トヨタ レトロクルーザーは、1967年製のランドクルーザーワゴン(FJ45)をベースとしながらも、単なる復刻ではなく精密に再構築されたクルマです。ボディの外観は1967年のFJスタイルを忠実に再現していますが、実際のベースフレームは2000年代初頭の100シリーズから流用されています。製作過程では、フレームを10インチ(約25.4センチメートル)延長し、オリジナルのFJ45との比率を調整することで、より洗練されたシルエットを実現しています。
外装の塗装色には特別な意味があり、ブロンズカラーが採用されています。このカラーリングは、懐かしい時代の雰囲気を引き出しつつ、モダンな洗練さも兼ね備えているため、新旧が融合した特別な存在感を放っています。すべての古い塗装被膜は剥離した上で、元の色合いで丁寧に再塗装されており、1999年にデビュー当時と同じ外観に復元されています。
足元には35インチのゼネラルタイヤ製グラバーと、特注の17インチ・ビレットホイールの組み合わせが採用され、オフロード走行への対応能力を高めています。
トヨタ レトロクルーザーの設計では、ホイールベースの拡張に特に配慮されました。当初、FJ40のボディを搭載することも検討されましたが、ホイールベースが短すぎるために断念され、代わりにFJ45が採用されました。このFJ45は、より長いホイールベースを備えているため、10インチのフレーム延長により、乗車定員と荷物スペースのバランスが最適化されています。
ボディの縮尺は大幅に変更されており、全体的なプロポーションが洗練されています。フロントトレッドは4インチ拡大され、より安定した走行性能を実現しています。この設計により、オフロード走行時の悪路走破性が向上し、同時に高速走行時の安定性も確保されています。
インテリアスペースも拡張されており、現代的な快適装備を搭載するための十分な空間が確保されています。
トヨタ レトロクルーザーは、1999年にトヨタ自動車販売の上級マネージャーと米モータースポーツ界のレジェンド、ロッド・ミレン(Rodney K."Rod" Millen)との対話から誕生しました。その年の2月にシカゴ・オートショーでデビューし、世界的な注目を集めました。
当時、ロッド・ミレン自身が「オンボロ」と呼ばれるドナーカーを5000ドルで調達し、これが製作の起点となりました。トヨタと米モータースポーツ業界のコラボレーションにより、レストア+モディファイを組み合わせたユニークなレストモッドが完成したのです。
その後、このクルマは長年倉庫に保管されていましたが、2023年11月にラスベガスで開催されたSEMA SHOW 2023に出品されることで、24年ぶりに日の目を見ることになりました。この復活には、トヨタの修繕チームにより、摩耗したパーツや老朽化したコンポーネントが徹底的に交換・修復されました。
トヨタ レトロクルーザーに搭載されるエンジンは、4.7リッター・32バルブDOHC・V8ユニットで、最高出力230馬力を発揮します。このエンジンは、ランドクルーザー100系から流用されたもので、1999年当時の最新技術を代表する動力源です。
4速オートマチック・トランスミッションと組み合わされ、力強い加速性能と燃料効率のバランスを実現しています。さらに、排気系にはボーラ(Borla)製ステンレス・エキゾーストシステムが採用されており、排気音の質感も高められています。
トランスファーケースとロッキングディファレンシャルもランドクルーザー100系のものが装備されており、オフロード走行時の悪路走破性を強化しています。オリジナルのFJ60に搭載されていた直列6気筒と比較すると、約2倍の性能を実現していることが、モダンなパワートレーンの優位性を示しています。
トヨタ レトロクルーザーのインテリアは、豪華なデザインと最新の快適装備で統一されています。シート表皮には英国の高級革製品メーカーであるコノリー(Connolly)レザーが採用され、茶色のカラーリングで全体が統一されています。このレザーの質感と色合いは、クラシックな雰囲気とモダンな高級感を融合させています。
インテリアには、電源アクセサリ、衛星電話、ナビゲーションシステム、15ガロンの容量を備えたシンク装備など、当時としては最先端の機能が搭載されています。これらの装備は、長距離のオフロード走行や野外活動に対応するための実用的な設計となっており、単なる豪華さだけでなく機能性も備えています。
100系ランドクルーザーの内装パーツがすべて換装されており、最新の素材と技術による快適な乗車環境が実現されています。
2023年のSEMA SHOW 2023に出品されたトヨタ レトロクルーザーは、24年ぶりの復活を遂行するために、徹底的な修復作業が実施されました。長年倉庫に眠っていたこのクルマを再生させるため、復活チームのリーダーであるマーティ・シュワーター氏の指揮の下、上から下まで隅々まで調べ上げられました。
摩耗したパーツやコンポーネントはすべて交換され、外装の古い塗装被膜も完全に剥離された上で、元色による再塗装が施されました。エンジンとトランスミッションも完全にオーバーホールされ、電装システムも最新の状態に更新されています。
この修復プロセスは、単なるメンテナンスではなく、1999年の新車当時の状態を完全に復元することを目標としていました。すべての細部にわたる丁寧な作業により、技術的な完全性と美的価値が両立されています。
トヨタ レトロクルーザーは、2023年のSEMA SHOW 2023においてトヨタ米国法人が出品した際に、世界的な自動車カスタム業界から非常に高い注目を集めました。SEMA SHOWは、米国自動車用品工業会(Specialty Equipment Market Association)が主催する世界最大級のアフターパーツトレードショーで、毎年11月にラスベガスで開催されています。
会場にはナ世界中のカスタムパーツメーカー、バイヤー、自動車メーカーが集まり、最新のカスタムカーが展示されます。トヨタ レトロクルーザーは、この厳選された環境の中で、特に高い評価を受けました。ランドクルーザーのユーザーやファンからは「クールで精巧に作られたトラック」という評価が与えられ、古い外観と現代的な快適さの融合に感動する声が多数寄せられています。
トヨタ レトロクルーザーについて、自動車愛好家やランドクルーザーユーザーから寄せられた反響は極めてポジティブです。「めっちゃかっこいい」「レトロ感満載のデザインが素晴らしい」「当時の雰囲気が溢れ出て感動した」といった感情的な評価が多く集まりました。
さらに注目すべきは、「こんなカスタムカーが市販されないかな」という実現への要望も多数寄せられていることです。これは、このモデルが単なるコンセプトカーではなく、実現可能で購買欲をかき立てるデザインであることを示唆しています。
復活チームのマーティ・シュワーター氏は、レトロクルーザーについて「古い『FJ45』の頑丈な外観を備えながらも、2000年代初頭の究極のコンフォートカーであった100系ランドクルーザーの豪華さを備えている」と述べており、このモデルが目指した「時代を超えた融合」が正当に評価されていることが明確です。
1999年に製作されたレストモッド「FJ45ワゴン」の詳細仕様とカスタム内容について、フレーム延長からエンジンスワップまでの技術的詳細が記載されています。
2023年SEMA SHOW 2023で展示されたレトロクルーザーの復活ストーリーと、ファンからの反響についての詳細な記事です。