新型キューブの外観デザインにおいて、最も特徴的な要素がV-Motion形状のヘッドライトです。日産が長年掲げてきた「V-Motion」グリル言語を、新型キューブにも本格的に導入することで、現行モデルから一線を画した先進的なイメージが生まれます。
このデザイン言語は、日産の最新モデルであるセレナやアリアなど、複数の主要車種で採用されており、ブランドのアイデンティティとしての役割を担っています。ヘッドライトの形状や配置を見直すことで、従来のキューブの丸みを帯びたデザインから、より角張ったダイナミックな表情へと進化させます。その結果、昼間走行時でも車両の存在感が大幅に向上し、同クラスの競合車種との視覚的な差別化が実現されるのです。
加えて、新しいヘッドライトデザインはLED技術の最新実装により、夜間走行時の視認性も従来モデルと比べて大幅に改善されることが予想されています。特に都市部での複雑な交通状況下では、優れた視認性が安全性向上に直結するため、このデザイン変更は単なる美的選択ではなく、実用性を高める設計判断でもあります。
新型キューブのV-Motion形状ヘッドライトには、日産の電動化戦略を象徴する意味合いも込められていると考えられます。従来のガソリン専用車から、e-POWERといった新しいパワートレインへの転換を、外観のビジュアル変化で表現することで、消費者に対して「これは新しい時代のキューブである」というメッセージを強力に発信できるのです。
新型キューブの最も革新的な装備が、コンパクトボディながら3列シートを実装するという大胆な設計です。従来のキューブは5人乗りの2列シートレイアウトでしたが、新型では3列シートにより6人から7人乗りが可能になる見込みです。この変更は、市場の需要トレンドを反映した重要な進化を示しています。
背の高いコンパクトカー市場において、トヨタのシエンタやホンダのフリードなど、複数の3列シート車が高い売上を記録しており、日産としてもこの市場セグメントへの対応が急務となっていました。新型キューブに3列シートを導入することで、従来キューブユーザーに加えて、ミニバン層の需要も取り込む戦略が展開されています。
さらに注目すべきは、スライドドアの採用という決断です。通常のヒンジドア式では、狭い駐車スペースで乗り降りの際に隣の車両とドアがぶつかるリスクが生じますが、スライドドアならば横幅を最小限に抑えたまま乗降できます。特に子ども連れの家族や高齢者にとって、この利便性の向上は購買決定に大きな影響を与える要素となるでしょう。
スライドドアの機構はコスト面での課題があるため、かつてのキューブにはこの装備が採用されていませんでしたが、部品供給体制の効率化と製造技術の進展により、コンパクトセグメントでもスライドドア搭載が現実的になったのです。この実装により、新型キューブは同クラスの競合車との差別化ポイントが明確になります。
新型キューブに搭載される最重要スペックがe-POWERシステムです。このシリーズハイブリッド方式は、1.2L直噴ミラーサイクルエンジンを発電専用として機能させ、主にモーター（EM57型、最高出力109PS、最大トルク25.9kgf・m）による駆動を行うという革新的なパワートレイン構成です。
JC08モード35.0km/Lという燃費値は、同クラスの従来型ガソリン車（23km/L程度）と比較して大幅な改善を示しています。この劇的な燃費向上により、年間ランニングコストが大きく削減される見込みです。例えば、年間走行距離が10,000kmの場合、e-POWERモデルは従来型ガソリン車と比べて年間ガソリン代で約110,000円の節約が期待できます。
e-POWERシステムの最大の利点は、都市部での頻繁な加速・減速が多い運転環境での優れた燃費性能です。従来のエンジン直結のパワートレインでは、加速時にエンジンの負荷が急激に変わり、燃費効率が悪化しますが、e-POWERではモーターの特性を活かして、最適な回転数でエンジンを稼働させることが可能です。さらに、アクセルペダル一つで緻密な速度調整ができ、ワンペダルドライビングにより回生ブレーキとも協働します。
環境配慮の観点からも、CO2排出量が大幅に低減されるため、脱炭素社会実現への個人的な貢献が実現できます。加えて、日本国内では電動車購入時の補助金制度が検討されており、国の施策とも相まってe-POWERモデルの選択肢がより一層魅力的になるでしょう。
新型キューブが復活する背景には、トールワゴン市場での明確な需要が存在します。背の高いコンパクトカー市場では、トヨタのシエンタやホンダのフリード、スズキのソリオなど、複数の有力車種が激しい競争を展開しており、日産はこの市場での存在感を失っていました。新型キューブの投入は、このギャップを埋める戦略的な決定です。
シエンタは3代目へのフルモデルチェンジが進行中であり、フリードは安定した販売台数を継続していますが、新型キューブはこれらのライバル車と異なるコンセプトで差別化する計画です。具体的には、コンパクトボディながら3列シートとスライドドアを実装した実用性と、e-POWERによる優れた燃費性能を両立させることで、「手軽さと機能性を兼ね備えた都市型ファミリーカー」としてのポジショニングが目指されています。
価格競争力も重要な要素です。新型キューブの予想価格200～250万円（e-POWERモデル）は、シエンタやフリードと同等から若干低め程度に設定される見込みです。同等の装備やパワートレインを持つライバル車と比較して、コストパフォーマンスに優れるポジショニングが可能です。
さらに、日産ブランドのディーラーネットワークの強みや、アフターサービスの充実度なども差別化要因となります。特に地方都市における日産の販売網は競合他社と同等かそれ以上の規模を有しており、顧客サポートの面で優位性を保つことができるでしょう。
新型キューブの発売予定時期は2025年10月頃と予想されています。日産の2025年新型車投入スケジュールの中では、比較的遅い時期での投入となり、他の新型モデルの市場反応を見極めつつ、最適なマーケティング戦略を構築する余裕が生まれます。この投入時期は、日産の長期的な電動化戦略と同期していないという見方もあります。
予想価格体系は、通常のガソリンエンジン搭載モデル（直列3気筒1.2L DOHC直噴スーパーチャージャー）が170～215万円、e-POWER搭載モデルが200～250万円とされています。この価格レンジは、新型キューブが明確にファミリー層や若年初心運転者をターゲットにしていることを示唆しています。200万円台前半という価格帯は、「新車購入を初めて検討する家族」にとって十分に魅力的です。
日産の長期ビジョンでは、2030年までに電動車の販売比率を50%以上に高める計画が掲げられており、新型キューブのe-POWERモデル投入はこの戦略に合致しています。シリーズハイブリッド方式は、プラグインハイブリッドや純電気自動車への過渡的なステップとしても機能し、電動技術への顧客ニーズを段階的に高める役割を担うでしょう。
さらに注目すべき点として、新型キューブがコンパクトセグメントで先進的な電動化技術を展開することで、日産ブランド全体の電動化推進をアピールできます。高級セグメントでのアリアなどの展開と異なり、より多くの消費者層に電動車の利便性と環境配慮の価値を伝える絶好の機会となるのです。
参考資料：日産自動車公式ニュースリリース（新型モデル展開情報）
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases
参考資料：トールワゴン市場の需要動向と消費者ニーズに関する業界分析。新型キューブの市場投入戦略にも関わる重要な背景情報。
https://autoc-one.jp/nissan/cube/
参考資料：e-POWER搭載車の実燃費データと運用コスト比較。新型キューブの経済性評価に必要な参考情報。
https://car-repo.jp/blog-entry-441.html
