日産セレナの2026年マイナーチェンジで最も目を引く変更が、エクステリアデザイン全体の刷新です。特にフロントフェイスは、これまでの縦型ヘッドライト配置から逆L字型の新しいデザインへと一新されます。この変更は、日産アリアなどの最新電動車で採用されている「ニッサン・シグネチャー」という最新デザイン言語の導入を意味しており、セレナも新時代の日産デザインフィロソフィーに統一されることになります。
3連プロジェクター構成のヘッドライトが採用され、より精悍で立体的な光の表現が可能になります。さらにブロック状のLEDデイタイムランニングライトが細かく配置されるなど、従来の単純な直線的デザインから洗練された幾何学的な造形へと進化しています。グリルは大型化され、横ラインにはライトデザインと調和する細かいブロック状パターンが配置される予定です。このような多層的なデザイン変更により、セレナは「小さなエルグランド」と称されるほど高級感のあるミニバンへと生まれ変わるとの見方もあります。
2026年モデルのセレナでは、インテリアの装備水準が大幅に引き上げられます。これまで上級グレード「LUXION」など限定的に搭載されていた先進装備が、全グレードで標準装備化される戦略を採用しています。12.3インチフルデジタルインストルメントクラスターや10.8インチヘッドアップディスプレイが全車に装備され、運転席での情報表示が格段に充実します。
12.3インチナビゲーションシステムも全車標準化され、スマートフォン連携やナビ連動機能がより広い範囲で利用可能になります。内装トリム類の質感も向上し、プラスチックから本革やソフトタッチ素材への変更が進みます。このような装備の標準化は、競合するトヨタ・ノアやホンダ・ステップワゴンとの競争において、コストパフォーマンスで優位性を持つためのファミリー向けミニバンの位置付けを強化するものです。
マイナーチェンジながら、セレナのボディサイズに微調整が加えられることは異例です。全長が現行の4,690mmから4,695mmへ5mm延長され、ホイールベースが2,870mmから2,880mmへ10mm拡大されます。この変更規模は通常のマイナーチェンジの範囲を大きく超えており、実質的にはフルモデルチェンジに相当する改良と業界からも指摘されています。
わずかな数値変更に見えるかもしれませんが、特に3列目シートの居住性向上に直結します。長時間のドライブや家族乗車時に、3列目に座る乗客の快適性が向上することは、ファミリーカーとしてのセレナの最大の課題解決につながります。この拡大により、セレナはミニバン市場でもより広い居住スペースを実現するポジショニングを確立できるようになるのです。
マイナーチェンジの最大のハイライトは、プロパイロット2.0が全グレードで標準装備となる点です。これまでは「LUXION」などの最上級グレードのみに限定されていた高度運転支援システムが、全車標準装備化されるのは、業界内でも稀な戦略です。プロパイロット2.0は、高速道路同一車線内での完全自動運転に近いハンズオフ機能を備えており、運転手の疲労低減に大きく貢献します。
ナビゲーションと連動したルート走行、自動車線変更、追い越し支援、分岐・合流支援など、複雑な運転シーンでの支援機能も統合されています。さらに360度安全確認システムも全車標準装備となり、駐車時の死角確認やペダル踏み違い時の衝突回避ステアリングアシストなど、包括的な安全機能が実装されます。このような安全装備の充実は、高齢ドライバーを含む幅広い年代の安心感を向上させるためのセレナの戦略的アップグレードです。
セレナのe-POWERハイブリッドシステムは、1.4L直列3気筒ガソリンエンジンを発電専用として採用し、フロントモーターで常に電気駆動を行うシステムです。このシステムにより、FF車では20.6km/L、e-4ORCE搭載の4WD車でも17.0km/Lの燃費性能を実現しています。従来のマイルドハイブリッド方式が廃止され、シンプルな2.0Lガソリンエンジンモデルも継続されますが、トータルパフォーマンスではe-POWERが優位です。
マイナーチェンジによる価格上昇は5万円~10万円程度と予想されており、ガソリンX グレードが約277万円、e-POWERハイウェイスターVが約379万円となる見通しです。これは競合のトヨタ・ノアやホンダ・ステップワゴンとの価格帯と比較しても競争力を保つ水準です。先進装備の標準化とe-POWERの燃費性能を加味すると、購入後の総保有コストではセレナが優位性を持つ可能性が高いのです。
トヨタ・ノアは23.0km/Lのハイブリッド燃費で知られ、価格帯は324万円~421万円です。ホンダ・ステップワゴンは20.0km/Lのハイブリッド燃費で、価格帯は334万円~440万円です。セレナのe-POWERが20.6km/Lという中間的な燃費性能である一方で、プロパイロット2.0の全車標準装備は競合他車にない大きな差別化要因です。
ノアはトヨタセーフティセンス、ステップワゴンはホンダセンシングが標準装備されていますが、ハンズオフ機能の充実度ではプロパイロット2.0が一歩先んじています。セレナの購入層は、単なる低価格追求ではなく、先進技術と安全装備のバランスを重視するファミリー層に向けた明確なポジショニングが行われているのです。また、セレナ特有のAUTECHスポーツグレードやステップタイプ、マルチベッドといったカスタムモデルの充実も、個性的なミニバン選択を求めるユーザーに対応する戦略です。
参考:日産セレナ公式サイト
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/serena.html
参考リンク:ノアとセレナの詳細仕様比較について記載された業界情報サイト
https://carview.yahoo.co.jp/article/detail/f4d4df4b13be8a92eeb4027ffb780361fc74bebf/