最近の法的規制が厳しくなっており、正月飾りであっても例外ではありません。ナンバープレートを隠すように装着すると、意図的でなくとも道路交通法違反として取り締まりの対象となります。装着時に緩くしてしまい、走行中に正月飾りがズレてナンバープレートを覆うケースも該当するため注意が必要です。罰金の対象にもなり得るため、装着位置の確認は極めて重要です。
従来はフロントグリルの格子部分に紐を直結するのが標準的でしたが、現代のクルマは設計が異なるため工夫が必要です。走行時に飛散しないよう結束バンドやワイヤータイで確実に固定します。外装塗装への傷防止のため、緩衝材を挟む方法もあります。ボンネットを開けてボンネットラッチに引っ掛ける方法もありますが、この場合でもナンバープレートの視認性を損なわないことが条件となります。
吸盤式の小型正月飾りは車内に装着できますが、フロントガラスや運転席・助手席の窓への張り付けは道路運送車両の保安基準で禁止されています。後部座席の窓ガラスなど規定のない位置、またはダッシュボード上などが適切な設置場所です。ワイパーレバーへの吊り下げは運転操作の妨げとなるため禁止。室内装着型なら塗装傷の心配がなく、気軽に取り外せるメリットがあります。
昨今のクルマはEVを含めグリルレスデザインが増加傾向にあり、従来の格子型フロントグリルが少なくなりました。さらにセンサーやカメラなどが装備される設計となり、物理的に正月飾りを取り付けるスペースが限定されています。丸みを帯びたバンパーデザインも和風の正月飾りと合致しにくくなり、2024～2025年時点でも装着率はほぼ0%に近いとの実態調査報告があります。このため、室内装着型やボンネット部分への工夫した設置が新たなトレンドになりつつあります。
注連飾りが正月飾りとして機能する根拠は、年神様（としがみさま）をおもてなしするための結界と考えられています。門松は年神様の案内板、鏡餅は神様の依代（よりしろ）、注連飾りは家やクルマを不浄から守る役目を担うとされています。単なる装飾品ではなく、新年を迎える儀式の一環として交通安全祈願の願いを込めた伝統的な表現です。年神様に一年間の無事を祈り、ドライバーの安全意識を高めるきっかけとなるという側面が重要です。
取り外した正月飾りはそのままゴミとして処分するべきではありません。神社に持参してお焚き上げしてもらうのが伝統的で最も適切な方法です。松の内が明ける前後から1月中旬までが受け付け期間となる神社が多く、事前に確認することをお勧めします。せっかくの縁起物だからこそ、最後までしっかりとした処分方法を選択することが、年神様への敬意を示すことになります。
地域によって異なりますが、小正月である1月15日前後に「どんど焼き」（地域によっては「左義長」「道祖神祭」など別名あり）が執行されます。関西・中国では「とんど焼き」、京都・滋賀・岐阜・愛知・北陸は「左義長」、東北は「どんと焼き」と呼ばれています。このイベントでは前年のお札やお守り、破魔矢、書き初め、願いが叶ったダルマなどと共に、クルマの正月飾りも焚き上げ対象です。正月気分を最後まで楽しみながら、年神様を空へお送りする重要な儀式です。
神社でのお焚き上げに行けない場合、自宅で丁寧に処分することも可能です。正月飾りに対して塩をまいて清めたうえで、白い紙や和紙に包んで処分します。ポイ捨てや一般ゴミとして無造作に捨てるのは避け、あくまで敬意を持った処分姿勢を維持することが伝統的です。この過程自体が年神様への謝辞を表現する行為となります。
一部の購入者は毎年同じ正月飾りを再利用する選択肢もあります。品質が良く保存状態が良好であれば、翌年も使用可能な製品が多くあります。ただし毎年新しいものを用意することで、年神様に新たな敬意を示すという考え方が伝統的です。このため、毎年新調したうえでお焚き上げするのが本来のやり方とされていますが、個人の信仰や価値観で判断する余地があります。
かつては多くのドライバーが正月飾りを装着していましたが、現代では装着率が著しく低下しています。この背景には、クルマデザイン変化だけでなく、正月文化全般の希薄化も影響しています。門松や鏡餅、おせち料理など、伝統的な正月の習慣全体が減少傾向にあり、クルマの正月飾りもその一環として見なされるようになったのです。一方で、懐かしい文化を復活させたいというニーズも存在し、Amazon楽天などのオンラインストアでは車用正月飾りが継続販売されています。
従来のしめ縄タイプに加え、吸盤式の小型飾り、ボンネットフック対応型、ダッシュボード設置型など多様な商品ラインナップが充実しつつあります。交通安全祈願を表現した「紙垂」（しで）、邪を払う「矢」と「鈴」を組み合わせた輪飾りなど、神道的な意味合いを強調した商品も増えています。楽天市場での「車 正月 飾り」関連検索では2,000件を超える商品があり、購入ニーズは存在し続けています。
電動車両（EV）の普及により、従来のガソリン車とは異なる設計課題が生じています。グリルレスデザインが標準的となるEVでは、正月飾り装着の物理的な困難さが増します。ボンネットを開く習慣が減少していることも影響し、新型車ユーザーほど正月飾り装着から遠ざかる傾向があります。一方で、吸盤式やマグネット式の新商品開発によって、EV時代への対応が進みつつあります。
交通安全祈願という機能面では、小型の交通安全お守りが手軽な代替手段として普及しています。正月飾りよりも小さく扱いやすく、処分の手間も少ないため、若い世代を中心に選択されています。しかし正月飾りは全体的な風格と伝統性を表現するため、「心構えの違い」として機能する面があります。実務的な交通安全祈願であれば両者は同等ですが、伝統文化の継承という観点からは正月飾り装着が重要視される側面も存在しています。
年々装着率が低下する車の正月飾りですが、これは単なる風習の廃止ではなく、日本の年中行事全体の変化を象徴しています。高度経済成長期から現代にかけて、生活様式の急速な変化により、伝統的な正月の過ごし方が大きく転換されました。一方で、2020年代後半に入り、伝統文化の復興に関心を持つ層も増加傾向にあります。自動車という日常的な乗り物に伝統的な正月飾りを施すことで、新年の実感を呼び起こし、年神様への敬意を表現するという行為の価値が見直されるケースも出現しています。
1960～1980年代には、クルマのフロントグリルに正月飾りを装着することが一般的でした。この時期のクルマデザインは格子状グリルが主流であり、正月飾りの視認性が良好だったため、自然な形で定着していた風習です。現代になって懐かしさを感じる年配ドライバーが意識的に装着する傾向も見られ、世代間での価値観の違いが顕著になっています。同時に、グリルレスデザインのEVが普及する中で、この風習は急速に消滅の危機に瀕しているという矛盾した状況が生まれています。
正月飾りを装着したクルマは街中で目立つため、その存在自体が季節感の表現となります。かつてはこうしたクルマが複数見られることで、地域全体として正月の雰囲気が醸成されていました。現代では装着車が極めて少ないため、逆にその珍しさが際立ち、「懐かしい風習への敬意」として機能するようになってきました。SNSなどで正月飾り装着車の写真がシェアされるケースも増え、昭和レトロ文化の一環として再評価される側面もあります。
調査データから見ると、50代以上の世代と若い世代での正月飾り装着意識に大きな差があります。年配層では懐かしさと伝統への敬意から装着する傾向がある一方、若い世代では認知度そのものが低く、存在自体を知らないケースも多いようです。このため、正月飾り関連商品の購入層は限定的になり、オンラインストアでの流通が中心となっています。今後の継続性を考える上で、若い世代への啓蒙活動が課題となるとも指摘されています。
参考：車のしめ縄装着ルールについて
正月飾りを取り付ける場所や付け方、法的な注意点についての詳細解説
参考：クルマの正月飾りの片付けとお焚き上げ方法
松の内を過ぎた後の正月飾り処分方法と各地のどんど焼き名称一覧
