道路運送法道路運送車両法違い|事業と車両の規定

自動車を運転する上で知っておきたい道路運送法と道路運送車両法。同じような名前でも規定内容や管轄が全く異なる二つの法律を、その違いを中心に解説します。あなたは両者の違いを正しく理解していますか?

道路運送法と道路運送車両法の違い

📋 両法律の基本的な違い
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道路運送法

旅客運送事業や自動車道事業など「運送サービス」を規定

🔧
道路運送車両法

車両の登録・検査・保安基準など「車両そのもの」を規定

⚖️
管轄の違い

道路運送法は国土交通省物流・自動車局、道路運送車両法は国土交通省物流・自動車局がそれぞれ異なる視点で担当

道路運送法と道路運送車両法は、どちらも自動車に関連する重要な法律ですが、規定している内容が大きく異なります。道路運送法は昭和26年6月1日に法律第183号として制定され、タクシーやバスなどの旅客自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし、輸送の安全を確保することを目的としています。一方、道路運送車両法は同じく昭和26年6月1日に法律第185号として制定され、道路運送車両の所有権についての公証、安全性の確保及び公害の防止、整備についての技術の向上を図ることを目的としています。
参考)道路運送車両法とは?道路運送車両法の保安基準や罰則について紹…

両法律の最も大きな違いは、道路運送法が「運送事業」という事業活動を規制するのに対し、道路運送車両法は「車両」という物理的な対象を規制する点にあります。道路運送法は旅客自動車運送事業や自動車道事業など、運送サービスの提供に関する規定を設けており、事業者の許可や運賃、運行管理などを定めています。これに対して道路運送車両法は、自動車の登録制度、保安基準、検査制度、整備事業について規定し、個々の車両が安全基準を満たしているかを確認する仕組みを設けています。
参考)道路運送車両法の概要と保安基準:日本の自動車法律に関する情報

管轄についても両者には違いがあり、道路運送法は国土交通省の物流・自動車局が所管し、運送事業者の監督を行っています。道路運送車両法も同じく国土交通省物流・自動車局が主務官庁ですが、車両の技術基準や検査制度の運用という異なる視点から自動車行政を担当しています。
参考)道路運送車両法 - Wikipedia

道路運送法の目的と旅客運送事業


Q&A 改正道路運送法の解説
道路運送法の主な目的は、道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに、道路運送に関する秩序を確立することにより、道路運送の総合的な発達を図り、公共の福祉を増進することです。この法律は昭和26年に制定され、平成14年には規制緩和により新規参入・退出の自由化が行われ、平成18年には地方公共団体の関与を前提とした内容に一部リニューアルされました。
参考)https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000349888.pdf

道路運送法では、旅客自動車運送事業を「他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送する事業」と定義しています。旅客自動車運送事業は大きく分けて「一般旅客自動車運送事業」と「特定旅客自動車運送事業」の二種類があります。一般旅客自動車運送事業はさらに、路線バスや高速バスなどの「一般乗合旅客自動車運送事業」、観光バスなどの「一般貸切旅客自動車運送事業」、タクシーやハイヤーなどの「一般乗用旅客自動車運送事業」に分類されます。
参考)道路運送法に規定されている特定旅客自動車運送事業とは?許可を…

特定旅客自動車運送事業は、特定の者の需要に応じ、一定の範囲の旅客を運送する事業を指し、予め旅客を特定し、その範囲も決めておく必要があります。運送事業者には法令に基づき様々な安全対策を講じることが求められており、安全・安心な運送サービスの提供が期待されています。
参考)https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000164269.pdf

道路運送車両法の登録制度と検査制度

道路運送車両法は三つの大きな柱によって構築されています。第一は自動車の「登録制度」で、これは所有権の公証を目的とするものですが、検査制度と密接に結合することにより、個々の自動車に関する極めて正確なデータを国が把握することを可能にしています。この登録制度により、自賠責保険契約の締結の確認や自動車税の徴収など、自動車に関する行政面でも不可欠な機能を果たしています。
参考)https://www.jsa.or.jp/datas/media/10000/md_2547.pdf

第二は、自動車を社会における交通用具としてとらえ、これに対して要求される二大基本条件、すなわち「安全性の確保」と「公害の防止」について規定している点です。このため、まず自動車の構造、装置、性能に関する安全及び公害防止上の最低基準として「保安基準」を定め、これに適合しない自動車の運行を禁止しています。
参考)https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/hoan/date/gyousei_jyouhou/2019/7/1.pdf

所有者は、自動車を登録することと、一定の期間ごとに検査を受けることが義務付けられています。検査に合格した自動車には自動車検査証が交付されます。車検とは「自動車検査登録制度」のことであり、車検証と検査標章の付与により、車の所有者が保守管理を適切に行っていることを公的に証明する役割も果たしています。
参考)車検に関する法律とは?法律違反した際の罰則や整備事業について…

道路運送車両法の保安基準の具体的内容

道路運送車両法では、自動車、原動機付自転車、軽車両の保安基準を定めています。保安基準は細目告示によって詳細に規定されており、例えば車両の長さ、幅、高さ、最低地上高、車両総重量、車輪数、エンジンの総排気量などが定められています。​
具体的な基準としては、普通自動車の場合、車両の長さは12m以下、幅は2.5m以下、高さは3.8m以下と規定されています。軽自動車の場合は、車両の長さは5m以下、幅は2m以下、高さは4m以下、最低地上高は15cm以上、車両総重量は3.5t以下、車輪数は4輪以上、エンジンの総排気量は660cc以下とされています。​
これらの基準は、自動車の安全性や道路上の運行に影響を与える重要な要素です。保安基準が設けられている背景には、交通事故や故障、公共の安全への配慮があります。保安基準を満たしていない場合や違反した場合は、罰則が科せられる可能性があります。​

道路運送法と道路運送車両法の規制内容の相違点

道路運送法と道路運送車両法では、同じ自動車に関する規定でも、その視点や規制内容が大きく異なります。例えば車両の長さに関して、道路運送車両法の保安基準では自動車の全長(車長)は12mと定められていますが、道路交通法では自動車の長さの10%を超えたはみ出しを禁止し、他の車両をけん引する場合の全長は25mとされています。​
幅に関しても、道路運送車両法では貨物に関係なく2.5mと定められていますが、道路交通法では貨物の幅は車両の幅を超えないことと規定されています。高さについては、道路運送車両法では車両の高さは3.8mと定められ、道路交通法では貨物積載状態で3.8m(高さ推定道路は4.1m)とされています。​
総重量に関しては、道路運送車両法では自重+乗車定員の体重(一人当たり55kg)+貨物の最大積載量とし、車長や軸距によって20~25tと定められています。一方、道路交通法では具体的な指定はなく、貨物の最大積載量は保安基準に準拠(車検証の記載値)とされています。​
運行に関しても違いがあり、道路運送車両法では保安基準の制限値を超える車両は認定を受ければ基準緩和車両として運行できますが、道路交通法では制限外許可および制限外けん引許可を受けた最大積載量を超える車両は運行できるとされています。​

道路運送車両法違反時の罰則規定

道路運送車両法に違反した場合、法律に規定された罰則が科せられます。代表的な違反として無車検車運行があり、道路運送車両法第58条1項、108条により、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。つまり車検を受けていない自動車(自動二輪車含む)を運行すると、刑罰の対象となるのです。​
刑事処罰を受ける場合、初犯であれば略式裁判による罰金処分で済むことが多いですが、何度も同じ犯行をしている人や無車検の車の使用期間が長い人は、正式裁判になることがあります。また前科があったり執行猶予期間中に同じ犯行をした場合は、実刑判決により刑務所に収容される可能性もあります。​
その他の罰則としては、罰金の課徴、免許停止、仮免許の取消し、講習の受講義務、道路使用禁止、刑事訴追などがあります。これらの罰則は、道路運送車両法の遵守を促すために存在し、適正な運転や交通法の順守は、交通の安全性を確保するために非常に重要です。​
警察や交通機関は、道路運送車両法の遵守を監視し、違反行為に対して適切な対処を行います。罰則の大きさは、違反の内容や程度によって異なりますが、厳正な取り締まりが行われています。違反行為に対する罰則は、交通の安全性と秩序を維持するために欠かせないものです。​
<参考リンク>
国土交通省の道路運送車両法の基本情報については、以下のリンクが参考になります。

 

国土交通省関東運輸局「道路運送法の基礎知識」
道路運送車両法の保安基準の詳細については、以下のリンクが参考になります。

 

国土交通省「道路運送車両の保安基準」