自動車検査証記録事項とは、2023年1月から開始された車検証の電子化に伴い新たに導入された書類です。電子車検証はICタグ付きのA6サイズのカード型になり、従来の紙の車検証に記載されていた全ての情報のうち、一部がICタグに格納されるようになりました。
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このICタグ内に記録された詳細情報を紙の書類として出力したものが「自動車検査証記録事項」です。運輸支局の窓口では、電子車検証の交付時と更新時に、この記録事項を補助的な書面として交付しています。
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2023年1月の電子化開始から少なくとも3年間は、この記録事項が補助資料として配布される予定となっています。軽自動車については2024年1月から電子化が開始されました。
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自動車検査証(車検証)と自動車検査証記録事項には、法的な位置づけに決定的な違いがあります。最も重要な違いは車両搭載義務の有無です。
車検証は道路運送車両法第66条により、車両運行時に必ず搭載することが義務付けられています。不携帯の場合は50万円以下の罰金が科される可能性があります。一方、自動車検査証記録事項には車両への搭載義務はありません。
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公的書類としての効力も大きく異なります。車検証は車両が保安基準に適合していることを証明する公的書類であり、名義変更、廃車、車検などあらゆる手続きで原本の提出が求められます。しかし自動車検査証記録事項はあくまで車検証の「補助資料」であり、各種手続きにおいて車検証の代用にはなりません。
法律上は携帯義務がないため、車内に常時保管する必要はありませんが、車検証と一緒に保管しておくと将来の車検や問題発生時に役立つことがあります。
自動車検査証記録事項には、電子車検証のICタグに格納されている詳細情報が記載されています。具体的には以下の情報が含まれます。
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従来の紙の車検証では、これらの情報が券面に記載されていました。しかし電子車検証では、プライバシー保護の観点から、所有者の氏名や住所などの個人情報はICタグに格納されており、他人が電子車検証を見ただけでは分からない仕組みになっています。
電子車検証の券面には、自動車登録番号、車台番号、車名、型式など、継続検査や変更登録などの影響を受けない基礎的情報のみが記載されています。ICタグに格納された情報を確認するには、車検証閲覧アプリや自動車検査証記録事項が必要です。
参考)2023年1月 車検証が電子化
国土交通省の電子車検証に関する公式情報
電子車検証制度の詳細や最新の運用状況について確認できます。
自動車検査証記録事項の入手方法は、主に運輸支局の窓口での交付となります。電子車検証の新規交付時や継続検査(車検)の際に、補助書類として自動的に交付されます。
一方、ICタグに格納された情報を自分で確認したい場合は、車検証閲覧アプリを利用する方法があります。このアプリはスマートフォンやPCにダウンロードして使用します。youtube
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スマートフォンでの閲覧方法は以下の通りです。youtube
アプリの動作環境は、iOS 16・17(iPadは不可)、またはAndroid 11~14(NFC対応機種)となっています。PCで利用する場合は、Windows 10バージョン22H2(64bit版)またはWindows 11バージョン22H2・23H2が必要です。
読み取った情報はPDF形式でダウンロードすることも可能です。ただし、アプリを利用するにはMicrosoftアカウントの作成やアプリのインストールなど、閲覧環境を準備する手間がかかる点がデメリットといえます。
参考)スマホで自動車検査証記録事項のPDFをダウンロードする方法・…
車検証閲覧アプリの公式ダウンロードページ
電子車検証の情報を確認するための公式アプリをダウンロードできます。
電子車検証の導入には、さまざまなメリットとデメリットがあります。最大のメリットは、車検証のサイズがA4からA6相当に小型化されたことです。従来の約4分の1のサイズになり、グローブボックスでの保管がコンパクトになりました。
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また、継続検査時にオンラインで手続きができるようになり、運輸支局への出頭が一部不要になりました。整備事業者の事業所などで車検証の有効期間が更新できるため、車検の時間短縮につながります。
プライバシー保護の面でも、所有者の氏名や住所などの個人情報がICタグに格納され、券面には表示されないため、他人に見られても個人情報が漏れにくくなりました。
一方でデメリットもあります。最大の課題は、更新時または交付対象となる手続きでしか電子化できない点です。現在紙の車検証を持っている場合、次回の継続車検時まで電子車検証に切り替えることはできません。
また、ICタグに格納された情報を閲覧するには専用アプリが必要で、対応するデバイスや動作環境を準備する手間がかかります。アプリの利用にはMicrosoftアカウントの作成やNFC対応スマートフォンが必要など、高齢者や機械に不慣れな方には利用のハードルが高い可能性があります。
さらに、車検証閲覧アプリは定期的にアップデートが必要で、古いバージョンでは正しく情報を読み取れない場合があります。2025年以降もアップデートを怠ると、ICタグの情報を確認できなくなるリスクがあります。
参考)【電子車検証】車検証閲覧アプリはアップデートしないと、202…
電子車検証でも、引越しによる住所変更や売買・譲渡による名義変更の手続きは必要です。これらの手続きには、自動車検査証記録事項ではなく、電子車検証の原本が必要となります。
参考)車検証の住所・氏名を変更するためには|国土交通省
住所変更の手続きは、オンラインと窓口の両方で可能です。オンラインで手続きする場合は、自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)を利用します。OSSでは以下の3つの手続きをセットで行います。
参考)オンラインで車検証の住所変更する方法|ワンストップサービスO…
オンライン申請にはマイナンバーカードか電子証明書が必要で、カードの読み取りができるICカードリーダーも準備する必要があります。申請完了後、保管場所標章や新しい車検証は自宅まで郵送されます。
名義変更の手続きも同様に、電子車検証の原本が必要です。タクシーやレンタカー、共同所有者がいる場合はOSSが利用できないため、運輸支局の窓口で手続きする必要があります。
参考)車検証の名前変更の手続きとは?必要書類や手続きの流れを解説|…
これらの手続きを行うと、新たな電子車検証が交付され、同時に新しい自動車検査証記録事項も交付されます。古い記録事項は廃棄しても問題ありませんが、履歴として保管しておくと後々の参考になることがあります。
自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)
車検証の住所変更や名義変更をオンラインで行うための公式サイトです。