道路交通法第22条第1項では、「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない」と明確に規定されています。
この条文には「何キロまでの超過は許される」という例外規定は一切存在しません。つまり、法律上は制限速度を1キロでも超過すれば、立派な道路交通法違反となるのです。
しかし、実際の取締り現場では異なる状況が見られます。警察庁の統計データによると、令和4年中の最高速度違反の取締り件数は年間99万2260件でしたが、そのうち15キロ未満の超過での取締り件数はわずか130件となっています。
この数字が示すのは、法律上は違反であっても、実際の取締りでは軽微な速度超過は見逃される傾向にあるということです。現場の警察官には裁量権があり、危険性の低い軽微な違反については取締りを行わないケースが多いのが実情です。
警察庁が公表している統計データを詳しく分析すると、スピード違反の取締り実態が明確に見えてきます。令和2年の統計では、スピード違反の検挙数は約116万件でしたが、15キロ未満の検挙数はその中でわずか199件でした。
最も検挙数が多かったのは25~30キロオーバーで、40万件を超える検挙数となっています。これは全体の約3分の1を占める割合です。
以下が速度超過別の検挙傾向です。
この統計から分かるのは、実際に道路を走行している車両の多くが軽微な速度超過をしているにも関わらず、取締りの対象となるのは主に20キロ以上の速度超過であるということです。
ただし、年間100件以上の軽微な速度超過での検挙例があることも事実であり、「絶対に捕まらない」という保証はありません。
仮に制限速度1キロオーバーで検挙された場合の処分内容について詳しく解説します。
一般道路での処分内容:
高速道路での処分内容:
15キロ未満の速度超過は、一般道路と高速道路で同じ処分内容となっています。青キップが発行される場合、反則金を納付すれば刑事責任は免れることができます。
しかし、30キロ以上の速度超過になると状況が大きく変わります。
30キロ以上の速度超過:
30キロ以上の速度超過は反則金制度の対象外となり、刑事事件として扱われるため、裁判所での手続きが必要になります。
多くのドライバーが知らない重要な事実として、車のスピードメーターには法定誤差が存在することが挙げられます。
スピードメーターの法定基準:
この誤差を考慮すると、メーター読みで制限速度ぴったりで走行していても、実際には数キロオーバーしている可能性があります。
誤差対策のポイント:
スマートフォンのGPS機能を使った速度計アプリで実際の速度を確認する
制限速度60キロの道路では、メーター読み55キロで走行する
車検時やタイヤ交換時に速度計の精度をチェックする
純正サイズと異なるタイヤを装着すると速度計の誤差が変わる
特に、タイヤの摩耗やサイズ変更は速度計の精度に大きく影響します。外径が小さくなると実際の速度よりも速く表示され、外径が大きくなると遅く表示される傾向があります。
実際の取締り状況は地域や時間帯によって大きく異なることが、現場の実情として知られています。
地域による取締り傾向の違い:
都市部の特徴:
地方部の特徴:
時間帯による取締り強化パターン:
朝の通勤時間帯(7:00-9:00):
昼間の時間帯(10:00-15:00):
夕方の帰宅時間帯(17:00-19:00):
夜間・深夜帯(22:00-5:00):
また、交通安全週間や年末年始の特別警戒期間中は、普段は見逃される軽微な速度超過でも取締りの対象となる可能性が高くなります。
特別警戒期間の注意点:
これらの期間中は、警察署ごとに取締り強化の方針が出されるため、普段以上に速度管理に注意が必要です。
現実的な対策として、制限速度を確実に守ることはもちろん、特に地方部や特別警戒期間中は、より慎重な速度管理を心がけることが重要です。法律上は1キロオーバーでも違反である以上、完全に安全とは言えないのが実情なのです。