mtモード付きatは、ドライバーが手動でギアを選択できる機能を持つ自動変速機です。現在市販されている車両には、大きく分けて3つの種類が存在します。
CVT(無段変速機)ベース
CVTは本来段階のない変速を行いますが、mtモードでは擬似的に段を作り出します。国産車で最も普及しているタイプで、滑らかな変速が特徴です。
ステップATベース
トルクコンバーターを使用した従来型のATにmtモードを追加したものです。多段化が進んでおり、現在では8速や10速といった多段ATも存在します。
DCT(デュアルクラッチトランスミッション)ベース
2つのクラッチを使用する方式で、ステップATと比べてもmtモードのダイレクト感が強いのが特徴です。国産車では採用例が少ないものの、スポーツカーを中心に搭載されています。
日本で初めてmtモード付きatを採用したのは、1994年にデビューした三菱FTOでした。この「INVECS-II」システムは、当時としては画期的な技術として注目を集めました。
mtモードの適切な使用により、燃費を大幅に改善できることが実証されています。検証データによると、以下のような結果が得られています。
走行モード | 平均燃費 | 改善率 |
---|---|---|
ATのDレンジ走行 | 8.3km/L | - |
mtモードを駆使 | 9.7km/L | +11.6% |
この燃費向上効果は、特に市街地走行で顕著に現れます。ストップ&ゴーが多い環境では、適切なギア選択により無駄な燃料消費を抑制できるためです。
燃費向上のメカニズム
ただし、速度に適さないギアを選択すると逆効果になる可能性があるため、注意が必要です。
mtモードの最も重要な用途は、エンジンブレーキの効果的な活用です。従来のATでは、多段化やCVTの普及により、下り坂でのエンジンブレーキが十分に効かない場合があります。
エンジンブレーキが必要な場面
従来のATでは、ローレンジ(L)を使用してエンジンブレーキを効かせていましたが、この方法では大雑把な制御しかできませんでした。mtモードでは、より細かなギア選択が可能になり、適切なエンジンブレーキ効果を得られます。
安全性の向上
ブレーキペダルに頼りすぎると、フェード現象により制動力が低下する危険性があります。mtモードによるエンジンブレーキの併用は、ブレーキシステムへの負担を軽減し、安全性を向上させます。
三菱の開発担当者によると、mtモードのシフトパターンは従来のローレンジ操作を参考に設計されており、シフトダウンは手前に操作する直感的な配置となっています。
mtモードは、スポーツ走行においても大きな効果を発揮します。マツダの販売店スタッフによると、顧客からは「スポーティに走りたい気分のとき」にmtモードを使用するという声が多く聞かれます。
スポーツ走行での活用メリット
現代のAT車では、内装の質感向上とともにシフト操作感にもこだわりが見られます。パドルシフトの採用により、ステアリングから手を離すことなくギアチェンジが可能になり、より安全で快適なスポーツ走行を実現しています。
パドルシフトの操作性
パドルシフトは、ステアリングホイール裏側に配置されたレバーやボタンで操作します。右側がシフトアップ(+)、左側がシフトダウン(-)という配置が一般的で、直感的な操作が可能です。
DCTベースのmtモードでは、特にダイレクト感が強く、MT車に近い操作感を味わえます。これにより、運転の楽しさを損なうことなく、AT車の利便性を享受できます。
mtモードは便利な機能ですが、使用時にはいくつかの注意点があります。コンピュータ制御により危険な操作は自動的に拒否されるものの、適切な使用方法を理解することが重要です。
主な注意点
走行中にギアがどこに入っているかわからなくなることがあります。メーター内にギア表示はありますが、運転中に頻繁に確認するのは困難です。特に混雑した道路では、メーターを見る時間が限られるため、思っていたギアと違うギアに入っていることがあります。
自動シフトダウン機能
AT車のmtモードでは、減速時に自動的にシフトダウンするプログラムが組まれています。これにより、さらにギア位置がわからなくなる場合があります。
安全対策
高速走行中に1速ギアに入れようとしても、コンピュータが危険と判断して操作を拒否するため、エンジンやトランスミッションが損傷することはありません。しかし、適切な操作を心がけることで、より安全で効果的にmtモードを活用できます。
現在では多くの車種でmtモード付きatが標準装備されており、グレードや排気量に応じて装着される場合もあります。コストの制約はあるものの、メーカーは下り坂でブレーキだけに頼る仕組みを避けたいと考えており、今後もmtモードの普及は続くと予想されます。
mtモード付きatは、単なる装備ではなく、燃費向上、安全性の確保、運転の楽しさの向上という多面的な効果をもたらす重要な技術です。適切な理解と使用により、その真価を発揮できるでしょう。