パワートレーン種類と選び方:自動車エンジンからEVまで

自動車のパワートレインには、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、PHEVなど多様な種類があります。それぞれのパワートレインの特徴や違いを理解し、あなたのライフスタイルに最適な選択をするための情報をわかりやすく解説します。あなたに合ったパワートレインは何でしょうか?

パワートレーン種類と特徴

パワートレインの主な種類
⚙️
内燃機関(ガソリン・ディーゼル)

従来型のエンジンで、ガソリン車は静粛性が高く、ディーゼル車は力強さと燃費性能が特徴

🔋
電動パワートレイン(HEV・PHEV・BEV)

モーターを活用し、環境性能と燃費効率に優れた次世代型システム

💧
燃料電池(FCV)

水素と酸素の化学反応で電気を生成し、水のみを排出する環境性能最高レベルの技術

パワートレーンとは何か

 

パワートレーンとは、エンジンが生み出した回転エネルギーを駆動輪へ伝達する装置類の総称です。エンジンやトランスミッション、クラッチ、プロペラシャフト、ディファレンシャルギア、ドライブシャフトなどの動力伝達装置全体を指し、「駆動装置」や「ドライブトレイン」とも呼ばれています。運転に関する動作はすべてパワートレインを通じて行われるため、自動車の中でも最重要のパーツ類と言えます。パワートレインの構造は、AT(オートマチック・トランスミッション)やMT(マニュアル・トランスミッション)、FR(フロントエンジン・リアドライブ)やFF(フロントエンジン・フロントドライブ)など車種によって大きく異なります。
参考)パワートレインとは?構成部材も詳しく解説|部品加工のコマツ

パワートレーン種類:ガソリンエンジンの特徴

ガソリンエンジンは、燃料にガソリンを使用するエンジンで、軽自動車、普通車、SUV、ミニバン、高級車、スポーツカーなど様々な車に採用されています。ガソリンにはレギュラーガソリンとハイオクガソリンの2種類があり、オクタン価の違いで分けられています。ガソリンエンジンのメリットとして、静粛性が高く、エンジンそのものの重さが軽いため軽快な走りにつながり、高い回転域まで回すことができ、低コストで製造しやすいため車両価格を抑えられる点が挙げられます。一方デメリットとして、燃料代がディーゼルより1リッターあたり20円から30円ほど高く、ディーゼルより燃費性能が劣る点があります。
参考)ガソリン、ディーゼル、EV、あなたのライフスタイルに合った自…

パワートレーン種類:ディーゼルエンジンの魅力

ディーゼルエンジンは軽油(ディーゼル)を燃料とするエンジンで、力強い走りと燃費性能を両立していることが特徴です。乗用車に使われることが増えてきたエンジンで、SUVやワゴンなど力強さが必要な車に搭載されているだけでなく、プレミアムカーにも採用されています。ディーゼルエンジンのメリットは、ガソリンエンジンよりも燃料代が安く(ガソリンより1リッターあたり20円から30円安い)、力強さがあり大人数で乗っても力不足を感じにくく、燃費性能が良い点です。デメリットとしては、車両価格が高くなりやすく、ディーゼルエンジン独特の音や振動が気になる時があることが挙げられます。​

パワートレーン種類:電動化システムの進化

電動化パワートレインには、ハイブリッド(HEV)、プラグインハイブリッド(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)の主に3種類があります。ハイブリッド電気自動車(HEV)は、内燃機関(ICE)と電動モーターおよびバッテリーの強みを組み合わせており、バッテリーは回生ブレーキによって充電されます。電動モーターは加速や高負荷時に追加の力を提供し、燃費を大幅に改善し排出ガスを削減します。プラグインハイブリッド(PHEV)は駆動用バッテリーに外部から充電できる構造を備え、バッテリー容量がハイブリッドカーより大きくなっているケースが多いため、近場への買い物や送迎であればモーター走行だけで賄えることもあります。バッテリー式電気自動車(BEV)は電気をエネルギー源として動く自動車で、電力は一般的にはバッテリから供給されます。
参考)EVパワートレインとは?3つの主要なタイプ、コンポーネントと…

パワートレーン種類:トランスミッションの違い

トランスミッションは「変速機」とも呼ばれ、様々な大きさの歯車を介してエンジンの動力を適切なトルクや回転速度に変速するための装置です。MT(マニュアルトランスミッション)は、ドライバーが手動でギアをチェンジする方式で、減速比が異なる歯車の組み合わせがあり、クラッチにより動力の伝達を切ってから任意のギアにシフトします。AT(オートマチックトランスミッション)は、MTの変速を自動化した装置です。CVT(コンティニュアスリィバリアブルトランスミッション)は、ギアの代わりにプーリーと呼ばれる滑車とその滑車の動きを別の滑車に伝えるためのベルトを使い変速を行い、無段変速とも呼ばれています。CVT車はプーリーの径が変化して変速比が変わっていくため、大きな変速ショックはなく乗り心地もスムーズです。
参考)CVTとはどのようなもの?ATやMTとの違い、メリット・デメ…

パワートレーン種類:駆動方式の選択肢

駆動方式にはFF、FR、4WDなどの種類があり、それぞれに特徴があります。FF(フロントエンジン・フロントドライブ)は、エンジンがボディ前方に搭載され前輪を駆動して走り、2017年現在最も多くの乗用車で採用されている駆動方式です。FFのメリットは、駆動力を後輪に伝えるプロペラシャフトが不要なため車内のスペースを広くでき、また部品が少なくなる分製造コストも抑えられることです。FR(フロントエンジン・リアドライブ)は、エンジンがボディ前方にあるのはFFと同じですが後輪を駆動して走行し、前輪で操舵、後輪で駆動するという役割分担がされているため車が効率的に動き自然なステアリングフィールを得られます。4WD(フォー・ホイール・ドライブ)は、エンジンの搭載位置に関係なくエンジンからの回転力を4つのタイヤに分配して駆動させる方式で、荒れた路面や滑りやすい路面など悪路を走るオフロード車に多く採用されてきました。
参考)FF・FR・4WD? 駆動形式の違いとメリット・デメリット

パワートレーン種類別の燃費とコスト比較

パワートレインが違うと同じようなカタログ燃費でも、得手不得手はまるで違います。ダウンサイジングターボを含むガソリン車は、同じクルマで複数のパワートレインがある場合、動力性能と燃費の折り合い、価格といった要素のバランスに優れることが多いです。ディーゼルエンジンは燃料代がガソリンより1リッターあたり20円から30円安く、燃費性能も良いという経済的なメリットがあります。ハイブリッドのメリットは、モーターを持つことによるEV走行も含めた街乗りに代表される負荷が小さい走行パターンでの燃費の良さですが、デメリットとして車両価格の高さがあります。プラグインハイブリッドは自宅駐車場に充電設備がないとメリットが薄くなります。
参考)「ハイブリッド・ターボ・ディーゼル」同じようなカタログ燃費の…

パワートレーン種類とライフスタイル別の選び方

パワートレイン選びでは、自分のライフスタイルに合わせた選択が重要です。都市部居住で通勤距離30km以下、自宅充電可能な場合はPHEVの推奨度が95%で、日常の移動をほぼEVでカバーでき、ガソリン使用量を劇的に削減できます。郊外居住で週末ロングドライブが多めで自宅充電可能な場合は、平日はEV走行、週末の長距離ドライブではHVモードという使い分けができるためPHEV推奨度は85%です。アパート・マンション住まいで充電設備がない場合は、HEV推奨度が90%となり、充電環境が整わない場合でもHEVで十分に優れた燃費と走行性能を享受できます。駐車場が1台分しかなく日常生活から休日の遠出まで対応したい場合は、内燃機関を搭載する車(ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、プラグインハイブリッド)がおすすめです。近所の買い物や最寄り駅までの送迎など日常使いが主な用途で自宅に充電設備を設置できる場合は軽自動車のEVでも問題ありません。
参考)ハイブリッドVSプラグイン — トヨタ 新型 RAV4 のパ…

パワートレーン種類の将来展望と電動化トレンド

世界の電気自動車パワートレイン市場規模は、2025年の384億ドルから2032年までに946億7000万ドルへ成長し、年平均成長率(CAGR)13.8%を示すと予測されています。バッテリー式電気自動車(BEV)は、電気自動車の標準になりつつあり、よりシンプルな設計でメンテナンスコストが低いことから、2023年には世界中の電気自動車の70%を占めています。テスラ、ボッシュ、ZFなどの主要企業は次世代パワートレイン技術に投資を進めています。乗用車は現在、電気自動車市場で最大のセグメントを占め、電動パワートレイン需要の最大量を占めており、政府規制、財政的インセンティブ、消費者の採用拡大、そして車両性能と効率性の向上によって推進されています。日本車は6タイプのパワートレインを選ぶことができるパワートレイン天国となっています。
参考)EVパワートレインとは

パワートレーン種類別メンテナンスと故障対策

定期的な点検は、パワートレインのトラブルを未然に防ぐために欠かせません。車検や点検時には、エンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、ディファレンシャルなど各部の状態を確認し、異常がないかをチェックします。早期に異常を発見することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。エンジンの異音や振動を早期に発見し、適切な修理を行うことで、エンジンの損傷を最小限に抑えることができます。トランスミッションの異常を早期に発見することで、ギアの摩耗やシンクロメッシュの不具合を防ぐことができます。ドライブシャフトやディファレンシャルの点検も重要で、ジョイント部の劣化や破損を早期に発見し適切な修理を行うことで、異音や振動を防ぐことができます。日常的な点検として、エンジンオイルの状態やトランスミッションオイルのレベル、タイヤの空気圧などを確認することで、異常を早期に発見することができます。
参考)車のパワートレインのトラブル:異音や振動の原因と修理方法

 

 


図解カーメカニズム パワートレーン編