メルセデス・ベンツ 300 slr ウーレンハウト・クーペと史上最高額落札の秘密

メルセデス・ベンツ 300 SLR ウーレンハウト・クーペは、なぜ182億円という史上最高額で落札されたのか。わずか2台しか存在しない伝説的レーシングマシンの、驚くべき性能とレーシングヒストリー、そして設計者ルドルフ・ウーレンハウトにまつわる物語を知りたくありませんか?

メルセデス・ベンツ 300 slr ウーレンハウト・クーペ

記事の概要
💰
史上最高額182億円で落札

2022年5月、わずか2台のみ製造された幻のクーペが自動車史上最高額を記録

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F1マシンベースの圧倒的性能

302馬力、最高速度289km/hを誇る直列8気筒エンジン搭載の伝説的レーサー

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設計者の名を冠した稀少車

チーフエンジニア、ルドルフ・ウーレンハウト自ら愛用した特別なクーペ

300 SLR ウーレンハウト・クーペの史上最高額落札記録


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2022年5月5日、メルセデス・ベンツミュージアムで開催された招待制オークションにおいて、1955年製メルセデス・ベンツ 300 SLR ウーレンハウト・クーペが1億3,500万ユーロ(約182億円)で落札されました。この金額は自動車取引における史上最高額を記録し、「車界のモナリザ」とも称される稀少性を証明する結果となりました。
参考)Document moved

それまでの最高記録は2018年に個人間取引で売却されたフェラーリ 250 GTOの5,300万ポンド(約76億円)でしたが、300 SLR ウーレンハウト・クーペはその記録を2倍以上も上回る価格で落札されました。オークションを担当したのは、コレクターズカーの世界で最高峰として知られるRMサザビーズで、落札者は匿名の個人コレクターとされています。
参考)「えっ…知らないの?」「href="https://kuruma-news.jp/post/848158" target="_blank">https://kuruma-news.jp/post/848158quot;世界一高価href="https://kuruma-news.jp/post/848158" target="_blank">https://kuruma-news.jp/post/848158quot;なクルマ」ってなに!?…

わずか2台のみ製造されたプロトタイプ車両のうち1台がオークションに出品され、もう1台は引き続きメルセデス・ベンツ博物館に展示されています。今回のオークション収益は、持続可能な未来に向けた若者の学習を支援する「メルセデス・ベンツ基金」の設立に用いられることが発表されました。
参考)メルセデスベンツのスポーツカーが史上最高額の180億円以上で…

300 SLR落札記録の詳細とフェラーリGTOとの比較について詳しい情報

300 SLR の圧倒的なエンジン性能とスペック

300 SLRは、F1マシンW196Rをベースに開発された2シーターレーシングスポーツカーで、1955年に誕生しました。車名の「300」は排気量3.0リッターを示し、「SLR」はSport Leicht Rennen(スポーツ・ライト・レーシング)の頭字語で「超軽量レーシング」を意味します。
参考)メルセデスベンツ300SLRとは - わかりやすく解説 We…

搭載エンジンは直列8気筒DOHC 2バルブ(M196型、2.979リッター)で、最高出力302ps(一部資料では310ps)を7,500rpmで発揮し、最高速度289km/hという驚異的な性能を誇りました。変速機はZF製5速マニュアルトランスミッション(後進1段付き)を採用し、車両重量は乾燥状態で830kgという軽量設計が実現されています。​
サスペンションは前輪にダブルウィッシュボーン・トーションバー式、後輪にスイングアクスル・トーションバー式を採用し、優れた操縦性を確保していました。ホイールベースは2,370mm、全長4,350mm、全幅1,750mmというコンパクトなボディに、レーシングマシンとしての最先端技術が凝縮されていました。​

項目 スペック
エンジン 直列8気筒DOHC 2バルブ
排気量 2.979リッター
最高出力 302ps / 7,500rpm
最高速度 289km/h ⚡
車両重量 830kg(乾燥)
変速機 ZF 5速MT + 後進1段

300 SLR のレーシングヒストリーとミッレミリア優勝

300 SLRは1955年のスポーツカー世界選手権で圧倒的な強さを発揮し、ミッレミリア、ツーリスト・トロフィ、タルガ・フローリオなど数々の伝説的レースで勝利を収めました。中でも最も有名な勝利は、1955年ミッレミリアにおけるスターリング・モスとナビゲーター、デニス・ジェンキンソンによるものです。
参考)Instagram

スターリング・モスが操るシャーシNo.0004/55(レースナンバー722)は、スタート時刻7時22分にちなんだゼッケンを付け、ほぼすべての記録を破りながら最も近いライバルであるファン・マヌエル・ファンジオに22分差をつけて優勝しました。この勝利により、モスは伝説のイタリアンレースで優勝した最初で唯一のイギリス人ドライバーとなりました。
参考)https://ameblo.jp/crystalharmony2006/entry-12477967268.html

総生産台数は9台で、うち7台がロードスター仕様、2台がクーペ仕様として製造されました。しかし1955年のル・マン24時間レースで発生した大事故を受けて、メルセデス・ベンツは1955年シーズン終了後にレース活動から完全撤退を決定し、クーペ仕様が競技に参加することはありませんでした。​

300 SLR ガルウィングドアの独特な構造

ウーレンハウト・クーペの最も象徴的な特徴は、上方に跳ね上がるガルウィングドアです。このドア方式は、ルーフとドア上辺の間に車体中心線とほぼ平行なヒンジを持ち、地面に対して垂直に展開する形で開閉します。
参考)ガルウィングドア - Wikipedia

ガルウィングドアが採用された理由は、300 SLRの構造的特徴にあります。軽量かつ高剛性を実現するために採用された鋼管スペースフレームシャシーは、サイドシル部分が非常に高く設計されていました。通常の横開きドアでは乗降性が著しく悪化するため、この問題を解決する手段としてルーフ部分まで開口するガルウィングドアが採用されたのです。
参考)「ガルウィングドア」の意味や使い方 わかりやすく解説 Web…

市販車としてガルウィングドアを初めて採用したのは1954年発表のメルセデス・ベンツ 300 SL(W194)で、300 SLRもこの技術を継承しています。開閉に必要な横方向のスペースが通常のドアより少ないという利点もあり、狭い場所での乗降も容易になりました。​
ガルウィングドアの構造と採用理由に関する詳細情報

設計者ルドルフ・ウーレンハウトと300 SLR の開発秘話

300 SLR ウーレンハウト・クーペの名前の由来となったルドルフ・ウーレンハウト(1906年7月15日 - 1989年5月8日)は、ダイムラー・ベンツの伝説的チーフエンジニアでした。彼は1930年代から1950年代にかけてメルセデス・ベンツのレース活動における車両設計を統括し、数々の名車を生み出しました。
参考)ルドルフ・ウーレンハウト - Wikipedia

ウーレンハウトが設計した300 SLRは、F1マシンW196Rの技術と300 SL(W194)で培った経験を融合させた傑作です。1956年シーズンを見据えて開発された2台のハードトップバージョンのうち、1台はメルセデス・ベンツが保管し、もう1台はカンパニーカーとしてウーレンハウト自身に供されました。​
驚くべきことに、ウーレンハウトはこの圧倒的な性能を持つレーシングマシンを、日常的に公道で乗り回していたと記録されています。各地のサーキットへの移動にもこのクーペを使用し、「限りなく繊細なデザインを与えられながらも、戦車並みの堅牢性を発揮した」と評されるこの車を、文字通り愛用していました。このエピソードが、ウーレンハウトの名を冠するクーペの伝説性をさらに高めています。
参考)https://ameblo.jp/kyoshodiecastcar/entry-12910951416.html

300 SLR と現代のコレクター市場における価値

300 SLR ウーレンハウト・クーペの182億円という落札価格は、クラシックカー市場における価値の変遷を象徴しています。歴史的価値、技術的重要性、稀少性という3つの要素が完璧に揃った車両は、もはや単なる移動手段ではなく、美術品や文化遺産として扱われています。
参考)301 Moved Permanently

クラシックカー市場では、レーシングヒストリーを持つ車両が特に高く評価されます。300 SLRは1955年のミッレミリアやスポーツカー世界選手権での輝かしい戦績を持ち、モータースポーツ史における重要な位置を占めています。わずか2台しか存在しないウーレンハウト・クーペは、そのうち1台がオークションに登場したことで、コレクター間で前例のない争奪戦が繰り広げられました。​
落札者は今後もしかるべき機会に当該車両を一般公開することに同意しており、この歴史的名車は今後も自動車愛好家たちに感動を与え続けることでしょう。オークション収益が若者の教育支援に活用されることも、この稀少車両が単なる投資対象ではなく、文化的遺産としての役割を担っていることを示しています。​
さらに注目すべき点は、2台のクーペには内装色の違いがあることです。ブルー内装の1号車は実際にウーレンハウトが使用した車両で、フロントウィンドウ下のエアインテーク形状やボンネット上の虫除けパネルなど、細部に特徴的な違いが見られます。レッド内装の2号車と合わせて、それぞれが独自の個性を持つ芸術品として、自動車史に永遠に刻まれる存在となっています。​
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