トルクコンバーターロックアップ機構仕組み効果対応車種

AT・CVT車に搭載されているトルクコンバーターのロックアップ機構とは何か、その仕組みや燃費改善効果、故障時の症状について詳しく解説します。ロックアップクラッチの動作原理を理解すれば愛車のメンテナンスにも役立つでしょうか?

トルクコンバーター ロックアップ機構とは

トルクコンバーター ロックアップの基礎知識
⚙️
動力伝達効率の向上

油圧による伝達ロスを機械的直結で解消

💡
燃費改善技術

MT車並みの高効率な動力伝達を実現

🔧
電子制御システム

走行状況に応じた最適なタイミング制御

トルクコンバーターロックアップ機構の基本構造

トルクコンバーターロックアップ機構は、AT車やCVT車に搭載された燃費改善技術の代表的な装置です 。従来のトルクコンバーターは、エンジンからの動力を油圧(作動油)を介してトランスミッションに伝達していました。この方式は滑らかな発進や変速を可能にする一方で、常に油の粘性により動力伝達ロスが発生していました 。
参考)「ロックアップ機構」を解説!なぜトルクコンバータ式AT車は「…

 

ロックアップ機構は、このトルクコンバーター内部にロックアップクラッチと呼ばれる摩擦クラッチを設置し、一定の走行条件下でエンジン側のポンプインペラとトランスミッション側のタービンランナを機械的に直結する仕組みです 。これにより、油圧による伝達を経由せずに、エンジンの動力を100%近い効率でトランスミッションに伝えることが可能になります。
参考)ロックアップ機構 【ろっくあっぷきこう】:自動車なんでも用語…

 

現代の車両では、車速・エンジン回転数・アクセル開度・ATF温度などの複数のパラメーターを総合的に判断し、コンピューター制御によって最適なタイミングでロックアップクラッチの締結・解放を自動制御しています 。
参考)燃費改善の立役者!ロックアップ機構の仕組み - クルマの大辞…

 

トルクコンバーターロックアップによる燃費改善メカニズム

ロックアップ機構の最大の特徴は、その優れた燃費改善効果にあります。従来のトルクコンバーターでは、流体による動力伝達のため常に5~15%程度の伝達ロスが発生していました 。これに対してロックアップ作動時は、エンジンとトランスミッションが機械的に直結されるため、MT車と同等の伝達効率を実現できます。
参考)【今さら聞けない】ATのロックアップ機構って何?

 

特に高速巡航時では、ロックアップ機構の効果が顕著に現れます 🛣️。定速走行中にロックアップクラッチが締結されることで、エンジンの余分な負荷が軽減され、燃料消費量が大幅に削減されます 。実際の走行では、従来型トルクコンバーターと比較して10~20%の燃費改善効果が報告されています。
参考)ATのトルクコンバーターとロックップ機構 - ワゴンR実用日…

 

近年のハイブリッド車では、モーター走行との組み合わせによってロックアップ作動領域を拡大し、さらなる燃費向上を図る技術も開発されています 。また、CVT車においても副変速機付きCVTとロックアップ機構を組み合わせることで、広い速度域での高効率運転を実現しています 。
参考)副変速機付きCVTのメリット・デメリットとは?仕組みから採用…

 

トルクコンバーターロックアップクラッチ故障の症状と対処法

ロックアップクラッチに故障が発生すると、特徴的な症状が現れます。最も多く報告されているのは、発進時や低速走行時の異常な振動やギクシャク感です 。これは、ロックアップクラッチが不適切なタイミングで締結・解放を繰り返すことで発生します。
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具体的な故障症状としては以下があります。

  • 発進時のエンジン回転数急上昇とその後の急低下
  • アイドリング時の回転数不安定
  • 加速時の異常なショックや振動
  • 燃費の著しい悪化

故障診断では、P0740やP0741などの故障コードが検出されることが多く、これらはロックアップソレノイドの電気的故障や油圧制御異常を示しています 。修理には、ソレノイドバルブの交換やトルクコンバーター本体の交換が必要になる場合があり、作業工賃も含めて高額な修理費用が発生する可能性があります 。
参考)https://bbs.kakaku.com/bbs/K0000608487/SortID=23284338/

 

予防策として、ATFの定期交換が重要です。劣化したATFはロックアップクラッチの正常な動作を阻害し、早期故障の原因となります 。
参考)ニッサン セレナ(C25)CVT故障 - 増高自動車工業有限…

 

トルクコンバーターロックアップ制御技術の進化

現代のロックアップ制御技術は、従来の単純なオン・オフ制御から大きく進歩しています。最新の車両では、スリップ制御と呼ばれる高度な技術が採用されており、ロックアップクラッチの締結圧を細かく調整することで、完全に直結する前の半クラッチ状態を精密にコントロールできます 。
参考)トルクコンバータとは?故障した時の症状や原因、メンテナンス方…

 

この技術により、従来は振動や騒音の問題で使用できなかった低速域からのロックアップが可能になりました。例えば、発進直後の時速20km程度からロックアップを開始し、運転者に気づかれることなく燃費改善効果を発揮します 🚗。多板クラッチ構造の採用により、より大きなトルク容量と滑らかな接続も実現されています 。
参考)エンジンと変速機を直結するロック・アップ・クラッチ機構

 

さらに、AI技術を活用した学習制御システムも実用化されており、個々の運転者の運転パターンや走行環境に適応したロックアップ制御を行う車両も登場しています。これにより、快適性と燃費性能の両立がより高いレベルで達成されています。

 

トルクコンバーターロックアップ搭載車種と将来展望

現在、ロックアップ機構はほぼ全ての現行AT車・CVT車に標準装備されています。特に日本車メーカーでは、トヨタの「Super ECT」、ホンダの「G-Design Shift」、日産の「エクストロニックCVT」など、各社独自のロックアップ制御技術を開発・展開しています 。
参考)https://toyota.jp/recall/kaisyu/170719.html

 

高性能車分野では、レクサスIS-Fなどのスポーツカーにも全域ロックアップATが採用されており、MT車に匹敵する直接的な駆動感と燃費性能を両立しています 。商用車分野でも、大型バスやトラックにロックアップ付きATが普及し、運転疲労の軽減と燃費向上に貢献しています。
将来的には、電動化技術との融合がさらに進展することが予想されます ⚡。ハイブリッドシステムとの協調制御により、エンジン・モーター・ロックアップクラッチの最適な組み合わせ制御が実現され、さらなる燃費向上が期待されています。また、自動運転技術との連携により、交通状況を先読みしたロックアップ制御も研究開発が進んでいます。

 

参考:日産によるCVTトルクコンバーター改善に関する技術情報
https://toyota.jp/recall/kaisyu/170719.html
参考:トルクコンバーター基礎技術の詳細解説
エンジンと変速機を直結するロック・アップ・クラッチ機構
参考:ATロックアップ機構の専門用語解説
ロックアップ機構 【ろっくあっぷきこう】:自動車なんでも用語…