リヤハッチガラスとは|役割や搭載車種と便利な使い方

リヤハッチガラスは、バックドア全体を開けずにガラス部分だけを開閉できる便利な機構です。狭い駐車場でも荷物の出し入れができ、日常の買い物からアウトドアまで幅広く活用できます。なぜこの機能が注目されているのでしょうか?

リヤハッチガラスとは

リヤハッチガラスの特徴
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ガラス部分だけが開閉

バックドア全体を開けずに、リアウインドウのガラス部分だけを独立して開閉できる機構です

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狭い場所でも使いやすい

後方スペースが限られた駐車場でも、小さな荷物の出し入れが可能になります

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跳ね上げ式の構造

ガスストラットの反発力で跳ね上げる仕組みで、軽い力で開閉できます

リヤハッチガラスの基本構造と開閉機構

リヤハッチガラスとは、ステーションワゴンやSUV、ミニバンなどのリアウインドウに装備される独立開閉式のガラス部分を指します。バックドア本体とは別に、リアガラス部分だけを跳ね上げ式で開閉できる構造になっており、グラスハッチとも呼ばれています。現在の車両では、ガスストラットの反発力を利用して跳ね上げる方式が主流となっており、ヒンジとガスストラットを取り付けるボルト穴がガラス面に貫通していることから、外観での判別も可能です。

 

この機構には大きく分けて2つのタイプが存在します。1つ目はリアウインドウ自体をバックドアとして兼用するタイプで、コスト削減や車体剛性の維持を目的として、スポーツカーや小型車に採用されることがあります。2つ目はバックドアにガラスハッチを追加するタイプで、バックドア自体を開閉せずに荷物を出し入れできる利便性を追求したものです。

 

過去にはスライド昇降式のパワーウインドウタイプも存在しており、キーを鍵穴に入れて操作する電動開閉式が採用されていました。特に米国フォードや北米向け車種に多く採用され、ステーションワゴンやSUVの使い方を受け継ぐものとして発展してきた歴史があります。

 

ガラスハッチの詳細な構造と歴史について - Wikipedia

リヤハッチガラスと通常のバックドアとの違い

リヤハッチガラスと通常のバックドアの最も大きな違いは、開口部の大きさと開閉に必要なスペースです。通常のバックドアは車両全体の後部を大きく開く必要があるため、後方に1メートル以上のスペースが必要となりますが、リヤハッチガラスは上方向に跳ね上げるだけなので、後方スペースが限られた状況でも開閉が可能です。新型セレナのガラスハッチは、通常のバックドアに対し約半分のスペースがあれば開閉できる設計となっています。

 

開閉時の動作の軽さも大きな違いの1つです。バックドア全体は重量があるため、開閉には相応の力が必要となり、特に小柄な方や高齢者にとっては負担となることがあります。一方、リヤハッチガラスはガラス部分のみの重量であるため、片手でも軽々と開け閉めができ、荷物を持ったままでの操作も容易です。

 

動作音の大きさにも違いがあります。大きなバックドアを開閉する際には金属部品の接触音やロック機構の動作音が大きく響きますが、ガラスハッチの開閉は比較的静かで、夜間の住宅街やキャンプ場など静かな環境でも周囲に配慮した使用が可能です。

 

リヤハッチガラスが採用される車種の特徴

リヤハッチガラスは主にステーションワゴン、SUV、ミニバンといった後部にラゲッジスペースを持つ車種に採用されています。日本国内では1990年代以降に採用例が増加しましたが、現在では限られた車種のみの装備となっており、国産車では日産セレナやトヨタ・ランドクルーザープラドが代表的な搭載車種です。輸入車ではBMW3シリーズツーリング、5シリーズツーリング、シトロエン・ベルランゴ、プジョー・リフター、メルセデス・ベンツVクラス、ジープ・ラングラーなどに採用されています。

 

日産は古くからガラスハッチの採用に積極的なメーカーで、初代テラノ、パイクカーのパオ、初代キューブ、アベニール・サリュー、リバティ、ステージア、プレサージュなど、多数の車種にこの機構を採用してきた歴史があります。特にセレナでは2016年発表の5代目(C27型)でハーフバックドアとして初採用され、ユーザーから好評を得たことで2022年のフルモデルチェンジでも継続採用されました。

 

過去にはホンダCR-V(初代・2代目)、マツダ・トリビュート、トヨタFJクルーザー、三菱ミニカトッポなど、軽自動車から大型SUVまで幅広い車種に採用されていましたが、コストや重量、デザイン上の制約などから、現在は採用車種が大きく減少しています。

 

リアガラスハッチ採用車の歴史と減少理由について - carview!

リヤハッチガラスのメリットと活用シーン

リヤハッチガラスの最大のメリットは、限られたスペースでのラゲッジアクセスの容易さです。地下駐車場や立体駐車場、住宅地の狭い駐車スペースなど、後方に十分なスペースが確保できない場所でも、ガラスハッチだけを開けることで荷物の出し入れが可能となります。ショッピングモールで複数の店舗を回る際、毎回大きなバックドアを開け閉めする必要がなく、小さな荷物を少しずつ積み込むような使い方に最適です。

 

キャンプやアウトドアでの利用でも大きな利便性を発揮します。ラゲッジスペースに荷物を満載している状態でも、ガラスハッチから必要な小物だけを取り出すことができ、荷崩れの心配がありません。バックドア全体を開けると積載物が落下するリスクがありますが、ガラスハッチなら上部からのアクセスとなるため、そのような心配も不要です。

 

日常的な使い勝手の向上も見逃せません。ガラスハッチは10cm程度開けるだけでも小さな荷物を積むことができ、わずかな開閉で済むため時間の節約にもなります。また、力が弱い方でも片手で軽々と操作できるため、買い物袋を持ったままでの荷物の積み込みがスムーズに行えます。BMWのステーションワゴンを長年乗り継ぐユーザーからは、「片手で荷物を持っている時でも、上げ下げも軽い」という高い評価が寄せられています。

 

リヤハッチガラスのデメリットと注意点

リヤハッチガラスにはいくつかのデメリットも存在します。最も指摘されるのが、ラゲッジスペースのフロアが深い車種での使いにくさです。特に大型ミニバンやSUVでは床面が低く設定されているため、ガラスハッチの開口部から手を伸ばしても床に置いた荷物に届かないケースがあります。トヨタFJクルーザーのような大型SUVでは、背面タイヤが場所を取り、開口部自体も小さいため、小柄な日本人にとっては実用性が限られていました。

 

大きな荷物や長尺物の出し入れには適していません。ガラスハッチの開口部は限られているため、大型の荷物や家具などを積み込む際には結局バックドア全体を開ける必要があり、ガラスハッチの利点を活かせない場面も多くあります。また、上下にガラスが開閉するタイプの場合、リアゲートを完全に開くには2アクション必要となり、通常の1枚ゲートと比べて手間がかかります。

 

コスト面での課題も大きく、ガラスハッチを採用するには開閉機構の追加パーツや車体剛性の確保、シール性向上のための追加コストが発生します。重量も増加するため燃費への影響もあり、バックドアのデザインにも制約が生じます。これらの理由から、メーカーのリサーチで多くのユーザーが必要性を感じていないと判断されると、次期モデルで廃止されるケースが増えています。現在の新車市場では採用車種が極めて限られており、国産車ではセレナとランドクルーザープラドのみとなっているのが現状です。

 

リアガラスハッチのメリットとデメリットの詳細 - くるまのニュース

リヤハッチガラスの将来性と海外での採用状況

リヤハッチガラスの将来性については、国内市場では厳しい状況が続いています。開発費の削減やコスト競争力の向上が求められる現代の自動車業界において、追加コストを要する機構は採用が見送られる傾向にあります。しかし、日産セレナが2022年のフルモデルチェンジでも継続採用し、さらに開口時のサイズを見直して狭い駐車スペースでも使えるように改良を加えたことは、ユーザーニーズが確実に存在することを示しています。

 

海外市場では依然として一定の需要があり、特に欧州メーカーのステーションワゴンでは採用が続いています。BMWの3シリーズツーリングや5シリーズツーリングでは伝統的な装備として維持されており、長年に渡りこれらの車種を乗り継ぐユーザーからは「一番の利点は、地下駐車場に停車した際、後方のスペースが狭くてもアクセスできること」として高く評価されています。

 

電動化の進展により、新たな可能性も見えてきています。従来は手動式やガスストラット式が主流でしたが、電動開閉機構を採用することで、リモート操作や自動開閉機能を付加できる可能性があります。また、センサー技術の発達により、荷物の大きさを検知して自動的にガラスハッチとバックドアを使い分けるスマート機能の搭載も考えられます。ただし、こうした高度な機能の実現には更なるコスト増が避けられないため、プレミアムクラスの車種での採用が先行する可能性が高いでしょう。

 

実用性と利便性を重視するユーザー層が一定数存在する限り、リヤハッチガラスの需要は完全に消失することはないと考えられます。特に日常の買い物や狭い駐車環境での使用が多い都市部のユーザーや、アウトドア愛好家からの支持は根強く、こうしたニーズに応える形で今後も一部の車種には採用され続けることが予想されます。