ペーパーロック現象フェード現象違いとは?原因と対策を解説

ペーパーロック現象とフェード現象の違いをご存知ですか?どちらもブレーキが効かなくなる危険な現象ですが、発生原因や症状には明確な違いがあります。原因を知れば予防できるって本当?

ペーパーロック現象とフェード現象の違い

この記事で分かること
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発生メカニズムの違い

摩擦材のガス化とブレーキフルードの沸騰、異なる原因を徹底解説

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症状の見分け方

ペダルの感触や効き方から、どちらの現象か判断する方法

🛡️
実践的な予防策

エンジンブレーキ活用やメンテナンスで未然に防ぐテクニック

ペーパーロック現象とフェード現象は、どちらもブレーキの多用によって発生する危険な現象ですが、発生原因には明確な違いがあります。フェード現象は摩擦材の発熱によりガスが発生し摩擦係数が低下するために起こりますが、ペーパーロック現象はブレーキフルードの沸騰により気泡が発生し、ブレーキの圧力を伝えることができなくなることで起こります。
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フェード現象は、ブレーキパッドの摩擦材に含まれるゴムや樹脂が耐熱温度を超えて熱分解され、ガスが発生することが原因です。このガスがブレーキローターとの間に入り込み、摩擦力が減少することでブレーキの効きが悪くなります。一方、ペーパーロック現象は、ブレーキフルードが過熱されて沸騰し、配管内に気泡が発生することで、ペダルから加えられた圧力がシリンダーに伝わらなくなる現象です。
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両者の症状にも違いがあります。フェード現象では、ブレーキペダルを踏んでも徐々に効きが悪くなっていきますが、ペダルの踏み応えは残っています。これに対して、ペーパーロック現象では、それまで踏み応えのあったブレーキペダルの反力が無くなり、フワフワとした感覚になります。数回ポンピングしても制動力が立ち上がらない状況となるのが、ペーパーロック現象の特徴です。
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ペーパーロック現象の原因と症状


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ペーパーロック現象は、ブレーキフルード(ブレーキオイル)の過熱によって発生します。フットブレーキを多用すると、ブレーキシステム全体が高温になり、ブレーキフルードが沸点に達して沸騰します。ブレーキフルードは通常、新品時には205℃以上の沸点を持っていますが、吸湿性があるため空気中の水分を吸収しやすい特性があります。
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ブレーキフルードに水分が混入すると、沸点が大幅に低下します。2~3年の使用で吸湿量が3.5%になると、新品時205℃以上の沸点が約150℃程度まで低下してしまいます。この状態でブレーキを多用すると、低い沸点で気泡が発生しやすくなり、ペーパーロック現象が起こりやすくなります。
参考)マツダ|ブレーキフルード|メンテナンスパーツ

ペーパーロック現象の症状として最も特徴的なのは、ブレーキペダルがフワフワと感じられることです。通常の踏み応えがなくなり、ペダルを床まで踏み込んでもブレーキが効かない状態になります。毎回同じ深さに踏み込めないという症状が見られる時は、気泡の混入が疑われるため、なるべく早くプロの点検を受ける必要があります。
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ペーパーロック現象は、フットブレーキの多用だけでなく、ブレーキフルードのメンテナンス不足も大きな原因の一つです。ブレーキ液の水分吸収や、ブレーキ管内への空気混入も原因となるため、定期的なブレーキフルード交換が重要です。
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フェード現象の原因と対策方法

フェード現象は、下り坂などでフットブレーキを何度も使用することで、ブレーキパッドの熱が高くなり、摩擦材が発熱することで起こります。摩擦材が発熱すると、部品であるゴムや樹脂が耐熱温度を超えて熱分解され、ガスが発生します。このガスがブレーキローターの間に挟まることで摩擦力が減少し、ブレーキの効きが悪くなります。
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ノーマルブレーキパッドでは、フェードポイント(フェードが始まる温度)が300℃~350℃程度に設定されています。この温度を超えると、摩擦材に含まれる樹脂類が気化し始め、パッドとローターの間に膜を作ることで摩擦係数が極端に低下してしまいます。スポーツ用パッドは400℃~700℃程度の高いフェードポイントを持っていますが、一般的な走行では通常のパッドが使用されています。
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フェード現象を予防するための最も効果的な方法は、エンジンブレーキを活用することです。長い下り坂では、フットブレーキに頼らず、低いギアにシフトダウンしてエンジンブレーキで速度をコントロールします。エンジンブレーキは、エンジンの抵抗を利用して減速する方法で、フットブレーキの発熱を抑えることができます。
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坂道でスピードを出し過ぎないことも重要な予防策です。最初から適切な速度で走行していれば、ブレーキの使用頻度を減らすことができます。また、ブレーキオイル(フルード)をマメに交換することも、フェード現象の予防につながります。ブレーキフルードは2~3年で劣化により沸点が降下するため、定期的な交換が推奨されています。
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ペーパーロック現象とフェード現象の対処法

フェード現象やペーパーロック現象が発生した場合、まず落ち着いてエンジンブレーキを使用することが重要です。いくらブレーキペダルを踏み込んでもブレーキが効かない状況では、アクセルペダルから足を離し、段階的にギアを下げてエンジンブレーキで徐々に速度を抑えます。マニュアル車の場合は3速または2速ギア、オートマ車の場合は2または3ギアに入れることでエンジンブレーキを活用できます。
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エンジンブレーキで十分に減速した後は、パーキングブレーキを併用することも有効です。ただし、エンジンのオーバーレブ(過回転)に注意し、変速機のギアを段階的に下げる必要があります。急にギアダウンさせると、エンジンの回転がついていけなくなり、エンジンに支障をきたす可能性があるため、慎重な操作が求められます。
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ブレーキを冷やすことも効果的な対処法です。ゆっくりと走行しながら走行風でブレーキを冷やすことで、フットブレーキの効果を回復させられる場合があります。高速道路など、ゆっくり走行するのが難しい場合は、路肩などの安全な場所に車を停めて、ブレーキの熱を下げます。30分程度休ませると、元の温度にまで下げることができます。​
ただし、ブレーキを冷やしてブレーキの効果を回復させられるのは、フェード現象に早く気づいた場合に限られます。フェード現象が進行してペーパーロック現象が起きてしまうと、ブレーキを冷やしても本来の性能まで回復できない場合があります。フェード現象やペーパーロック現象が起きた時は、なるべく早くプロに点検してもらい、ブレーキの修理や部品交換などを実施することが重要です。
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ブレーキフルード交換時期とメンテナンス

ブレーキフルードの定期的な交換は、ペーパーロック現象を防ぐために非常に重要です。ブレーキフルードは吸湿性が高く、空気中の水分を自然に吸収してしまう特性があります。水分を吸収したフルードは性能が劣化し、沸点が下がって気泡が発生しやすくなります。
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一般的なブレーキフルードの交換時期は、2~3年に1度が推奨されています。ブレーキフルードは交換してから2~3年の使用で劣化による沸点降下が起こり、そのまま使い続けるとペーパーロック現象を引き起こす原因となります。ブレーキパッドの交換と同じタイミングで、ブレーキフルードも交換するのがおすすめです。
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ブレーキフルードには規格があり、DOT3、DOT4、DOT5.1などの種類があります。DOT3はドライ沸点(新品状態での沸点)が205℃以上、ウェット沸点(1~2年程度使用した状態の沸点)が140℃以上です。DOT4は230℃以上/155℃以上、DOT5.1は260℃以上/180℃以上となっており、数字が大きいほど高性能です。
参考)ブレーキフルードの特長と交換目安 【通販モノタロウ】

ブレーキフルードが劣化すると、水分混入による沸点降下が起こり、フルードが沸騰して配管内に気泡が発生します。液圧が気泡に吸収されて伝わらず、ブレーキが効かなくなるペーパーロック現象を引き起こす危険性が出てきます。また、長期間使用するとフルードに含まれる各種添加剤が劣化し、ゴム部品を硬化させて漏れの原因になることもあります。​

運転中の予防テクニックと安全走行のコツ

長い下り坂を走行する際は、エンジンブレーキを積極的に活用することが最も重要な予防策です。下り坂に入る前に速度を落とし、適切なギアにシフトダウンしておくことで、フットブレーキの使用頻度を大幅に減らすことができます。ギアが低いほどエンジンブレーキは強く効くため、3、2、1といった順番で段階的にシフトダウンさせます。
参考)下り坂ではご注意を!「フェード現象」とは?

フットブレーキを踏みっぱなしにせず、適宜離すようにすることも効果的です。連続してブレーキを踏み続けると、ブレーキパッドやブレーキフルードの温度が急激に上昇してしまいます。断続的にブレーキを使用することで、ブレーキを冷却する時間を確保できます。
参考)フェード現象を防ぐには|下り坂でブレーキが効かなくなる理由、…

乗車人数や積載量に応じて、ブレーキの使い方を調整することも大切です。車両総重量が大きくなると、ブレーキにかかる負荷も増大します。特にトラックやバスなど重量のある車両では、フェード現象が起こりやすいため、エンジンブレーキを優先的に使用することが推奨されています。
参考)フェード現象とは?ペーパーロック現象との違いや主な対策をまと…

高温時や連続したブレーキ使用後は、ブレーキの冷却を意識することが重要です。山道を走行した後は、平坦な道で走行風を当ててブレーキを冷やす時間を取ります。また、ブレーキに異変を感じた場合は、すぐに安全な場所に停車して点検することが、事故を未然に防ぐ鍵となります。​
📊 フェード現象とペーパーロック現象の比較表

項目 フェード現象 ペーパーロック現象
主な原因 摩擦材の過熱によるガス発生​

ブレーキフルードの沸騰による気泡発生
参考)ベーパーロック現象とは?仕組みや原因、また未然に防ぐための対…

ペダルの感触 踏み応えは残るが効きが悪い​

フワフワして踏み応えがない
参考)ベーパーロック現象 - Wikipedia

発生温度

300℃~350℃以上(通常パッド)
参考)ブレーキパッドとは?パッドの構造と耐久性について解説|車の修…

150℃程度(劣化したフルード)​
主な予防策 エンジンブレーキの活用​ ブレーキフルードの定期交換​
回復方法 ブレーキを冷やす​ ブレーキを冷やし、フルード交換​

💡 意外な事実:フェード現象からペーパーロック現象へ
フェード現象が進行すると、最終的にペーパーロック現象を引き起こすことがあります。フェード現象で発生した高熱がブレーキフルードまで伝わり、フルードを沸騰させてしまうためです。つまり、フェード現象は初期段階の警告サインとも言えます。この段階で適切に対処することで、より深刻なペーパーロック現象を防ぐことができます。​
また、雨天時には「ウォーターフェード現象」という別の現象も発生する可能性があります。これは路面の水によってブレーキの摩擦材が濡れることで、ローターとパッドの隙間に水が入り込み水膜を作ることで制動力が弱くなる現象です。「グー」という嫌なブレーキ音がした際には、ウォーターフェード現象が発生している可能性が高いため注意が必要です。​
🔧 専門家からのアドバイス
兵庫県警察の交通安全情報によると、フェード現象を防止するため、エンジンブレーキや低めのギアを活用することが推奨されています。もしフェード現象が発生した場合は、まず落ち着いて、アクセルを戻しエンジンブレーキを使用することが重要です。
参考)兵庫県警察 交通安全 フェード現象

ブレーキフルードメーカーによると、純正フルードの交換用として、ストリートユースで考えられるあらゆる状況を想定したDOT4規格以上のフルードが推奨されています。高温域でのブレーキの効きとフィーリングの安定性を向上させながら、ストリートユースでのロングライフを実現したコストパフォーマンスに優れたフルードを選ぶことが大切です。​
ベーパーロック現象とフェード現象の違いについて詳しく解説 - チューリッヒ保険
基本的な原因と症状の違いを分かりやすく説明した保険会社の公式情報です。

 

ブレーキフルードの重要性とメンテナンス - マツダ公式
ブレーキフルードの規格や交換時期について、自動車メーカーの公式見解が記載されています。