ビターボ搭載のベンツを買っても、実は維持費が年間100万円を超えることがある。
「BITURBO」というエンブレムをベンツのフェンダーやトランクリッドで見かけたことがある方も多いでしょう。この言葉は「bi(2つの)+turbo(ターボチャージャー)」を組み合わせた造語で、つまりは2基のターボチャージャーを搭載するエンジンを意味します。日本語では「ツインターボ」と同義として使われることがほとんどです。
ターボチャージャーとは、エンジンの排気ガスを利用してタービンを回し、より多くの空気をエンジンへ強制的に送り込む「過給機」の一種です。空気を多く送れるほど燃料も多く燃やせるため、エンジンの出力が大幅に向上します。シングルターボ(1基)では高回転域でのパワーは稼げますが、低回転域では「ターボラグ」と呼ばれる反応の遅れが生じるのが弱点でした。
これを解消するのがビターボです。2基のターボを使うことで、低回転から高回転まで途切れなく過給し続けることが可能になります。つまり、アクセルを踏んだ瞬間から力強い加速を体感できる、というわけです。
メルセデス・ベンツでは、主に2種類の方式が採用されています。一つは「パラレル(並列)ターボ方式」で、2基のターボが同時に稼働して均等に空気を送り込みます。もう一つは「シーケンシャルターボ方式」で、低回転域では小さいターボが先に動いてレスポンスを確保し、高回転域では大きいターボが加わってパワーを引き出します。
これが基本です。
AMGの代表的な4.0L V8 biturboエンジン(内部コード:M177)は、このパラレル方式を採用しており、Vバンクの内側にターボを配置する「ホットインサイドV」レイアウトが特徴的です。このレイアウトにより排気経路が短縮され、ターボの反応速度がさらに速まるという設計上の工夫が凝らされています。AMG E63 Sでは612PS・850Nm、AMG GT Rでは585PSといった圧倒的な出力を誇る一方、気筒休止システムも内蔵して燃費性能も追求しています。
メルセデス・ベンツ公式のAMGエンジン技術についてはこちらも参考になります。
Mercedes-AMG 公式サイト(メルセデス・ベンツ日本)
ビターボエンジンはAMGの専売特許ではなく、標準グレードのベンツにも搭載されているモデルがあります。ここでは代表的な車種をエンジン別に整理して紹介します。
まず最も話題になることが多い4.0L V8 biturbo搭載モデルとして、以下の車種が挙げられます。
| モデル名 | 最高出力 | 最大トルク | 0→100km/h |
|---|---|---|---|
| AMG E63 S 4MATIC+ | 612PS | 850Nm | 3.4秒 |
| AMG C63 S(W205) | 510PS | 700Nm | 4.0秒 |
| AMG S63 | 585PS | 900Nm | 3.5秒 |
| AMG G63 | 585PS | 850Nm | 4.5秒 |
| AMG GT R | 585PS | 700Nm | 3.6秒 |
AMG E63 Sは特に「日常でも乗れるスーパーセダン」として有名です。612PSというのは、東京ドームの外野席からホームベースまでの距離(約130m)を、わずか3.4秒で走り抜けてしまうほどの加速力に相当します。驚異的な数字です。
次に直列6気筒 biturbo(M256)搭載モデルとして注目されるのが、S580やE450などに採用されている3.0L 直6エンジンです。最高出力503PSを誇り、48VマイルドハイブリッドシステムのEQブーストと組み合わせることで、低回転域のレスポンスを大幅に高めています。AMGというよりも「高性能な標準グレード」に位置する存在ですが、ビターボの恩恵をより日常的に活かせるモデルです。
さらに希少なV12 biturbo(M279)搭載モデルも存在します。S65 AMGに搭載されていた6.0L V12 biturboは、最高出力630PS・最大トルク1000Nmという圧倒的なスペックで、ラグジュアリーカーの究極形として語り継がれています。ただし現行販売は終了しており、今後V12搭載車の登場は難しい状況です。
これは使えそうです。
なお2024年以降、新型C63 AMGはV8 biturboからPHEVとなり、2.0L直4 biturbo+電気モーターの組み合わせで680PSを発揮する新世代へと進化しています。biturboの進化はエンジンだけでなく、電動化との融合にまで広がっている点は覚えておくといいでしょう。
「ビターボ=燃費が悪い」とイメージする方は多いですが、実際のところはモデルによって大きく差があります。
カタログ燃費と実燃費のギャップが特に大きいのがAMGモデルの特徴で、AMG E63 S(4.0L V8 biturbo)の場合、カタログ値(WLTC)は10.2km/L前後ですが、市街地での実燃費は4〜5km/L程度にとどまることも珍しくありません。高速道路走行が多い場合でも7〜8km/L程度が現実的な目安です。
具体的に年間ガソリン代を試算してみましょう。
- 年間走行距離:1万km
- 実燃費:5km/L(市街地メイン)
- ハイオクガソリン単価:180円/L(2026年3月時点の目安)
$$\text{年間ガソリン代} = \frac{10,000 \text{km}}{5 \text{km/L}} \times 180 \text{円} = 360,000 \text{円}$$
ガソリン代だけで年間36万円です。
実燃費が7km/Lまで改善した場合(高速多め)でも、年間約26万円かかります。また、AMGモデルは全車ハイオク指定のため、レギュラー指定の車と比べてガソリン単価そのものも高くなります。ハイオクとレギュラーの価格差は1L当たり10〜15円が一般的ですので、年間1万km走行なら2〜3万円分の追加コストがかかる計算です。
少し意外かもしれませんが、気筒休止システムを搭載したAMG E63 Sは、高速巡航時に8気筒から4気筒に自動で切り替え、燃費を補う工夫が施されています。実際に高速道路中心の走行であれば8〜9km/L台を記録するオーナーも存在しています。
ただし、街中での信号待ちや渋滞が多い都心部での走行が中心なら、燃費の恩恵はほぼ受けられません。購入前に自分のライフスタイルと走行環境を確認するのが大切です。
AMGの実燃費や維持費についてのリアルな口コミはこちらが参考になります。
ガソリン代だけでも年間36万円かかる可能性があることはわかりました。では、それ以外の維持費はどうでしょうか。AMG V8 biturboモデル(E63 S・C63 Sなど)を所有した場合にかかる主な年間費用を項目ごとに整理します。
① 自動車税
エンジン排気量によって税額が決まります。4.0L V8 biturboの場合、排気量4,000ccに相当するため年間の自動車税は88,000円(2019年10月1日以降登録)です。これはトヨタのアクアやヤリスの年間自動車税(25,000〜30,000円)と比べると約3倍以上の差があります。
② 任意保険
AMGモデルは車両価格が高く、修理コストが高額なため保険料率も高めです。車両保険を付帯した場合、年間15〜30万円程度が一般的な相場です。等級や年齢によって差はあります。
③ タイヤ交換費用
AMGのV8 biturboモデルは大径ホイール(19〜21インチ)に対応した高性能タイヤを装着しています。タイヤ1本のサイズは「265/35R19」や「295/30R20」といった大型サイズで、1本当たり4〜6万円が相場です。4本交換すると16〜24万円以上になることも。
④ ブレーキパッド・ローター
AMGのブレーキシステムは大型の高性能品が採用されています。ブレーキパッドの交換はフロントだけでも3〜5万円、ローターとセットになると10万円以上になる場合があります。年間走行量が多い方ほど交換サイクルが早まります。
⑤ エンジンオイル交換
AMGエンジンには高性能な専用オイルが必要で、ディーラーでの交換費用は1回あたり2〜4万円程度かかります。これを年に2回行う場合、年間4〜8万円のコストです。
これらを合計すると、年間維持費の概算は以下の通りです。
| 費用項目 | 年間目安(円) |
|---|---|
| 自動車税 | 88,000 |
| 自動車重量税(車検時) | 約20,000〜30,000 |
| 任意保険(車両保険あり) | 150,000〜300,000 |
| ガソリン代(1万km・実燃費5km/L) | 360,000 |
| タイヤ交換(2〜3年に1度として按分) | 80,000〜120,000 |
| エンジンオイル交換 | 40,000〜80,000 |
| ブレーキパッド・その他消耗品 | 50,000〜150,000 |
| 合計(概算) | 約77〜115万円 |
駐車場代やローン返済を除いて年間100万円前後の維持費がかかる計算です。痛いですね。
ただし、あくまで目安であり、走り方・保険内容・整備のタイミングなどによって大きく変動します。新車購入時に適用される「メルセデス・ケア」(新車登録から3年間のメンテナンス保証)の期間内であれば、一部のメンテナンス費用が無料でカバーされます。維持費を事前に正確に見積もりたい場合は、購入予定のディーラーに「年間維持費シミュレーション」を依頼するのが確実な方法です。
ビターボ搭載のAMGベンツは、新車価格が1,200〜2,000万円以上というモデルが多く、中古市場でも高額取引されるイメージがあります。しかし実際のリセールバリューは、車種によって大きく異なります。
メルセデス・ベンツ全体のリセール傾向を見ると、Gクラスやコンパクト系SUV(GLAクラス・GLBクラス)が高い残価率を誇る一方で、AMGセダン系(E63 S・C63など)は残価率が比較的低い傾向があります。これはスポーツカー的なキャラクターのモデルが「使い倒される」リスクが高いとみなされるためです。
新車から5年経過したAMG E63 Sの中古相場は、走行距離や状態次第ですが500〜900万円台が目安です。新車価格が1,500〜1,600万円だった場合、5年で約半額以下になることも珍しくありません。つまり、中古購入であれば同じモデルをかなり割安に手に入れられる可能性があるということです。
ただし、biturbo搭載の中古車を購入する際に見落とせないポイントがあります。
🔍 中古購入前に必ず確認したいポイント
- ターボチャージャーのオイル管理履歴(オイル交換記録の有無)
- エンジン異音の有無(アイドリング時・加速時)
- メンテナンスパック・ディーラー整備歴の確認
- 修復歴・事故歴の有無(特に足回りへの影響)
- エアサスペンション搭載車の場合、その動作確認
ターボチャージャーは適切なオイル管理がされていないと、タービンが焼き付いて修理に50〜100万円以上かかるケースもあります。サービスブック(整備記録)がしっかり残っている車両を選ぶのが原則です。
また、一般的な輸入車専門の中古車ショップより、AMGやメルセデスに特化した専門ショップに絞ることで、車両状態の精度が高い査定や、購入後のサポートを受けやすくなります。専門性のある販売店かどうかを、在庫ラインナップや整備スタッフの資格・経歴で事前に確認する、という行動一つで大きなリスクを下げられます。
メルセデスAMGの中古車情報はこちらも参考に。
ビターボ搭載ベンツを買うかどうか迷っている方にとって、中古という選択肢は決して「妥協」ではありません。むしろ維持費を把握したうえで、予算と走行距離・整備状態のバランスが取れた一台を選ぶことが、長く楽しむための近道です。結論は「状態と整備歴の確認」が条件です。

[ネグエス] ターボエンブレム TURBO ターボ 車 エンブレム ステッカー カーステッカー 18mm×129mm シルバー