スバルXVの生産終了は、単なるモデルチェンジではなく、ブランド戦略の大きな転換点でした。2017年に登場した3代目XVは、スバルのクロスオーバーSUVとして高い人気を誇っていましたが、グローバル市場での統一性を図るため、2022年10月16日をもって新規注文の受付を終了しました。
この決定には、北米市場での成功が大きく影響しています。北米では2代目モデル以降「クロストレック」の名称で販売されており、その知名度と人気が確立されていました。スバルは全世界で統一したブランディングを行うため、日本市場でも「XV」から「クロストレック」への名称変更を決断したのです。
また、環境規制の強化や電動化への対応も重要な要因でした。新型クロストレックは2リッターハイブリッド(e-BOXER)専用車として設計され、従来の1.6リッターエンジン車は廃止されました。これは、燃費性能の向上と環境負荷の軽減を目指したスバルの戦略的判断といえます。
最終モデルとなった3代目XVは、2017年5月の発売から約5年間にわたって販売されました。価格帯は213万円から295万円と幅広く設定され、1.6リッターエンジン車から2.0リッターハイブリッド車まで豊富なラインナップを展開していました。
特に注目すべきは、スバル独自のAWDシステムとハイブリッド技術の組み合わせです。前後輪がメカニカルに連結されたAWDでハイブリッドを搭載したのは、当時XVだけという特徴的な存在でした。これにより、悪路での走破性とエコ性能を両立させた唯一無二のクロスオーバーSUVとして市場で評価されていました。
安全性能では、運転支援システム「アイサイト(ver.3)」を全車に標準装備し、歩行者保護エアバッグも搭載していました。また、SUV特有のロールを抑制する「SUBARU GLOBAL PLATFORM」の採用により、高い操縦安定性を実現していました。
燃費性能では、ハイブリッド車でJC08モード19.2km/L、WLTCモード15.0km/Lを達成し、実用性と環境性能のバランスを取った設計となっていました。
車名変更の背景には、スバルのグローバル戦略があります。北米市場では2代目モデル以降「クロストレック」として販売され、高い認知度と販売実績を築いていました。一方、日本を含む他の地域では「XV」として親しまれていましたが、ブランドの統一性を図るため、全世界共通で「クロストレック」に統一することが決定されました。
この決定には、マーケティング効率の向上も大きな要因となっています。グローバルで統一された車名により、広告宣伝費の効率化や、ブランドイメージの統一が可能になります。また、「クロストレック」という名称は、「クロス(交差)」と「トレック(冒険的な旅)」を組み合わせた造語で、アクティブなライフスタイルを表現する名前として、より幅広い層にアピールできると判断されました。
さらに、車名変更と同時に行われたフルモデルチェンジでは、デザインや機能面でも大幅な進化を遂げました。新世代「アイサイト」の搭載や、ハイブリッド専用車としての位置づけなど、従来のXVとは一線を画す進化を遂げています。
XVの生産終了は、中古車市場にも大きな影響を与えています。販売終了が発表された2022年10月以降、中古車市場では希少性が高まり、特に最終年式の2022年モデルや人気グレードの価格が上昇傾向にあります。
現在の中古車価格帯は39万円から302万円と幅広く、走行距離や年式、グレードによって大きく異なります。特に、e-BOXERを搭載したハイブリッドモデルは、燃費性能の高さから中古車市場でも人気が高く、価格の下落が緩やかな傾向にあります。
また、1.6リッターエンジン車については、新型クロストレックでは廃止されたため、今後希少価値が高まる可能性があります。セダンタイプのインプレッサG4と同様に、現行をもってラインナップから消えるため、コレクション性の観点からも注目されています。
中古車を検討する際は、メンテナンス履歴や事故歴の確認が重要です。特にAWDシステムやハイブリッドシステムの状態は、専門的な点検が必要な部分であり、購入前の詳細な確認が推奨されます。
XVの生産終了後も、スバルは既存オーナーへのアフターサービスを継続しています。部品供給については、一般的に生産終了から10年程度は継続されるため、当面のメンテナンスに支障はありません。
しかし、一部の特殊部品や電子部品については、将来的に入手困難になる可能性があります。特に、初期の2017年モデルについては、生産から時間が経過しているため、消耗品の交換時期を迎える部品が増えています。
定期的なメンテナンスでは、以下の点に注意が必要です。
また、リコールや改善対策については、生産終了後も対象車両への対応が継続されます。スバルの公式サイトや販売店からの情報を定期的に確認し、必要な対応を怠らないことが重要です。
さらに、XVオーナー同士の情報交換も貴重な情報源となります。オンラインコミュニティやオーナーズクラブでは、メンテナンスのノウハウや部品調達の情報が共有されており、長期的な愛車の維持に役立ちます。
生産終了したモデルを長く乗り続けるためには、予防的なメンテナンスと早めの部品交換が鍵となります。特に、走行距離が多い車両や年式の古い車両については、専門店での定期的な点検を受けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。