信号無視の過失割合は損害賠償と違反点数にどう影響するか

信号無視による交通事故では、過失割合が損害賠償額を大きく左右します。赤信号無視だけでなく、双方が違反した場合や歩行者との事故ではどうなるのでしょうか?

信号無視の過失割合

信号無視事故の基本構造
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過失割合の決定方法

事故当事者双方の信号機の色と状況から、別冊判例タイムズに基づき基本割合を算定します

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損害賠償への影響

被害者の過失割合分だけ損害賠償金が減額される過失相殺が適用されます

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修正要素の考慮

速度違反や夜間、歩行者の年齢などの要因で基本割合が加算・減算されます

信号無視による交通事故の過失割合は、事故の責任が当事者双方にどれだけあるかを数字で示すもので、損害賠償額に直接影響します。たとえば被害者の過失割合が20%の場合、損害賠償金の20%が減額されるため、過失割合の正確な算定は極めて重要です。信号無視をした側が必ずしも過失割合100%とならないケースも存在するため、事故状況を詳細に確認する必要があります。
参考)https://www.sbisonpo.co.jp/car/column/column87.html

過失割合は別冊判例タイムズ38に記載された基準をもとに、事故発生時の信号機の色や交差点での行動パターンから算定されます。この基準は過去の判例を体系化したもので、保険会社との示談交渉でも広く使用されています。ただし、基本的な過失割合に対して、速度違反や徐行なし、被害者が子供であるなどの修正要素が加算・減算され、最終的な過失割合が決定されます。
参考)信号無視による交通事故の過失割合と違反点数・反則金を解説

信号無視による事故では、被害者側にも一定の過失が認められるケースが多く、完全な10対0になる事例は限定的です。これは交通事故において、双方のドライバーに一定の注意義務が課されているためで、青信号側であっても前方不注意などが認められる場合があります。そのため、事故後は早期にドライブレコーダーの映像や目撃者の証言などの客観的証拠を収集することが推奨されます。
参考)赤信号無視による交通事故の過失割合|交通事故解決

信号無視の直進車同士の過失割合

 

交差点における直進車同士の出会い頭事故では、それぞれの信号機の色によって過失割合が大きく異なります。青信号で進入した車両と赤信号無視の車両が衝突した場合、基本的な過失割合は0対10となり、赤信号無視側に全責任が認められます。この場合、青信号側のドライバーは信号に従って適切に運転していたと判断されるためです。​
黄信号で進入した車両と赤信号無視の車両の事故では、過失割合は2対8(黄信号側:赤信号側)となります。黄信号は原則として停止すべき信号であるため、黄信号側にも一定の過失が認められます。ただし、黄信号に変わる直前で安全に停止できない場合は進行が認められるため、赤信号無視側の過失が依然として大きくなります。​
双方が赤信号を無視した場合、過失割合は5対5となり、双方に同等の責任が認められます。このケースでは相互に重大な交通違反を犯しているため、どちらか一方に責任を偏らせることができません。また、青信号で交差点に入った後に先行車の渋滞などで赤信号に変わってしまった場合、過失割合は3対7(青信号進入側:赤信号側)となり、交差点内に残った側にも一定の過失が認められます。​

信号無視の右折車と直進車の過失割合

交差点における右折車と対向直進車の事故では、信号機の色の組み合わせによって過失割合が複雑に変化します。青信号で右折しようとした車両と赤信号無視の直進車が衝突した場合、過失割合は0対10(右折車:直進車)となり、赤信号無視側に全責任があります。右折車は青信号に従って適切に右折動作を開始していたため、赤信号無視の直進車の責任が100%となります。​
青信号の右折車と青信号の直進車が衝突した場合、過失割合は8対2(右折車:直進車)となります。これは右折車に直進車の通行を妨げない注意義務があるためで、たとえ双方が青信号であっても右折車の責任が重くなります。一方、青信号の右折車と黄信号の直進車の事故では、過失割合は3対7(右折車:直進車)となり、黄信号で進入した直進車の過失が大きく認められます。​
黄信号の右折車と黄信号の直進車が衝突した場合、過失割合は6対4(右折車:直進車)となります。双方が黄信号で交差点に進入している状況でも、右折車の注意義務が重いため右折車側の過失が大きくなります。また、双方が赤信号を無視した場合は5対5となり、直進車同士の場合と同様に同等の責任が認められます。右折車が青信号で交差点に入った後、対向車や歩行者を待つ間に信号が変わった場合の特殊なケースでは、過失割合が調整されます。​

信号無視と自動車・バイクの過失割合

自動車とバイクの交差点事故では、優者危険負担の原則により、自動車側の過失割合が同条件の自動車同士の事故よりも重くなる傾向があります。青信号で進行する自動車と赤信号無視のバイクが衝突した場合、過失割合は0対10(自動車:バイク)となり、赤信号無視側のバイクに全責任があります。これは自動車同士の事故と同様の基準です。​
黄信号の自動車と赤信号無視のバイクの事故では、過失割合は3対7(自動車:バイク)となります。自動車同士の事故では2対8であったのに対し、自動車側の過失が1割増加しています。これは、バイクが自動車よりも脆弱な交通弱者とみなされ、自動車側により高い注意義務が課されるためです。​
双方が赤信号を無視した場合、過失割合は6対4(自動車:バイク)となり、自動車側の過失が重くなります。自動車同士の事故では5対5であったのに対し、自動車側に1割加算されています。さらに、赤信号無視の自動車と黄信号のバイクの事故では9対1(自動車:バイク)、赤信号無視の自動車と青信号のバイクの事故では10対0(自動車:バイク)となり、自動車側の責任が極めて重くなります。優者危険負担の原則は、交通弱者保護の観点から、より大きく頑丈な車両を運転する側に重い注意義務を課すものです。​

信号無視と歩行者の過失割合

歩行者が信号無視をして横断歩道を渡り、車両と衝突した場合でも、歩行者の過失割合は100%にはならず、車両側にも一定の過失が認められます。赤信号で横断を開始した歩行者と青信号で直進してきた車両の事故では、基本的な過失割合は7対3(歩行者:自動車)となります。これは日本の交通法規が歩行者優先の原則を採用しており、自動車には前方注意義務や適切なブレーキ操作をする義務があるためです。
参考)歩行者の信号無視が原因の事故|過失割合はどうなる?

歩行者が赤信号で横断し、右折車と接触した場合、過失割合は5対5(歩行者:自動車)となります。右折車は交差点上で方向転換するため、歩行者の存在を確認しやすい状況にあると判断され、直進車よりも高い注意義務が課されます。また、歩行者が赤信号で横断し、車両が黄信号の場合、過失割合は5対5(歩行者:自動車)となり、双方の違反が同程度と評価されます。​
歩行者が児童や高齢者である場合、過失割合は修正され、自動車4対歩行者6となります。さらに幼児や身体障がい者の場合は自動車5対歩行者5となり、歩行者保護の観点から自動車側の過失が増加します。また、車両が速度違反をしていた場合や、事故が深夜・雨天などの視界不良下で発生した場合、車両側により高い注意義務が求められるため、歩行者の過失割合が低く修正されます。横断歩道外を横断した歩行者と青信号の自動車の事故では、過失割合は2対8(歩行者:自動車)となり、横断歩道外という要素が歩行者の過失を増加させます。
参考)歩行者の信号無視が原因の交通事故|過失割合はどうなる?

信号無視の過失割合が損害賠償に与える影響

過失割合は損害賠償額に直接影響し、被害者の過失割合分だけ損害賠償金が減額される過失相殺が適用されます。たとえば被害者の損害額が1,000万円で過失割合が1対9(被害者:加害者)の場合、被害者が受け取れる金額は被害者の過失分にあたる100万円を減額した900万円となります。このように過失割合は賠償額を大きく左右するため、示談交渉では慎重に取り決める必要があります。
参考)信号無視の事故の慰謝料はいくら?ケースごとの過失割合と基準を…

死亡事故の場合、過失割合による減額の影響はさらに大きくなります。死亡慰謝料が2,000万円のケースで被害者の過失が20%の場合、400万円が減額され1,600万円となります。被害者の過失が50%の場合は1,000万円が減額され、受け取れる慰謝料は半額の1,000万円となります。加害者が信号無視していても、被害者も信号無視していた場合など、被害者に過失が認められれば慰謝料は大きく減額されます。​
過失割合が10対0の事故では、被害者側の損害保険会社が示談交渉を代行できないという特殊な問題が発生します。これは弁護士法72条により、利害関係のない者が報酬を得て法律事務を行うことが禁止されているためです。被害者の過失が0の場合、被害者側保険会社には支払い義務がなく利害関係がないため、示談交渉を代行できません。そのため、被害者自身が加害者側の保険会社と交渉するか、弁護士に依頼する必要があります。
参考)信号無視で事故した場合の過失割合について

保険会社から提示される慰謝料は、基本的に怪我の内容や治療期間・日数などによって決まるため、「信号無視があったから」という理由で慰謝料が自動的に増額されるわけではありません。慰謝料額は過失割合によって減額されるため、適切な過失割合を主張することが重要です。過失割合に納得できない場合は、客観的証拠を提示して交渉するか、弁護士に相談することが推奨されます。
参考)信号無視による事故の過失割合は10対0になる?ケースごとの過…

信号無視の証拠収集と過失割合の立証方法

過失割合で争いが生じた場合、客観的証拠を示す必要があるため、早めに証拠を集めておくことが重要です。信号無視の証明に最も有効なのはドライブレコーダーの映像で、信号機の色やその他の事故態様を証明する決定的な証拠となります。ドライブレコーダーは一定期間経過すると映像が上書きされるため、事故後すぐに保存しておく必要があります。
参考)信号無視の車にぶつかった被害者に知って欲しい過失割合の問題

ドライブレコーダーの普及により、交通事故の交渉や裁判において映像が大きな影響を与えるようになりました。以前は事故発生状況を記録した証拠がなく、事故後の状況から推認するしかありませんでしたが、現在は事故発生当時の映像を検証できるため、相手方が信号無視をしていたことの証明が容易になりました。加害者側のドライブレコーダーについては、相手方保険会社に開示を請求することで応じてもらえる場合がありますが、開示は任意のため強制はできません。
参考)信号無視が原因の交通事故での証拠~相手の信号無視を証明する方…

防犯カメラの映像や目撃者の証言も重要な証拠となります。交差点付近の店舗や施設に設置された防犯カメラに事故の様子が記録されている可能性があるため、早期に確認し保存を依頼することが推奨されます。また、事故を目撃した第三者がいる場合、その証言は客観的な証拠として有効です。​
実況見分調書や供述調書、信号サイクル表も過失割合の立証に役立ちます。実況見分調書は警察が事故現場で作成する記録で、事故の状況や当事者の主張が記載されています。信号サイクル表は信号機の色が変わるタイミングを示すもので、事故発生時の信号機の色を推定する際に使用されます。これらの証拠を総合的に活用することで、適切な過失割合を主張できます。​

信号無視の違反点数と反則金

信号無視をした場合、過失割合とは別に、道路交通法違反として違反点数と反則金が科されます。赤信号無視の場合、違反点数は2点が加算され、普通車の反則金は9,000円となります。酒気帯び運転で信号無視をした場合は14点、酒酔い運転で信号無視をした場合は25点が加算され、極めて重い処分となります。
参考)交通違反の罰金は?反則金や違反点数の仕組みも詳しく解説

点滅信号を無視した場合も違反点数は2点ですが、反則金は普通車で7,000円と赤信号無視よりも低く設定されています。点滅信号は赤信号ほど絶対的な停止義務がないため、反則金に差が設けられています。大型車の場合、赤信号無視の反則金は12,000円、点滅信号無視の反則金は9,000円となります。
参考)信号無視の違反点数や罰金とは?ケースに応じた罰則を解説!

過去3年間の累積違反点数が15点以上になると、前歴がない場合でも免許取消の処分を受けます。信号無視は2点の加算ですが、他の違反と組み合わさることで累積点数が増加し、免許停止や免許取消に至る可能性があります。また、信号無視が原因で人身事故を起こした場合、自動車運転過失致死傷罪として刑事責任を問われ、禁錮刑などのより重い処罰を受ける可能性があります。
参考)加害者の嘘、ずさん捜査、保険金払い渋り、SNS中傷… 裁判官…

信号無視による違反点数や反則金は、あくまで行政処分と刑事処分に関わるもので、民事上の損害賠償とは別の問題です。そのため、信号無視をした側は、違反点数・反則金の支払いに加えて、被害者への損害賠償も行う必要があります。​
警視庁の反則行為の種別及び反則金一覧表では、車両の種類ごとに反則金が細かく設定されています
警視庁「反則行為の種別及び反則金一覧表」

信号無視の過失割合で弁護士に相談すべきケース

信号無視による事故で過失割合に争いが生じた場合、早めに弁護士に相談することが推奨されます。特に加害者側の保険会社が提示する過失割合に納得できない場合や、客観的証拠があるにもかかわらず適切に評価されない場合は、弁護士の専門的な知識が必要です。弁護士は過去の判例や類似事例を参考に、より適切な過失割合を主張できます。
参考)信号無視の事故の過失割合は10対0とは限らない?違反点数や反…

過失割合が10対0の事故では、被害者側の保険会社が示談交渉を代行できないため、被害者自身が加害者側の保険会社と直接交渉する必要があります。保険会社は交渉の専門家であるため、一般の被害者が対等に交渉することは困難です。このような場合、弁護士に依頼することで、専門的な知識と交渉技術を活用して適切な損害賠償額を獲得できます。
参考)過失割合10対0になる事故と示談交渉における注意点

損害賠償額が高額になる場合や、後遺障害が残る場合、死亡事故の場合など、過失割合のわずかな違いが賠償額に大きく影響するケースでは、弁護士への相談が特に重要です。過失割合が1割違うだけで数百万円の差が生じることもあるため、専門家の助言を受けることが推奨されます。また、弁護士費用特約に加入している場合、自己負担なく弁護士に依頼できるため、積極的に活用すべきです。
参考)信号無視と過失割合|交通事故に強い弁護士なら東京の【弁護士法…

信号無視の証拠が不十分な場合や、双方の主張が食い違う場合も、弁護士に相談することで適切な証拠収集の方法や交渉戦略を立てることができます。弁護士は実況見分調書の取り寄せや、防犯カメラ映像の保存依頼、目撃者の証言収集など、専門的な手続きをサポートします。交通事故の解決実績が豊富な弁護士に依頼することで、より有利な結果を得られる可能性が高まります。​

 

 


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