ホンダ屋根なし軽トラ 4人乗り奇抜デザイン

屋根もドアもない、ホンダが1970年に生み出した個性的な軽トラ「バモスホンダ」。その驚くべき実用性と特異なデザイン、そして現代に復活する屋根なし軽トラの系譜についてご存じですか?

ホンダ屋根なし軽トラの系譜

ホンダ屋根なし軽トラ 3つの時代
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1970年代 バモスホンダ

屋根もドアもない、ホンダが生み出した唯一無二の軽トラック

2020年代 自動運転作業車

屋根なし軽トラの理念を受け継ぐ最新型の無人作業車両

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アウトドア・DIY人気の再興

屋根無しスタイルがキャンプやDIY層に再注目される背景

ホンダ屋根なし軽トラ バモスホンダの誕生背景

 

1970年にホンダが満を持して送り出したバモスホンダは、軽トラックの概念を根本的に変えるユニークな1台でした。その名称は「バモス」(VAMOS)という造語で、名車の証である「社名が末尾に付く」稀有な例となり、ホンダ四輪車初期のT360から派生したTN360をベースにしています。設計段階では月産2000台を見込んでいたにもかかわらず、わずか3年間の販売期間でおよそ2500台という限定的な販売実績に終わりました。この不振の背景には、当時の日本市場が想定していなかった「中途半端な立ち位置」がありました。軍用ジープのような実用性と、当時流行していなかったレジャー向けのオープンスタイル。当時の国道走行基準も満たしきれず、1973年にはホンダが社運をかけたシビック生産に集中するため廃盤となります。

 

ホンダ屋根なし軽トラ 奇抜なデザインと機能的な仕様

バモスホンダの外見は一目見て忘れられないほどユニークです。フロント部分に大きなスペアタイヤを配した、いかにもオフロード車然とした面構え。丸目2灯ヘッドライトの下に配されたウィンカーが愛嬌ある表情を生み出し、フロントパネルは文字通り素っ気ないフロントウィンドウ付きの一枚板を傾斜させたシンプル設計となっています。それでいて、フロントバンパーは高剛性に仕立てられ、大型オーバーライダーという補強部品が取り付けられていました。驚くべきことに、フロント部分のスペアタイヤは単なる装飾ではなく、衝突時のショック吸収を目的とした安全機構だったのです。ボディは全長2995mm、全幅1295mm、全高1655mmという軽トラック規格に完全に収まりながら、わずか520kgの軽さを実現。ホイールベース1780mmは最小回転半径を3.9m以下に抑え、狭い現場での取り回しに優れていました。

 

ホンダ屋根なし軽トラ ドアなし・屋根なしの革命的安全思想

「ドアがない」という斬新な選択は、単なる意匠ではなく、乗員の重心より高い位置に転落防止用のガードパイプを配した周到な安全設計の表れでした。この設計により、乗用車のようなドア開閉による事故のリスクを排除しながら、作業現場での素早い乗降を実現しています。バモスホンダには「バモスホンダ2」(座席部分のみに幌・2人乗り)、「バモスホンダ4」(座席部分のみに幌・4人乗り)、「バモスホンダフルホロ」(荷台まで幌で覆った4人乗り)の3種類が用意されました。シートはベンチシート式でシートベルトは2点式。車内のメーター・スイッチ類はすべて防水仕様で、急な雨が降ってきても故障しない耐久性を備えていました。何と車内を水洗いすることすら可能だったのです。

 

ホンダ屋根なし軽トラ 意外に実用的な積載機能と設計

作業現場での実用性も非常に高く、ボディサイドから後部にかけてのセットバック部分には手すりを設けることで、積み荷の飛び出しを防ぐとともに、ロープフックとしても機能するマルチユースな設計となっていました。車体後部左側にはけん引フックも装備。防水グローブボックス、ハンドルロック、盗難対策までも備えた本格的な工具車です。用途としては警備用、建設現場用、工場内運搬用、電気工事用、農山林管理用、牧場用、その他移動を伴う屋外作業用、配達用など、ビジネスで使用されることを主に想定して設計されました。パワートレインは強制空冷4サイクル2気筒OHCエンジンで最高出力30馬力・最大トルク29Nm、最高速度90km/hを発揮。1970年代の設計とは思えない、ラフな乗り方にも耐える基本的堅牢性が備わっていました。

 

ホンダ屋根なし軽トラ 現代に蘇る屋根なしコンセプト

バモスホンダから50年以上経た現代、ホンダは屋根なし軽トラの理念を新たな形で復活させています。アメリカン・ホンダが開発した「Honda AWV(Autonomous Work Vehicle)」は、自動運転技術と屋根なし軽トラの実用性を融合させた最新型の作業車両です。2018年の「CES 2018」で初公開されたAWVは、2023年のジャパンモビリティショーで日本にも初めて公開されました。第3世代モデルでは全長3025mm、全幅1300mm、全高2052mmにまで進化し、低床式ベッドを採用することで荷物の積み下ろしが容易になり、最大積載量は907kgに増加。レーダー、ライダー、ステレオスコピック3Dカメラ、GPSを装備し、自律走行はもちろんリモートコントロール操作にも対応する最先端の技術を搭載しています。建設業界での実証実験を2021年からニューメキシコ州で展開し、2023年10月にはカナダの空港でのデモンストレーションも実施されました。

 

バモスホンダは、当初こそ市場から理解を得られませんでしたが、昭和時代の農家から令和のテクノロジーまで、その革新的な概念は確実に受け継がれています。屋根なし軽トラというコンセプトは、単なる懐古ではなく、作業効率と安全性のバランスを追求する、ホンダの長期的なモノづくり哲学を象徴する存在として今も輝き続けているのです。

 

<参考記事>
バモスホンダの実用性と歴史的意義について詳しく解説しており、特にドアなし設計の安全思想と防水仕様の画期的な機能が記載されています。

 

https://kuruma-news.jp/post/825956
屋根もドアもない珍車バモスホンダが実は高い実用性を持ち、時代に先駆けた設計思想を採用していたことについて詳しく解説しており、同種車との比較や現在も実働中のバモスホンダについても言及しています。

 

https://motorz.jp/feature/43458/

 

 


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