新型2000GTの最大の特徴は、1960年代の美しさを完全に保存したエクステリアデザインです。ロッキーオートが手がけたこのモデルは、単なるレプリカではなく、元の設計者による監修を受けた「お墨付きレプリカ」となっています。
ボディの全長4175mm、全幅1400mmという初代のディメンション比率を徹底的に再現するため、複数の現存する2000GTから3D測定を行い、その平均値を基に設計データを作成しました。フェンダーミラーやバンパーモール、ライトグリルに至るまで、本物と同じ素材を使用してメッキを施し、当時の質感を損なわないように製作されています。
特筆すべきは、オリジナル設計者の野崎喩氏が描いたボディラインが一ミリの狂いもなく再現されている点です。当時の開発チームの一員であった細谷四方洋氏がロッキーオートの職人たちと協力し、ドアやバックパネル、ボンネットなど各パーツの精密なデータ化を実現しました。このモデルは、デザインの面でオリジナルから退化することなく、むしろ現代の製造精度により完璧に近い再現が可能になったのです。
新型2000GTのボディは、古いながらも古くないという矛盾を解決しています。クラシックなスタイリングながら、直列6気筒エンジンのために必要な通風孔やエアコン用の排気口など、当時のものよりボリュームのあるパーツを組み込むため、フレームから再設計することで公道走行可能な現代仕様へと進化させました。
新型2000GTは、パワートレインについて二つの選択肢を用意しています。ハイブリッド志向のユーザーと、オリジナルの直列6気筒エンジンへのこだわりを持つユーザーの両方をターゲットとした戦略です。
ハイブリッドモデルの2000GT RHVは、トヨタ・アクアに搭載されている1496cc のハイブリッドシステムを採用しています。エンジン出力54.4kW(74馬力)、モーター出力45kW(61馬力)、システム合計73kW(100馬力)という一見非力に見える数字ですが、オリジナル2000GTの最高出力150ps/6600回転と比較すると、効率面での最適化が図られていることがわかります。
驚くべきは燃費性能です。アクアのJC08モード燃費が37.0km/Lであるのに対し、2000GT RHVはロッキーオートのテストで41.1km/Lを記録しています。その理由は、初代2000GTが持つ優れた空力特性にあります。1967年の設計にもかかわらず、このクルマのCd値は当時の基準を大きく上回るものであり、さらに車両重量を970kgまで軽量化することで、驚異的な燃費を実現したのです。アクアより110kg軽い設計が、こうした性能につながりました。
一方、直列6気筒にこだわるユーザーには、2JZ-GE直6エンジンを搭載した「R3000GT」が用意されています。こちらは3000ccのエンジンを搭載し、オリジナルの直列6気筒サウンドと性能を存分に発揮します。2017年の東京オートサロンではボンドカーを再現したオープンモデルも展示され、旧車ファンの熱い支持を集めました。
オリジナルトヨタ2000GTと新型2000GT RHVのスペック比較は、半世紀以上の技術進化を物語っています。
| 項目 | オリジナル2000GT | 新型2000GT RHV |
|---|---|---|
| 全長×全幅×全高(mm) | 4175×1400×1160 | 4150×1600×1120 |
| 車両重量(kg) | 1120 | 970 |
| エンジン排気量 | 1988cc直列6気筒DOHC | 1496ccハイブリッド1NZ-FEX |
| 最高出力 | 150ps/6600rpm | 100ps(システム合計) |
| 最大トルク | 18.0kg.m/5000rpm | 11.3kg.m/3600rpm(エンジン)17.2kg.m(モーター) |
| 駆動方式 | 後輪駆動 | 前輪駆動 |
| トランスミッション | 5MT/3AT | CVT |
| 最高速テスト | 約180km/h(推定) | 220km/h |
新型2000GT RHVの最高速テスト220km/hという数字は、当時の2000GTをも上回る性能です。これはハイブリッドシステムの効率的なパワー配分と、優れた空力特性の組み合わせがもたらした成果といえます。前輪駆動という選択は、現代のハイブリッドスポーツカーとしての実用性を優先したもので、当時のスポーツカー標準である後輪駆動とは異なりますが、このクルマが「現代のトヨタ2000GT」であることを示しています。
オリジナル2000GTのインテリアは、ヤマハが楽器の木材加工技術を用いて製作した特別な内装で知られています。この点は、新型2000GTの開発において最も困難な要素の一つでした。現代の快適性を備えながら、クラシックな美しさを失わないインテリア空間をいかに実現するかという課題です。
新型2000GT RHVのインテリアは、当時開発に携わったトヨタ関係者のアドバイスを得ながら製作されました。細谷四方洋氏をはじめとする開発メンバーの強い要望によって、ドライビングポジションはオリジナルから変更されず、同時に現代のエアコンユニットやシートメカニズム、安全装備を統合するという困難な設計が行われています。
クラシカルな雰囲気を保ちつつも、安全装備にはエアバッグ、シートベルトプリテンショナー、ABS、電子制御サスペンションなど、現代基準のものが装備されます。ステアリングホイール、ペダルレイアウト、メーター類の配置に至るまで、オリジナルのドライバーが違和感なく乗り込める精度での再現が実現されています。
新型2000GTの登場は、単なるノスタルジックな復活ではなく、国産スポーツカー市場における重要なアプローチを示しています。ロッキーオートが提示した「現代のトヨタ2000GT」というコンセプトは、クラシックな価値を損なわずに現代の環境規制や安全基準に対応するというジレンマの解決策となり得るのです。
オリジナル2000GTが生産台数337台という限定的な存在であったのに対し、新型2000GT RHVは1680万円、R3000GTは1980万円からの価格設定で、より多くのスポーツカー愛好家にアクセスを許すものになっています。かつて憧れのスーパーカーだった2000GTに、実際に乗ることができる機会が生まれたのです。
さらに注目されるべきは、このプロジェクトが当時の開発陣による監修を受けているという点です。直列6気筒サウンド、優れた空力特性、軽量ボディというオリジナルの価値が、新型でも完全に保持されています。燃費41.1km/L、最高速220km/hというスペックは、設計当初の意図である「優雅で高性能」というコンセプトが、60年近い時を経ても輝き続けていることを証明しています。
ハイブリッドと直列6気筒の二つのパワートレイン選択肢は、スポーツカーの将来像についての問いかけでもあります。電動化時代を迎えながらも、エンジン音と走行の喜びを求めるユーザーに対して、テクノロジーと伝統のバランスポイントを示しているのです。国産自動車産業が生んだ美しい名車が、新しい時代にどのように進化しうるのか、その答えがこの一台に詰め込まれているといえるでしょう。
参考:2000GT復活の可能性についての詳細な背景情報
2000GT復活の可能性は?東京モーターショー出展が噂された伝説の名車
参考:ロッキーオートによる現代版2000GTの製作プロセスと当時の開発者の関わり
Rocky2000GT | Rocky Auto
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