2025年は道路交通法施行規則の改正が複数実施される重要な年です。自動車業界や交通環境に大きな影響を与える法改正が段階的に施行されるため、ドライバーは改正内容を正確に理解し、適切な対応を取る必要があります。
改正の背景には、少子高齢化による「2025年問題」があり、団塊の世代が75歳以上となることで、医療・介護の需要急増、労働力不足、社会保障費増大といった課題が浮き彫りになっています。自動車業界でも人手不足と高齢化は喫緊の課題であり、現代の働き方や生活環境に沿ったルールづくりが求められています。
特に注目すべき改正は、2025年4月1日から施行される新基準原付の導入、2026年4月に予定される自転車の青切符制度の導入、そして2025年10月1日から厳格化される高齢者の運転技能検査です。これらの改正により、交通安全対策が一層強化され、ドライバーや自転車利用者には新たな義務と責任が課されることになります。
参考)交通法改正2025年がもたらすドライバーへの影響 - アルコ…
新基準原付は、2025年4月1日から施行される制度で、排気量125cc以下かつ最高出力4kW(約5.4馬力)以下に制限された二輪車を、原付免許で運転できるようにする画期的な改正です。これまで原付免許で運転できたのは排気量50cc以下の原付のみでしたが、法改正により運転可能な範囲が大幅に拡大されます。
この改正の最大の背景は、2025年11月1日から適用される第4次排出ガス規制です。新しい排ガス規制は、ヨーロッパのEURO5と同等の世界でもトップクラスの厳格さを誇り、現在生産されている50cc原付では規制をクリアできません。開発費用に見合う事業性の見通しが立たないため、ホンダ、スズキ、ヤマハの国内3社は、50cc原付の生産を2025年11月を目処に終了する予定です。
参考)【これが正解】勘違いが多い「新基準原付」を詳しく解説
全国オートバイ協同組合連合会によると、二輪車保有台数約1,030万台のうち、原付一種は約433万台と全体の4割を超えており、日常生活の足として利用している人が多数存在します。原付がなくなると利用者が困ってしまうため、警察庁、国土交通省、経済産業省と国内二輪メーカーが議論を重ねた結果、新基準原付という区分が誕生しました。
新基準原付の交通ルールは、従来の原付一種と同じです。法定速度は30km/h、二段階右折が必要、二人乗り禁止、高速道路や自動車専用道路の通行禁止といった制限が適用されます。ナンバープレートは白色とし、出力制限がない125cc以下の原付二種(ピンクナンバー)と区別されます。
2026年4月1日から、自転車の交通違反に対して交通反則通告制度(青切符)が導入されます。これは、16歳以上の自転車利用者を対象とした制度で、比較的軽微な交通違反について反則金を納付すれば、刑事罰が科されないというものです。
参考)自転車への「青切符」導入は2026年4月から 同時にクルマに…
対象となる違反は113項目にのぼり、反則金は違反内容によって3,000円から12,000円まで設定されています。例えば、スマートフォンや携帯電話の使用(ながら運転)は12,000円、信号無視や車道の右側通行、歩道通行は6,000円、一時不停止や傘差し運転は5,000円、並進運転や2人乗りは3,000円の反則金が科されます。
この制度導入の背景には、自転車関連の交通事故発生件数が高い水準で推移していることがあります。全交通事故に占める自転車関連事故の構成比や自転車対歩行者の事故件数は増加傾向にあり、自転車乗車中の死亡・重傷事故の多くは自転車側にも法令違反があることが判明しています。
参考)兵庫県警察 自転車の交通違反に青切符導入
警察では自転車による交通事故を抑止するため、違反の取り締まりを強化しており、検挙件数は増加しています。青切符の導入は、手続きを簡易迅速に処理し、違反者と警察の時間的手続的な負担を軽減することで、実効性のある違反処理を行うための制度です。なお、酒酔い運転や酒気帯び運転など特に悪質な違反に対しては、これまでどおり赤切符が交付され、刑事罰の対象となります。
2025年10月1日から、75歳以上の高齢者を対象とした運転免許更新時の知識確認および技能確認が大幅に厳格化されます。これは、高齢ドライバーの安全運転能力を適切に評価し、交通事故を防止するための重要な改正です。
参考)https://www.npa.go.jp/news/release/2025/20250711_kouhoushiryou.pdf
知識確認については、これまでイラスト問題10問で審査基準が70%以上だったものが、イラスト問題を廃止し、問題数を50問に増やし、審査基準を新規免許取得時と同様の90%以上に引き上げられます。また、運転に必要な技能の確認についても、横断歩道の通過等の課題が追加されるとともに、合図不履行や右左折方法違反等の採点が厳格化され、新規免許取得時と同等の基準が適用されます。
2022年5月13日からすでに導入されている運転技能検査制度では、過去3年に一定の違反行為がある75歳以上のドライバーは、免許更新時に実車試験に合格する必要があります。一定の違反行為には、信号無視、通行区分違反、速度超過、横断歩行者妨害、安全運転義務違反、携帯電話使用など11種類が含まれます。
参考)改正道交法施行「高齢運転者を対象とした免許更新時の運転技能検…
運転技能検査は、自動車教習所などのコースで指示速度での走行、一時停止、右折・左折、信号通過などの課題を行い、100点満点から減点方式で採点され、第一種免許は70点以上、第二種免許は80点以上で合格となります。検査手数料は3,550円で、更新期間満了日までなら何度でも受検可能です。不合格の場合は運転免許証の更新ができませんが、原付免許や小型特殊免許の継続は可能です。
参考)ドライバーは要チェック。75歳以上の免許更新が今年から変更に
新基準原付を運転する際の最大の注意点は、排気量125cc以下のすべてのバイクが原付免許で運転できるわけではないということです。最高出力4kW以下に制限されたモデルのみが対象であり、最高出力の制限がない125ccバイクを原付免許で運転すると無免許運転となり、免許取消などの厳しい罰則が科されます。違反点数25点、免許取消(欠格期間2年)の行政処分、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があるため、購入時には必ず最高出力の確認が必要です。
自転車の青切符制度では、歩道通行も6,000円の反則金対象となることに注意が必要です。自転車は原則として車道を走行するのがルールですが、歩道を走行できる例外的なケースもあります。それは「自転車通行可」の標識がある歩道、13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体に障害がある人が運転する場合、車道や交通状況からやむを得ない場合です。しかし、これらの例外に該当しない場合は取り締まりの対象となるため、注意が必要です。
高齢者の運転免許更新では、更新手続きには時間がかかるため、余裕を持った準備が重要です。75歳以上の方は、免許の有効期間満了日の前6か月以内に認知機能検査と高齢者講習の予約と受講を済ませておく必要があります。一定の違反行為がある場合は、運転技能検査の予約も必要となります。これらの手続きは事前予約が必要で、運転免許センターや自動車教習所で受検・受講できますが、混雑することもあるため早めの予約が推奨されます。
参考)高齢運転者の免許更新制度について/神奈川県警察
2025年の道路交通法施行規則改正は、段階的に施行されます。最も早いのは2025年3月24日に開始されたマイナンバーカードと運転免許証の一体化(マイナ免許証)で、希望者は免許取得時や更新時に申請することで利用できます。
2025年4月1日には、新基準原付の導入と普通MT免許のカリキュラム変更、車検を受けられる期間の延長(1カ月前から2カ月前へ)、軽貨物自動車安全管理者の選任と講習受講の義務化が施行されます。新基準原付対応の車両は、ホンダとヤマハが2025年11月にも販売を開始する予定で、スーパーカブ110やビジョン110、ジョグ125などが有力候補として挙げられています。
2025年10月1日には、75歳以上の高齢者を対象とした知識確認および技能確認の厳格化が開始されます。この日以降に免許更新を迎える75歳以上のドライバーは、新しい基準での検査を受けることになるため、事前に試験内容を確認し、十分な準備をしておくことが推奨されます。
2026年4月1日には、自転車の青切符制度が全国で施行される予定です。施行まで約半年となっており、自転車利用者は交通ルールを再確認し、違反行為をしないよう注意することが求められます。警察による取り締まりが本格化すると予想されるため、信号無視、ながら運転、一時不停止などの違反行為には特に注意が必要です。
警察庁の公式サイトでは、道路交通法改正に関する最新情報や詳細な手続き方法が公開されています。
道路交通法等の改正 - 警察庁
道路交通法改正の全体像や施行日程、各種手続きについて詳細に解説されている公式情報源です。
運転技能検査について - 警察庁
高齢者の運転技能検査の対象者、検査内容、受検方法について具体的に説明されています。