トヨタの「アーバンクルーザー」は、2009年から2014年にかけて販売された車の名称として知られています。かつてはRAV4の下位モデルとして位置付けられ、コンパクトなボディながら実用性を備えたSUVでした。その後、2020年にインド市場向けとして第2世代が登場しましたが、その後消息を絶っていました。
今回、電気自動車として14年ぶりにこのネーミングが復活することは、トヨタの電動化戦略における重要なシグナルです。かつてのガソリン車とは異なり、スズキとの共同開発プラットフォームを活用することで、開発効率を高めながら市場投入を実現しています。特に日本市場においては、環境規制の強化とユーザーのEVニーズの高まりを背景に、このタイミングでの投入は戦略的な判断といえるでしょう。
欧州での先行販売を経て、アーバンクルーザーのトヨタ版が日本に上陸する見通しですが、これは従来のガソリン車市場からの脱却を目指すトヨタの意思を示すものとなっています。
アーバンクルーザーのボディサイズは全長4,285mm、全幅1,800mm、全高1,640mm、ホイールベース2,700mmという仕様です。このサイズは、トヨタの既存SUVラインアップの中でどのような位置付けになるのかを考察すると興味深い特性が見えてきます。
bZ4X(全長4,695mm)よりはコンパクトながらも、ヤリスクロス(全長4,180mm)よりは一回り大きいという「ちょうどいいサイズ」が特徴です。日本の都市部での取り回しを考えた際、このサイズ感は駐車場への収まりやすさと、室内空間のバランスが取れた選択肢になります。特に注目すべきは、ホイールベースが2,700mmと長めに設定されている点です。これにより、同じ全長のコンパクトカーと比較して、後部座席の足元スペースが格段に広くなっています。
さらに、後部座席がスライド機構(最大16cm)を備えており、荷物の量に応じてフレキシブルに対応できる設計になっています。背もたれもリクライニング可能で、長時間の乗車においても快適性を確保する配慮がなされています。
新型アーバンクルーザーは、スズキとの共同開発によるEV専用プラットフォームを採用しており、複数のパワートレイン構成が用意されています。ベースモデルは49kWhバッテリーを搭載し、144馬力のシングルモーター前輪駆動となります。このグレードでの航続距離はおよそ330km程度と予想されており、日常の街乗りと週末のレジャー走行を想定したユーザーに適した仕様です。
より上位のモデルは61kWhバッテリーを搭載し、174馬力の前輪駆動版では最大420kmの航続距離を実現します。これは、従来のハイブリッド車での距離感に近い性能であり、給油地点(充電スポット)を気にしすぎずに運転できる利便性をもたらします。最高出力184馬力の四輪駆動モデルでは、後輪に追加の電動モーター(48kW)を搭載し、システム最大トルク300Nmを発生させます。このトップグレードには、下り坂アシストやトレイルモード機能が装備され、オフロード走行への対応も想定した本格的なSUVの性格を打ち出しています。
充電性能においては、最大150kWの高速充電に対応している見通しで、バッテリーを10%から70%まで充電するには約30分程度のタイムが予想されています。これにより、急速充電ネットワークの整備が進む日本国内でのユーザビリティは十分に確保されるでしょう。
新型アーバンクルーザーのエクステリアデザインは、「ハンマーヘッド」と呼ばれるトヨタの最新デザインフィロソフィーを採用しています。シンプルで力強いフロントフェイスに、細長いヘッドライトが特徴的です。デイタイムランニングライトは複数の小さな発光ユニットで構成され、モダンで洗練された印象を与えます。
スズキのeビターラとの姉妹車ですが、フロントデザインではトヨタ独自のデザイン言語が優先され、全体的にシンプルで識別性の高い仕上がりになっています。周囲を覆くブラックパネルはオフロードの雰囲気を演出し、クロスオーバーSUVとしてのキャラクターを表現しています。
インテリアは、10.25インチのコンビネーションメーターと10.1インチのマルチメディアタッチスクリーンを採用した二画面構成です。メニュー階層は整理されており、トヨタブランドらしい上質感を保ちながら、操作性も充実しています。Apple CarPlayとAndroid Autoのワイヤレス接続に対応し、スマートフォン連携も堅実に実装されています。
フロントシートの快適性は高く、前席乗員にとって十分なスペースが確保されています。ダッシュボード上部はソフトパッド素材で仕上げられ、質感も良好です。ただし、中央コンソールのピアノブラック素材は指紋やほこりが目立ちやすいため、定期的なメンテナンスが必要になる点は事前に知っておくとよいでしょう。
アーバンクルーザーの日本市場での価格は、現時点で公式発表がないものの、欧州での設定価格から推測される情報が存在します。欧州ではベースモデルが約30,000ユーロ(日本円で約510万円)と予想されており、同じEVプラットフォームを共有するスズキeビターラとのOEM関係を踏まえると、日本仕様でも同等の価格帯が見込まれます。
比較対象として、ガソリン版ヤリスクロスの国内価格が約290万円から470万円程度であることを考えると、アーバンクルーザーはプレミアムポジショニングでの投入となります。一方、トヨタのEVラインアップであるbZ4Xの国内価格が550万円以上であることと比較すれば、十分に競争力のある位置付けです。
さらに注目すべきは、日本の電気自動車購入時の補助金制度(CEV補助金など)の活用により、実質的な購入価格はより下がる可能性があります。これにより、中堅層のユーザーにもアクセス可能な電動SUVとしての地位を確立できるポテンシャルを秘めています。
アーバンクルーザーには、駆動方式に応じた異なる走行支援機能が装備される見込みです。全グレード共通では、バックカメラなどの基本的な快適装備が標準装備されています。前輪駆動モデルには雪道モードが搭載され、冬季走行時にタイヤの空転を抑制して安定性を高めます。これは降雪地域でのユーザー利便性を大幅に向上させる機能です。
特に四輪駆動モデルには、より高度なトレイルモード機能が用意されます。このシステムは、タイヤが空転した際に自動的にブレーキを作動させ、駆動力を反対側のタイヤに伝達する機構です。砂地や湿地といった悪路での走破性を高める機能であり、従来のガソリンSUVではハイエンドモデルに限定される技術が、電動プラットフォームの利点により下り坂アシストと共にラインナップされています。
さらに注目すべき点として、EV専用プラットフォームの低重心設計により、従来のガソリンSUVと比較してコーナリング性能とロールコントロールが向上します。これにより、舗装路での操縦安定性も確保しながら、オンロード・オフロード両立型のSUV特性を実現しています。
参考リンク:トヨタ新型「アーバンクルーザー」が日本上陸間近! コンパクト×電動SUVの新選択肢の詳細情報
https://carview.yahoo.co.jp/article/detail/ffab2751e3d24c69369a07c71df8716dece191a9/
参考リンク:新型「トヨタ アーバンクルーザー」が電気自動車として復活の仕様・装備詳細
https://autobild.jp/53661/
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