進んでいる、高負荷環境での走行が多い場合、オイルシールが劣化し隙間ができることでオイル漏れが発生する可能性があります。一般的には10万kmは持つことが多いですが、定期的なエンジンオイルのチェックを行うことで、早期発見が可能です。重篤な場合には、クランクシャフトの損傷によってエンジンが完全に停止することもあり、これはクランクシャフトが故障した明確な兆候となります。