路線バスの定員は、単に座席数だけで決まるのではありません。路線バスにおける乗客定員数は「座席数」と「立って乗車できる定員」の合計から算出されます。立席定員は、バス床面積を0.14㎡で割った整数値として法令で定められており、バスメーカーや各業者の仕様によって異なります。天井握り棒、つり皮、縦握り棒、手すりなどが設けられることで、乗客が安全に立ち乗りできる環境が整備されます。大型路線バスの場合、座席数は25~30席程度であり、残りの45~50人分は立席定員となっています。この特殊な定員計算方式は、高速バスや貸切バスとは大きく異なる特徴です。
朝の通勤ラッシュ時、乗り口の扉がぎゅうぎゅうになるほど満員でも、警察から咎められることはありません。その理由は、路線バスにおける「定員数」があくまで「目安」であり「サービス定員」「旅客定員」と称されるもので、定員数以上を乗せたとしても法律違反にはならないからです。電車などの鉄道でも同じ考え方が適用されています。ただし、運転手は乗客の安全を最優先に考え、乗降口の扉が完全に開かなくなるほど満員になった場合は、「バス内が非常に混雑しておりますので、安全上の配慮から次のバスをお待ちいただけますようお願いします」とアナウンスして、次の停留所では乗せないという判断をします。運転手による安全判断が、実質的な定員制限の役割を果たしているのです。
一般的に、シートベルト着用が義務付けられる高速道路では立ち乗りが認められていません。しかし、西鉄バスが「立ち乗り&シートベルトなし」で福岡都市高速を走行するなど、特例的に基準緩和認定を受けているバス会社があります。この認定を受けるには、都市高速走行区間が運行経路全体の2分の1以下であること、高速内では60km/h以下の速度制限、ABS装着車両であることなど、複数の条件をクリアする必要があります。基準緩和ステッカーを車両前面・後面・運転席に表示し、60km/h以上の速度が出た場合に運転手へ警告する機能が装着されていることも必須です。関東エリアでは東武バスウエスト「新高01」系統が有名で、名古屋や広島でも同様の制度を活用するバス会社があります。
路線バスに子どもを乗車させる場合、12歳未満は「子ども」として扱われます。乗車定員の計算では、大人(12歳以上)1人分=子ども1.5人分として算定されるため、大人2人分の座席に子ども3人が乗車できる計算になります。つまり定員数がオーバーしにくい計算方式が採用されています。ただし注意点として、乗車定員の基準となる「子ども」(12歳未満)は、路線バス運賃における「小児運賃」(小学生)とは一致しません。小児運賃の適用と定員計算ルールは異なる規定に基づいているため、乗客が確認する際は混同しないようにしましょう。
路線バスと貸切バスでは、定員に対する考え方が根本的に異なります。路線バスは限られた区間と時間に乗り降りする特性があるため、定員超過でも法律違反になりません。一方、貸切バスは高速道路を走る可能性があるため、座席数分の人数が定員となり、立ち席はなく、定員オーバーして乗せることはできません。貸切バスは各バス会社によるオーダーメイド製造であり、座席数や内装、装備が自由にカスタマイズされます。大型観光バスの定員は53~60人、中型観光バスは27~28人(補助席なし)、小型マイクロバスは~26人です。中型観光バスが30人未満に抑えられているのは、高速道路料金が30人を超えると大型バス料金になることが理由です。
路線バスの定員について詳しくはバス旅のこちらの記事を参照。座席構成や高速走行時の特例制度も解説されています。
長野電鉄バスの公式FAQで、道路運送車両法に基づいた立席定員の計算方法を確認できます。