スバルXVの販売終了は2022年10月16日に実施され、この決定には複数の戦略的要因が関わっています。最も重要な要因は、スバルのグローバル戦略における名称統一です。これまで日本国内では「XV」として親しまれてきましたが、北米市場では「クロストレック」という名称で販売されており、地域ごとに異なる名称がブランド認知の統一性を損なう課題となっていました。
XVは2012年の初代モデル発売以来、スバルの基幹モデルとして成長を続けてきました。特に現行の2代目モデル(2017年発売)は、レガシィアウトバックやフォレスターと並ぶ販売台数を記録し、スバルにとって重要な収益源となっていました。しかし、グローバル市場での競争力強化とブランド統一の必要性から、販売終了という決断に至ったのです。
販売終了のタイミングも戦略的に計画されており、後継車となる新型クロストレックの世界初公開(2022年9月15日)から約1ヶ月後に新規注文を停止することで、スムーズな移行を図りました。この期間設定により、既存のXVユーザーや検討中の顧客に対して十分な情報提供と選択肢を提供することができました。
名称変更の最大の理由は、スバルのグローバル展開戦略にあります。従来、日本では「XV」、北米では「クロストレック」として販売されていましたが、この地域別の名称差異がマーケティング効率を低下させる要因となっていました。
プロジェクト・ゼネラル・マネージャーの毛塚紹一郎氏によると、「新型はグローバル展開するモデルということでクロストレックに統一した」と説明されています。この統一により、以下のメリットが期待されています。
特に北米市場では「クロストレック」の名称が既に定着しており、この市場での成功実績を他地域にも展開する狙いがあります。また、「クロストレック」という名称は、クロスオーバーSUVとしての特性をより明確に表現しており、車両の性格を理解しやすいという利点もあります。
新型クロストレックは単なる名称変更ではなく、大幅なモデルチェンジを伴う全面刷新となりました。最も注目すべき変更点は、パワートレインの完全ハイブリッド化です。新型では2リッターハイブリッド(e-BOXER)のみの設定となり、従来のガソリンエンジン単体モデルは廃止されました。
安全装備面では、国内スバル車初となる新世代「アイサイト」が搭載されます。この新システムは、従来の2つのステレオカメラに加えて単眼広角カメラを追加した3眼カメラ構成となっており、より広範囲の監視と精密な物体認識を実現しています。
デザイン面では、よりタフで力強い外観に変更され、アウトドア志向のユーザーニーズに対応しています。インテリアも使いやすさを重視した設計となり、「気軽な相棒」というコンセプトを体現した仕上がりとなっています。
発売時期は2023年春を予定しており、XVの生産終了から約半年のブランクを経て市場投入される計画でした。この期間は、生産ラインの切り替えや販売店での研修実施に充てられ、新型クロストレックの品質確保と販売体制の整備が行われました。
XVの販売終了は中古車市場にも大きな影響を与えています。生産終了の発表以降、XVの中古車価格は上昇傾向を示しており、特に状態の良い後期モデルや人気グレードの価格は高止まりしています。
中古車市場での価格変動要因として以下が挙げられます。
特に2017年以降の2代目XVは、アイサイトの標準装備や改良されたCVTなど、信頼性の高いモデルとして評価されており、中古車市場でも安定した需要を維持しています。一方で、初期モデルや過走行車両については、メンテナンス履歴や車両状態による価格差が顕著に現れています。
また、XVの販売終了により、同クラスの競合車種への注目も高まっています。マツダCX-30やトヨタC-HRなど、類似したポジションの車種に対する需要シフトも観察されており、中古車市場全体の価格バランスに影響を与えています。
XVの販売終了後も、既存ユーザーへのサポート体制は継続されています。スバルは販売終了車種に対しても長期間のアフターサービスを提供する方針を維持しており、部品供給や整備サービスは当面継続される予定です。
具体的なサポート内容は以下の通りです。
特に注目すべきは、XVからクロストレックへの乗り換えサポートプログラムです。既存のXVユーザーに対して、新型クロストレック購入時の特別優遇措置や下取り価格の優遇などが提供されており、ブランドロイヤルティの維持に努めています。
また、XVの販売終了に伴い、同車種の整備に精通した技術者の育成も重要な課題となっています。スバルでは、販売店スタッフ向けの技術研修を継続実施し、XVユーザーが安心して車両を維持できる体制を整備しています。
このような包括的なアフターサービス体制により、XVユーザーは販売終了後も安心して愛車を維持することができ、将来的なスバル車への乗り換えも促進される仕組みとなっています。